5.何の権限が【3】
「ん…。」
朝の気配に意識が戻りました。
「起きたのか、メル。」
「はい。おはようございます、ヴォル。」
空はまだ半分が青く、漸く朝の白さが訪れた頃でした。私、寝過ぎてはいませんよね?
そんな事を思いながら見渡すと、ベンダーツさんが椅子に腰掛けるようにして休んでいる姿が見えました。確かにここ、一部屋ですものね。勿論ベッドも一つで、他に身体を休めそうなものは椅子のみです。あ、ベッドはヴォルと私が使っているのですよ。
「マークさん、ゆっくり休めなかったのではありませんか?」
「優しいねぇ、メルは。でもさすがの俺も、ヴォルとメルの間に入っては寝られなくね?」
間って…、それは困りますけど。
「俺の許可なくメルに触れたら切り取ってやる。」
な、何をでしょうか。怖いですよ、ヴォル。手は勿論ですけど、指一本だってなくては困りますもの。
「ほら、ヴォルの発言にメルが怯えてるって。」
「煩い。」
楽しそうなベンダーツさんと、ピリピリとしたヴォルです。でもそう言いつつも、私に触れるヴォルの手は優しいのですよ。今もほら、頭に唇を落として…って、恥ずかしいのですけど。べ、ベンダーツさんが見ているではないですか。
「さてと、んじゃ朝食の準備でもするかな。ヴォル、また火と水を頼める?」
「…分かった。」
いつもなら少し渋るのですが、今回はすぐに了承されました。これ、昨日のベンダーツさんとのやり取りに原因があるのですよね?
ヴォルが起きたので、私もベッドから起き上がります。…そう言えば私、着替えとかしてなくないですか?臭くないですかね?
「どうした、メル。」
あ…、自分の臭いを気にしていたのをヴォルに見られてしまいました。
「あの…、臭いを…ですね?」
恥ずかしいですね。でも隠しても仕方がないです。
「匂い…、メルは良い匂いだ。」
「っ?!」
本当にビックリしますよ。それ、考えて話してないなんて驚きです。
「ち、違いますよ…。お風呂に入っていないので気になっただけです。」
もう自棄になってしまいました。
「風呂に入りたいのか。」
「え…、はぁ…。でもマークさんがいますし、何だか町の人もおかしいですし。」
「分かった。気になるのであれば清浄化の魔法を使う。」
えぇっ?!そんな便利な魔法があるのですか?名前からして、お風呂に入らなくても綺麗になりそうですよね?
「何、それ。お風呂代わりの魔法なら、俺も欲しいんだけど?」
ベンダーツさんも便乗して手を上げています。はい、魔法は物凄く便利です。




