3.異質な気配を纏う男がいた【5】
「あの魔力、使い方によっては最強だぜ。ただ言葉に魔力を乗せているから、自分の言葉を違える事は出来ないだろうな。裏の裏を読まないと…って、読めば自滅に追い込めるか。」
ん~、何だかベンダーツさんなら口で負かしてしまいそうです。
「ゼブルさんは他の魔法を使えないのですかね?」
「言葉の魔力を司るのは…智の精霊か?それとも音かなぁ、俺は詳しくは知らないけど。でも、攻撃魔法って言うのは大概大きな魔力を必要とするらしいぜ?だから魔力値が高くないと魔法で戦闘なんか出来ない訳。セントラルに登録されている魔力所持者も、実は戦闘要員だって教えたよなぁ?」
「あ、はい。」
以前クスカムの村に行った時に聞きました。
「だから魔力計測器も、ヴォルの言った元素を持つ精霊の力に反応するように出来てるんだよな。」
「それって…。」
「そ。セグレスト・ゼブル卿の魔力を計測出来なかった理由だねぇ。魔力値自体の計測も出来るんだけど、貴族は権力を傘に拒否する輩が少なくないんだ。元素魔力を持っていなければ咎められる事がないから、案外魔法省の方では知っていたかもしれないけどな。」
魔法省ですか、初めて聞きました。
「とにかく、そんな感じだな。ただの魔力所持者の情報は俺のところに来ないから、実際のところは分からねぇけど良い読みなんじゃね?」
「そうなんですか…、ありがとうございます。」
どうやら、元素魔力を持っている人の情報は公にされているようです。とは言っても、国の重要機密事項に代わりはないのでしょうけど。
「ヴォルはどうするつもりなのでしょうか。」
「さぁな。一応国の重鎮だし、命を奪う事は不味いよなぁ。そうなると捕縛だけど、これも今の俺達の立場じゃ厳しいんだよ。」
捕まえる事も出来ないとなると、一体どの様な手段が残っているのでしょうか。そして今の私達も、この結界の中から出る事すら出来ません。八方塞がりとは、この様な状態の事でしょうか。
「まぁ、ヴォルなら何とかするでしょう。」
「…それ、ヴォルもマークさんに言われていましたよ?お互い信頼されているのですね。羨ましいです。」
「な、何それ。俺を誉めても何も出ないよ?そ、そりゃ主従関係を何年してると思ってんの。これで少しの信頼もないとなったら、俺は泣いちゃうね。」
ウフフ、照れています?ツンとして見せていますが、ベンダーツさんはいつもより少し頬が赤くなっています。本当に、羨ましいですね。




