≪Ⅴ≫つけておけ【1】
≪Ⅴ≫つけておけ
大きな町に着きました。こんなにも人を見たのは初めてです。
「ドゥーナガの町だ。この辺りの農産品を取りまとめている。」
「賑やかですね~。あ、ヴォル。あの大きな建物は何ですか?周りと比べて、物凄く立派ですが。」
町の大通りをウマウマさんに乗ったまま行きますが、正面にドカーンと大きな建物がありました。
「ここの領主の屋敷だ。」
「領主様ですか。」
きらびやかで、いかにもお金を持っています的な建物ですね。
「ここの税金が高いと言う調査依頼があった。」
「調査依頼ですか?ヴォルは冒険者ではないのに、依頼が来るのですか。」
「………依頼はギルドからではない。」
あ…今、物凄く私に隠し事をしましたね?ヴォルは私に嘘はついてないと思えるようになりましたが、本当を隠す時にはとても違和感がありますから。
「えっと、ヴォル?私、あなたの隠していますよシグナルが分かるんですけど。」
「……。」
無言になりました。けどもう何日も一緒に行動しています。微妙に目の表情が変わる時とか、言葉の言い回しとかあるのですよね。
「この宿に泊まる。」
「分かりました。」
結局私の質問に答えてはくれませんでしたが、ここに何かがあるのは事実のようです。って言っても、私では探す事なんか出来ないでしょうけど。
「商店に行く。メルも来い。」
「はいっ。」
私が町を楽しみにしている事は、きちんと覚えていてくれているようです。そう言う些細な事が嬉しいですね。
私達は宿の部屋に一度荷物を置き、改めて商店に足を向けました。あ、ウマウマさんは宿屋の厩舎に預かってもらっています。
「ぅわー、たくさん品物がありますっ。」
目にするもの全てが新鮮で、とても楽しい空間が広がっていました。これが商店通りと言うものなのですか。私が住んでいた村は、こんな風に建ち並ぶ商店なんて立派なものありませんでしたから。
「欲しいものがあったら言え。」
またヴォルが私に告げます。けど欲しいものなんて選べない程、たくさんの品物が並んでいるのですよ?それに金額が…通貨単位が違うので、私の知る物の価格とは異なるのです。




