8.…嫌だったのか?【2】
「凄いな、あの冒険者達…。」
「あぁ、あんなデカイ魔物を易々と討伐かよ。」
「本当に同じ人間なのかよ、冒険者って。」
商団の方々が口々に告げています。はい、私もヴォルと出会う前はそう思っていましたよ。関わりたくないと普通に思っていましたし。
冒険者は力の質が違うと言うか、町の中で生活をする人にとって必要のない強大な力を持っているのです。勿論、魔力を持っていないベンダーツさんですらそう思うのです。普通の人でも、鍛えただけでこうも強くなるものでしょうか。
「でも、必要なんだよな?」
「あぁ、町の外は魔物の世界だし。」
「俺等じゃ戦えないし…。っうか、死んじまう。」
はい、だから冒険者達が存在するのです。魔物がいるから。戦う力が必要だから。理由はいくらでもつけられます。恐怖する感情を悪だとは思いませんが、私もこの外の世界を知って気付きました。
どうか彼等を…、嫌わないでほしいです。
「ユーニキュアさんっ!」
「大丈夫ですかっ?!」
「えぇ…、遅くなりました…。」
走ってきた為に息が乱れているユーニキュアさんですが、彼女は気丈にもその背を丸める事はしません。一緒に駆けてきた人々の方が息を乱しているくらいです。
「お疲れ様でした。」
私はそんな彼女に言葉がありません。ただ、深く頭を下げます。
「ありがとう、メル。」
彼女も私に微笑むだけでした。お互い、役割をこなしたと言う自負からでしょうか。…私、ちゃんと役に立ちましたか?
「貴女のお陰で、これ以上私の大切な仲間が傷付く事はなかったわ。本当に感謝しているの。」
「あ、いえ…私は全然何もしてないですから…。それより、町の方は大丈夫なのですか?」
いえ、見た目では大変なのは分かります。ただ、ユーニキュアさんと一緒に戻ってきた人は商団の人ではないのでした。そうなのです。町にはまだ人が残っているのです。
「えぇ、かなりの人が避難していたわ。詳しくは分からないけど、亡くなったのは防御壁が破壊された辺りのごく一部の人達らしいの。」
「何故壁が…。」
「それが…、分からないの。調べに出た所で、あの大きな魔物が現れて…。」
そうだったのですか。でも今は魔物が大きく町を破壊してしまっています。この復興には時間が掛かりそうでした。
「この世界では魔物の被害も天災の一つだからな。魔法壁が強くなって、昔程頻繁に町を壊される事がなくなったくらいだ。」
「あぁ、昔は酷かったらしいからな。お疲れ様です、ユーニキュアお嬢さん。それで、俺のところの母ちゃんは…。」
それから皆さんがユーニキュアさんから町の情報を聞いていました。私は視線を町に向けます。もう既に町の延焼は食い止められていました。ヴォルが水の魔法を使ったようです。本当にこの世界の人々は、皆さんが強いですね。




