7.仲間を救ってほしいと【6】
「だからと言ってだなぁ。」
「マークさん、良いですから。私が悪いのです…。ヴォルは悪くないですから。」
「メル…。ったく、ヴォルは冷たいよな。真実だけが人の心に安らぎを与える訳じゃねぇっての。」
苛立ちを顕にするベンダーツさんです。
それでも彼に悪いですが、そんなにヴォルを責めないでくださいと言いたくなりました。
「事実は変えられない。」
「だからぁ…。」
「マークさん、良いです。ありがとうございます。」
私は深く頭を下げました。
だって、ベンダーツさんが私を庇おうとしてくれたのは分かりましたから。
「…まぁ、メルが良いならね。」
アッサリと引いてくれたベンダーツさんでした。
ごめんなさい。本当にありがとうございます。
「で、どうするのさ。全部が魔法石になっているとして、ここにいた魔法協会の面々は何処行ったのかなぁ?まさか、自分達も魔法石になっている訳じゃねぇだろう?」
周囲を見渡すベンダーツさんは、不意にある一ヶ所で視線を止めました。
そこはパッと見て分かる程、教会でした。屋根近くの壁に教会の紋章が描いてあります。
そして教会は大概の町にあり、そこでは葬儀も挙式も行うという市民が集う場所です。
「この町、魔法協会と教会が一緒になってる?何で?前は別だったじゃん。」
不思議そうなベンダーツさんですが、私の生まれ育った村ではそれが当たり前でしたよ。
確かにセントラルでは魔法協会と教会は別の建物であり、組織自体も異なっていたのを思い出しました。
「教会は避難場所としての結界が施されているからだ。魔法協会と言えども所詮は雇われの身。己の保身の為に他者を売ろうと、周囲から身を隠す場所は限られている。」
「何、それ。って事は、この教会に魔法協会の関係者がいるって?確かにこの魔法協会の看板は、いかにも後付けって感じだけどさ。」
淡々と答えるヴォルに、ベンダーツさんは不快さを隠しもしません。
「詳細は不明だ。中に複数の結界が張ってある。」
ヴォルはパッと見ただけで、それだけ答えます。
どうやら結界が張ってなければ、建物の中の様子まで分かるようです。
「ヴォル…。それさぁ、前から?」
「何が言いたい。」
「ん~…、建物の中まで見えるの?」
「見える訳ではない。感覚的に分かると言った方が良い。」
ベンダーツさんが不思議そうに問うのですが、ヴォルは全く普通の事の様に答えるのでした。
何だか凄いです。
超感覚と言えば良いのですかね。
「精霊の事もそれで分かるのか?」
「それぞれに感覚が違う。この距離なら分かるが、ケストニアにもまだ生きた精霊がいる。」
驚きを含めたベンダーツさんの問いに、ヴォルは前方の教会へ視線を向けました。
生きた精霊さん…って事は、魔法石になっていないと言う事ですね。
でも、これで精霊さんを助けられそうです。って言うか、先程は距離がありすぎて分からなかったとか…理由が凄いです。
石になってしまった町の人々は…、助けられる別の方法を探さないとならないですね。




