7.仲間を救ってほしいと【3】
あれから私達はそのまま休み、夜が明けてからの出発になりました。
「ここからケストニアはそんなに離れていないんだろう?町が魔法石になったなんてまだ信じられないんだけど、そのせいであれだけ魔物が集まってたって事かぁ。それって、魔力駄々漏れ?」
馬車を走らせながら、御者台からベンダーツさんが声を掛けてきました。
今は魔物と遭遇する事もなく、真っ直ぐ南に進んでいるみたいです。
「魔法石はそこにあるだけで魔力を放出する。魔物は現状の魔力流出が原因で飢えが極限に達している。生物種の見境なく襲っている現状、ケストニア近隣の精霊の森が同時に襲われたようだ。」
ヴォルが精霊さんから聞いた情報を教えてくれます。
それが理由で、精霊さんが助けを求めているのですね。
「でもさぁ、人間の町の近くに精霊の森って。そんなに身近なもんだった?」
「精霊は人間の集落に関与しない。その土地が力ある場所なだけだろ。…危害を加える相手でなければ問題ないと言っている。」
それだけ告げると、終わりとばかりに私の肩に顔を埋めるヴォルでした。
えぇ。馬車の中での私は、ヴォルに後ろから抱き締められる形で座っていますからね。
青い光に包まれた精霊さんは、昨日から変わらずヴォルの頭付近に漂ってました。
「何だかなぁ~。まさか、精霊から仕事の依頼があるとは思ってみなかったよ。ってか俺、姿が見えないから救えねぇんじゃね?」
一人呟くベンダーツさんでしたが、そう言えば何故私は見えるのでしょう。今だって、ヴォルの他の精霊さんは見えないのにです。
「ヴォル?あの、他の精霊さんもいますよね?何故かこの精霊さんは私にも見えるのですけど。」
「あぁ。この精霊は弱っている。現にマークも光は視認出来ている。通常はそれすら見えない筈だ。」
あ、そう言えばそうですね。
と言うか、ヴォルが話す度に首筋に息がかかってくすぐったいです。
「弱っていると言う事は、何処か怪我をしているとかですか?」
疑問を口にすると、ヴォルはその質問に淡々と答えてくれます。
「違う。精霊力の消耗の為だ。暫く俺の周りにいれば回復する。」
おぉ、さすが魔力量が随一なだけはありますね。たくさんの精霊さんを養えるようです。
あ、今は魔力流出の問題があるのですけどね。
「怪我をしていなくて良かったです。精霊さんって、怪我をしたらどうやって手当てをしたら良いか分からないですから。」
そもそも、人間と同じ薬草を使っても大丈夫なのでしょうか。
「メルは優しいな。だが問題ない。生命の精霊がいる。」
ヴォルに頭を撫でられました。
私の心配なんて、精霊さんには小さな事だったようです。でも誉められてしまったので、何だか複雑ではありますね。




