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「結婚しよう。」  作者: まひる
第八章
402/516

≪Ⅹ≫俺にも利(リ)がある事【1】

≪Ⅹ≫俺にも()がある事


「もしかして我々は(アク)だったかな?あの赤い光が溢れる中で精霊言語を使う余裕もなく、漂う精霊を(ナカ)ば無理矢理拘束したのは失礼な事だったと思うがね。」


「それなら、捕獲ではなくて救出だったって訳?」


 (ワズ)かに苦い顔をして見せた協会長さんでしたが、ベンダーツさんは驚いたように目を見開いています。


「その通り。あの後こちらの精霊には話をし、非礼を詫びたのだ。ほら、今も中で自由にしておる。出でおいで、仲間の精霊が来たそうだよ。」


 協会長さんの続けられた言葉に、教会の奥から黄色と白の光が二つ飛んできました。


 あ、ヴォルの傍にいた青い光の精霊さんが飛んで近寄ります。再会ですね。嬉しそうにクルクル円を描いていました。


「納得したようだ…。ありがとうございました、協会長。魔力所持者が精霊に危害を加える事はないと思っていましたが、精霊の訴えを放置する事が出来ず教会の結界を破壊してしまいました。申し訳ございません。」


 ヴォルが協会長さんに頭を下げます。


 それを見た魔法協会の人達から、少しずつピリピリとした空気が薄れていきました。その為にも謝罪は必要だった訳ですね?


「いやいや、我々も言葉を尽さなければならなかった。誤解を招く様な事をしてしまい、こちらこそ申し訳なかった。」


 協会長さんもヴォルに頭を下げます。


 あれ?そう言えば、周囲を覆っていた黒い(モヤ)がいつのまにか消えています。


「この辺りを浄化してくれた事といい、我々は感謝しているよ。」


 ニコヤカに告げる協会長さんでした。


「いえ、それは俺にも()がある事ですから。」


「あ…あの精霊さん達は、もう大丈夫なのですか?」


 淡々と答えたヴォルでしたが、私は思わず二人の会話に口を挟みます。


 ヴォルの言う()、って分からなかったですけど。それよりも気になる事がありましたから。


 確か出会った時、姿を隠せない程に精霊さんは弱っていた筈です。


「問題ない。既に8割方回復している。」


「そ、そうですか…。良かったです、元気になってくれて。」


 ヴォルがフッと表情を(ヤワ)らげて答えてくれたので、私はとても安心しました。


 お友達とも会えたし、精霊さんはきっと喜んでいますよね。姿はもう見えなくなっていましたが、私も自然と笑みが浮かびました。


「…笑うと可愛いな、ツヴァイス殿の姫は。」


 ん?協会長さんの声が聞こえた…と思いましたが、視線が合う前に何故か私はヴォルに抱き締められていました。


 これでは前が見えません。


「フムフム、嫉妬かね?ほほぅ、あのヴォルティ・ツヴァイス殿がなぁ。従者の…マクストリア・ベンダーツだったか。これは普段からかい?」


「あ、俺の名前を覚えてくれてたんだ。見た通りだよ、勿論。この敵対心?俺まで標的として巻き込まれるから、結構迷惑しちゃってるんだよねぇ。」


 からかいを含んだ協会長さんの問いに、ベンダーツさんも楽しそうに答えています。


「そうか、そうか。市井(シセイ)(タミ)とは言え、これ程まで彼の心を掴む事が出来るとは。これならば、先の世も安泰だな。」


 そして豪快に笑い始める協会長さんでした。


 えっと、それ…誉められているのですか?



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