3.ないと困るのだろ【4】
低木草地帯から景色が変わり、この辺りでは木々の緑が濃いようです。森とまではいきませんが、周囲を木々が覆っています。
「身を隠す場所が多いから、この辺りは小型の魔物に要注意だな。」
「いるぞ。そちこちに。」
「はぁ?って、何処にだよっ!?」
澄ました顔のヴォルに指摘され、ベンダーツさんが周囲を見回します。でも姿なんて見えるはずもなく、ただ木々が立ち並ぶだけでした。
「魔力を感じるからな。精霊も警戒しているが、今のところ襲ってくる気はないようだ。」
「気配も感じるのかよ、ヴォルは。本当に何でもありだな。」
ベンダーツさんの言葉に私は内心頷きます。だって本当に、ヴォルは何でも出来る感じなのです。以前本人に言ったら、即否定されましたけど。
「魔物とはいえ、バカではないからな。こちらの隙を狙ってくるつもりなのだろう。」
「いい加減、討伐も飽きたんだけど。魔物ばかり、しかも雑魚ときた。剣の錆にしかならないじゃねぇか。」
「奴等の狙いは俺の魔力だ。魔物は常に魔力に飢えている。」
真顔で自分が餌だなんて言うの、ヴォルくらいじゃないですか?現実的な分、私は怖いだけなのですよ。
「ヴォル、その言い方じゃメルが怖がるぞ。」
え?思わず隣を並走するベンダーツさんを見つめました。
「何がだ。」
「気付けよ、本当に。頼りに思っているのはお互い様なんだろ?ヴォルもメルも、互いを必要としているのは端から見ていて良く分かる。だからこそ、どちらも欠けないような努力が必要なんじゃないか?」
努力…ですか。確かに私も、いつもヴォルに守ってもらってばかりです。それでヴォルに傷付いて欲しくないって言うのは、勝手すぎますよね。
「俺は………。」
何かを言い掛け、口を閉ざしてしまいました。ヴォルはヴォルなりに、考えがあっての事なのだと思います。だからこそ、私はヴォルを責めるような事が出来ません。
「あのなぁ。これは魔力持ちだろうがそうじゃなかろうが、当たり前の事なんだぜ?守る為の努力を怠れば、どちらかが残される立場になるだろうが。残った方はどうなる?………守れなかったと、自分を責めるんだ。」
重い言葉でした。私の心に両親の顔が浮かびます。私の我が儘を聞いてくれて…結果、失う事になってしまった人達です。
そう、私は今でも悔いています。ヴォルのおかげで以前程の辛い感情はなくなりましたが、それでも思い出す度に心に痛みを感じます。何故あの時、自分はあんな我が儘を言ってしまったのかと。




