7.心配だ【3】
壁の角に背中をつけて、グスグスと泣き濡れていました。どれくらいたったのでしょうか。もしかしたらそれ程時間が経っていないのかもしれませんが、私にとっては非常に長い孤独でした。
ガタガタッ!激しい音が扉の方から聞こえます。こ、怖いっ!恐怖の中で自分の身体を抱き締めました。今確かなものは自分の身体だけなのです。ガンッ!と大きな音が響きました。ギュッと目をつむって、恐怖に耐えます。わ、私はいませんよ~。
「メル。」
「っ!」
パッと顔をあげます。ヴォルです。何故か壊れた扉の横にヴォルが立っています。
「ヴ~…っ!」
もう訳が分かりませんでした。私はその場から立ち上がり、勢い良くヴォルに突進しました。猪のようです。でもさすがヴォル。私の突進なんてものともせず、易々(ヤスヤス)と受け止めてくれます。
「こわ、こわ…、怖かったです~っ!」
汚い顔でごめんなさい。涙とかその他の物で汚れているでしょう私の顔ですが、ヴォルは気にせず胸に抱いていてくれています。ポンポンとあやすように背中を軽く叩かれ、何も言わずに傍にいてくれました。
「っ、っ、…ごめん…なさい…。」
漸く涙が落ち着いた頃、私はやっとヴォルに謝りました。服を汚してしまった事とか、心配させてしまった事とか色々です。
「無事で良かった。」
静かに告げられたヴォルの言葉。
「で、でもどうして…ここが分かったのですか?と言うか、ここは何処ですか。」
未だこの変な監禁場所にいるのですが、ヴォルがいてくれるだけで全く違って見えます。もう今は怖くなくて、逆に興味津々にキョロキョロ見回してしまいました。
「腕輪に魔法を掛けてある。」
「魔法?」
「ここは領主の屋敷だ。」
私の今の質問に答えず、現在地を教えてくれました。勿論、それも聞きましたが。
「宿に戻る。」
「ぅきゃっ!」
いつものように淡々と答えたかと思うと、いきなり持ち上げられました。えっと、姫抱きですか?!これって、お姫様抱っこってやつですかっ?突然の行動と落下の恐怖に、私はヴォルの首にしがみつきました。首を絞めんばかりにしがみついたので、ヴォルの無表情が僅かに歪みました。




