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「結婚しよう。」  作者: まひる
第六章
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≪Ⅴ≫魔の性質を帯びる【1】

≪Ⅴ≫魔の性質を帯びる


「ありがとうございました。」


 深々と頭を下げるユーニキュアさんです。魔物討伐を終えて結界に戻ってきたヴォルとベンダーツさんとはお互いの自己紹介をして、それぞれが武器の手入れをしていました。戦闘後の手入れは、長持ちさせる為の秘訣なのだそうです。


「仲間の手当てまでしていただいて、本当に何とお礼を申し上げて良いのか分かりません。」


 そうなのです。商団のメンバーは全滅という訳ではなかったのですが、三分の一生存といった具合でした。それも生存者の大半が中度から重度の怪我人でした。護衛を請け負った方々は自ら盾になり、この商団を全滅の危機から守ったのです。


「もう少し強い護衛は雇えなかったのかい?」


 ベンダーツさんが愛想の良いバージョンでユーニキュアさんと話します。どうやら他の人と話す時は、いつもこのスタイルでいくようです。


「冒険者ギルドの方々は、彼等が一番と薦めて下さったのです。実際、魔物を前に逃げる事なく勇敢に戦ってくださいました。」


「…そうだね。生憎(アイニク)葬儀なんかはしてやれないけど、俺達はこれからサガルットに行くからさ。ついでに町までなら護衛していっても良いよ。」


 どうやら前もってヴォルと話をつけてあるようで、ベンダーツさんがユーニキュアさんに提案をしました。


「それは有り難いお申し出なのですが…。今は報酬をお支払いする事が出来ないのです。」


 チラリと荷馬車を見るユーニキュアさんでした。そうすよね、車自体が走行不可能に近いダメージを負っているのです。


「大丈夫だよ。確かに護衛専門の冒険者は前払いが基本だけど、俺達は狩り専門だからね。町についてからで良いし、実際には金より宿と食事にありつければ十分だから。」


「え…?そんな冒険者の方がいらっしゃるなんて、嘘のようです。」


「あ、詐欺じゃないから。何なら署名でもしようか?ちゃんと契約書を作っておけば、君も安心でしょ。」


 まさか契約書などという言葉が出るとは思いもよりませんでしたが、ベンダーツさんは冒険者事情にも詳しいようです。そして、人の心を掴むのがとても上手ですね。本当の詐欺師になれますよ。


「いいえ、その様な書類は必要ございません。貴殿方を信頼いたします。元よりこの場所で断たれようとした命です。サガルットの町まで、どうかよろしくお願い致します。」


「了解~。あ、とりあえず向こうと合流しようか。結界も一ヶ所にまとめた方が良いだろうし…。少しの間とは言え、これから一緒に旅をするんだ。多少は打ち解けておかないとね。」


「分かりました。何から何まで、本当にありがとうございます。」


 そうして再び深く頭を下げたユーニキュアさんでした。怪我人が多く出てしまった商団を引き連れて町へ戻らなくてはならなくなったのに、心の強い方ですね。



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