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「結婚しよう。」  作者: まひる
第七章
312/516

2.今は…まだ…【3】

 不意に目が覚めました。(マバタ)きを繰り返し、現状を把握します。えぇ、寝過ぎはダメですよね。何だかボンヤリとします。


「起きたのか、メル。」


「あ…おはようございます、ヴォル。すみません、寝過ぎました。」


「問題ない。…まだベンダーツから連絡はないからな。」


 私の気になっている事を教えてくれます。


「そうなんですね。」


「警報もない。不可視の魔法の効果だろ。」


「良かったです。でもお一人ですから心配ですね。」


「…まぁな。それより食事にしよう。」


「はい、手伝いますっ。」


 そして私達は私は昨日と同じく、部屋の中でサバイバルな調理を始めたのでした。とはいっても、簡単にパンとスープです。温かい食べ物は良いですよね、お腹が温まると心もホッコリします。


「ベンダーツさん、ご飯を食べたでしょうか。」


「アイツの事だ。何とかしているだろ。それよりも町が動き出したようだ。昨夜よりは少人数だが、また結界の外に集まっている。」


 外の様子を伝えてくれます。どうしましょう。このままではまた怖い事になりますよね。でも、皆さんは何かを勘違いなさっているのではないでしょうか。私達は町を救いはしました。お礼を言われても、襲われる(イワ)れはない筈です。


「説明したら、納得してくれますかね?」


「…どうだろうな。」


 (ワズ)かに苦い表情を見せるヴォルでした。確かに、町の人全員を説得出来るとは思えませんけれど。


「今は人が少ないのですよね?あ、あの…外を見せてくださいませんか?」


 逃げたり隠れたりしているだけでは、何も変わらないのです。怖いですけど、向き合わなくてはなりません。


「大丈夫か?」


 ヴォルは私を心配してくれるのですよね。先程かなり取り乱してしまいましたし。


「はい、大丈夫です。…怖いですけど、何もしないよりは良いと思うのです。」


「…そうか。分かった。Eizou wo miseyo.」


 魔力の乗った言葉が放たれます。そしてすぐに周囲が見渡せるようになりました。はい、町長さんのお屋敷です。壊れた扉も、壊れた窓もそのままです。


「まだ外からは中は見えていない。」


「はい…。」


 ヴォルが今の結界の状態を教えてくれました。人が集まってきているのが分かります。勿論、その手には各々が持ち寄った武器と呼べるものが握られていました。


 それでも何故でしょうか。私はその人達を不思議に思いました。彼等には表情がなかったからでしょうか。人間味を感じなかったのです。



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