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「結婚しよう。」  作者: まひる
第六章
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≪Ⅸ≫見なくて良い【1】

≪Ⅸ≫見なくて良い


「…と言う事なのですが、いかがでしょうか。」


 町長さんの言葉に、私は全く反応が出来ませんでした。…だって、おかしいではないですか。


「でもさ、それって俺等に利益はなくない?」


 遠回しに拒否の姿勢を見せるベンダーツさんです。この場には私達三人と町長さん、そしてユーニキュアさんともう一人の男性がいました。


「利益、だと?何をふざけた事を。私の娘を連れていくのだ。それ以上の何が必要だと言うのだ。」


 そうなのです。この男性、ユーニキュアさんのお父様なのでした。そして話はおかしな事に、私達をユーニキュアさんと共にセントラルへ行かせると言うのです。って言うかですね、私達はそこから来たのですけど。


「サガルットの壱の姫を護衛させるのだ。これ以上の誉れはあるまい。」


「お父様…。」


「お前は黙っていなさい。お前はセントラルへ行ってサガルットの実状を話し、資金を含む救援を送ってもらわなければならないのだ。」


 それは、今のサガルットが大変な事は分かります。でも、私達にも事情と言うものがありまして。


「ちょっと待ってくれよ。俺達はセントラルから来たんだ。それをわざわざまた戻れっていうのか?冗談じゃない。ここまで商団を護衛して来た礼ももらってないし、サガルットの魔物を討伐した報酬もまだだ。まさか、昨晩と今朝の食事が報酬とでもいうつもりか?」


 ベンダーツさんが愛想の良い態度を崩しました。勿論感情的になって叫んだりはしませんが、これを淡々と言われる方が(コタ)えますよね。現に、町長さんは既に青い顔で口をつぐんでいます。


「冒険者風情が何を生意気な事を。そもそもお前達冒険者は、町があっての存在だろう。自らの手で生産を行わない風来坊に、守るもののある暮らしは分かるまい。」


 鼻で笑うようにベンダーツさんをあしらいます。この人、さすが大貴族を束ねるだけの事はあります。ベンダーツさんの言葉や態度にも全く怯みません。


「勝手な事を言う方だ。我々冒険者に守るものがないだと?どれだけのものを犠牲にしているかなど、当人でない者に分かる筈もない。…交渉決裂だ。昨日までの報酬は早々に支払ってもらう。我々とて暇ではない。町長、失礼させてもらう。」


 冷たい視線を送り、ベンダーツさんが立ち上がりました。えっ、どうすれば良いのですか?


「ヴォル、メル。行くぞ。」


 珍しく命令口調でヴォルに告げます。これ、余程怒っていらっしゃるようです。一言も喋らないままヴォルが立ち上がり、動揺している私は彼に促されるようにして共に退室します。…これからどうなるのでしょうか。



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