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「結婚しよう。」  作者: まひる
第五章
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8.己が手のように【3】

「ヴォルティ様。お止めになられるようにご忠告差し上げましたが。」


 ベンダーツさんが魔物と対峙しながらも冷たく告げてきます。


「試さなくては分からないだろ。」


 それでもヴォルは大して気にもせず、掌を広げたり閉じたりしていました。動きの確認なのでしょうか。


「感覚がないから分からない。焦げてはいないが。」


「その素材自体が微量の魔力を放っている特殊な木材です。簡単に燃えたり凍ったりはしないと思われますが、あくまでも義手です。」


 自分の手ではないと言いたいのでしょうか。冷たい口調とは裏腹の、心配性なベンダーツさんなのです。まぁ、それを表に出さないのはヴォルと一緒ですね。


「己が手のように使えなくては意味がないだろう。」


 ヴォルの方へベンダーツさんの意見が伝わっている様子はなく、あくまでも自分の感覚を見極めようとしているようでした。義手は魔力を通していると聞いたので、魔法として放つ魔力とは別の微調整が必要なのでしょう。


 でもそこはさすがと言うべきでしょうか。その後幾度も魔法を放っている間にその感覚を掴んできたらしく、ヴォルが放つ魔法の精度と威力が増してきたように見えました。


「昔から実践で身に付くタイプなのですよね。…後でメンテナンスをしなくてはなりません。」


 小声で呟いたベンダーツさんです。ヴォルの事を良く分かっていますね。何だかんだと、二人は良い関係を築いているようです。…(ウラヤ)ましいですよ。


「…終わりだ。」


「はい、こちらも終わりました。」


 二人が魔物の掃討(ソウトウ)を終え、私の方を振り向きました。何だか…、あれだけの魔物の討伐も全く苦ではないようです。凄いとしか言いようがありません。


「お、お疲れ様でした。」


 ペコリと頭を下げます。勿論、辺り一面に魔物の肉片が散乱していました。それでも、私は気分を悪くしていられる立場ではありません。


「…大丈夫か、メル。 」


「魔物の死体に気分を悪くされるようでは、共に討伐の旅などお辛いだけではありませんか。」


 うっ…、言われてしまいました。強がっていても、既に顔色が悪いのかもしれません。


「す…。」


「問題ない。メルは俺が守る。」


 謝罪しようとした私の言葉を(サエギ)り、ヴォルが後ろから抱き締めてくれました。不安に思っている事が見抜かれてしまっているかもです。


「何かお手伝い出来る事はありませんか?」


 討伐に参加は出来ませんが、薬草の知識はベンダーツさんから教わりました。って言っても、ヴォルも知っているのでしょうけど。あれ?私って、本当に足手まといなだけですか。



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