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「結婚しよう。」  作者: まひる
第一章
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5.つけておけ【4】

「宿に戻る。」


「はい。」


 俯き気味にヴォルの隣を歩く私です。今はニコニコ笑う事が出来ません。


「ここで待ってろ。」


「はい。」


 周りを見回す心の余裕もなく、私は俯いたままヴォルの言葉通り一つのお店前で待っていました。まだ心がモヤモヤしています。と、俯いていた私の視界で手をとられました。


「え…?」


 その相手を見上げると、知らない男の人でした。ニヤニヤと笑っています。何がおかしいのでしょうか。


「君、一人?暇だったら俺等と遊ばない?」


 周りには三人程の同じような笑顔の男の人達がいます。えっと…、遊ぶのですか?


「何をしてですか?」


 首を傾げて問い掛けた私に、男の人達がニヤニヤ笑いを酷くして答えます。


「ナニをしてだよ。」


 何…ナニ?イントネーションが僅かに違います。この言い方、大分前に………あ、ヴォルが出会った頃の私に言っていましたね。16年間男性とまともなお付き合いのない私は、この方々の言葉の意味が分かりません。


「えっと………。ツレがいますので、申し訳ございません。」


 とりあえずついていく気はないので、軽く頭を下げて断ります。ですが、私の腕はまだ一人の男の人に掴まれたままでした。微妙に痛いですね。


「あの、痛いのですが。」


 訴えてみましたが、男の人達はニヤニヤ笑っているだけです。困りました。


「行こうぜ?」


「えっ?!」


 無理矢理腕を引かれました。バランスを崩して、私は腕を掴んでいる男の人の胸にぶつかります。逃げられないようにか、肩を押さえられました。………いや………何……?私は全身にゾワゾワと鳥肌が立つのを感じます。嫌悪感。嫌なのだと、ハッキリ分かりました。ヴォルに触られても全然平気なのに、この人達は嫌でした。


「イヤッ!!」


 思わず叫びます。肩を押さえ付けられている為に動けませんでした。涙が滲みます。


「グハッ!」


 次の瞬間、突然変な声をあげて私を捕まえていた男の人が消えました。フッと一瞬身体が軽くなり、その後すぐに温かく包み込まれます。あ、この匂い…知っています。感覚で安心を覚え、(コワ)ばっていた肩の力が抜けました。



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