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「結婚しよう。」  作者: まひる
第七章
327/516

5.何の権限が【3】

「ん…。」


 朝の気配に意識が戻りました。


「起きたのか、メル。」


「はい。おはようございます、ヴォル。」


 空はまだ半分が青く、(ヨウヤ)く朝の白さが訪れた頃でした。私、寝過ぎてはいませんよね?


 そんな事を思いながら見渡すと、ベンダーツさんが椅子に腰掛けるようにして休んでいる姿が見えました。確かにここ、一部屋ですものね。勿論ベッドも一つで、他に身体を休めそうなものは椅子のみです。あ、ベッドはヴォルと私が使っているのですよ。


「マークさん、ゆっくり休めなかったのではありませんか?」


「優しいねぇ、メルは。でもさすがの俺も、ヴォルとメルの間に入っては寝られなくね?」


 間って…、それは困りますけど。


「俺の許可なくメルに触れたら切り取ってやる。」


 な、何をでしょうか。怖いですよ、ヴォル。手は勿論ですけど、指一本だってなくては困りますもの。


「ほら、ヴォルの発言にメルが怯えてるって。」


「煩い。」


 楽しそうなベンダーツさんと、ピリピリとしたヴォルです。でもそう言いつつも、私に触れるヴォルの手は優しいのですよ。今もほら、頭に唇を落として…って、恥ずかしいのですけど。べ、ベンダーツさんが見ているではないですか。


「さてと、んじゃ朝食の準備でもするかな。ヴォル、また火と水を頼める?」


「…分かった。」


 いつもなら少し渋るのですが、今回はすぐに了承されました。これ、昨日のベンダーツさんとのやり取りに原因があるのですよね?


 ヴォルが起きたので、私もベッドから起き上がります。…そう言えば私、着替えとかしてなくないですか?臭くないですかね?


「どうした、メル。」


 あ…、自分の臭いを気にしていたのをヴォルに見られてしまいました。


「あの…、臭いを…ですね?」


 恥ずかしいですね。でも隠しても仕方がないです。


「匂い…、メルは良い匂いだ。」


「っ?!」


 本当にビックリしますよ。それ、考えて話してないなんて驚きです。


「ち、違いますよ…。お風呂に入っていないので気になっただけです。」


 もう自棄(ヤケ)になってしまいました。


「風呂に入りたいのか。」


「え…、はぁ…。でもマークさんがいますし、何だか町の人もおかしいですし。」


「分かった。気になるのであれば清浄化の魔法を使う。」


 えぇっ?!そんな便利な魔法があるのですか?名前からして、お風呂に入らなくても綺麗になりそうですよね?


「何、それ。お風呂代わりの魔法なら、俺も欲しいんだけど?」


 ベンダーツさんも便乗して手を上げています。はい、魔法は物凄く便利です。



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