≪Ⅱ≫そんな生活があった【1】
≪Ⅱ≫そんな生活があった
「精霊がメルの言葉を聞き届けてくれたようだ。俺に回復魔法が掛けられた。」
「回復、魔法?…でも、存在していないって言われてませんでした?」
確か、生命の精霊さんが…あれ?
そんな私の反応に気が付いたのか、ヴォルの口許に笑みが浮かびました。
「そうだ。以前、研究室で生まれたのを思い出したか?」
「はい、あの時の小さな精霊さん…。」
「そうだ。今もここにいるのだが、その者がそう告げている。」
「す…、凄いですっ。精霊さん、人を魔法で治す事も出来るのですか?」
「普通はしないがな。この生命の精霊がメルを気に入っている事と俺の研究室で生まれたって事で、今回は特別だそうだ。」
特別…、それも十分すぎる程のプレゼントです。
「ありがとうございますっ!!あ、姿は見えませんが…ありがとうございますっ。」
精霊さんの居場所を探してキョロキョロ辺りを見回し、気付いたヴォルに指で場所を教えてもらってのお礼を言いました。
「そんなに礼を言われると困る、とさ。」
ククッと笑いながら、ヴォルが今の精霊さん情報を教えてくれます。困ってしまうのは困ってしまいますが、でもお礼を言わずにはいられなかったのです。
「でも本当に…嬉しいです。」
先程までの事を振り返り、溢れてくる涙を止める事が出来ませんでした。嬉し泣きをしながらお礼を言う私に、精霊さんがもっと困ってしまったかもしれないですね。ヴォルは優しく私の肩を抱きながら、何も言わずに宥めてくれました。
「泣いたら…余計にお腹が空きました。」
ヴォルが手渡してくれたタオルで赤くなった鼻を押さえながら、自分の空気を読めないお腹が羨ましく思えました。どんな時でも意思を主張するのですから、ある意味最強です。
「そうだな。キッチンにでも行ってみるか。」
「勝手にあさったら怒られませんか?」
「その時はその時だ。行くぞ。」
「はいっ。」
怒られないかは心配でしたが、私も空腹に耐えられませんでした。急いでヴォルの後を追いかけ、初めて入るキッチンにドキドキしていました。
ちなみに朝使った食堂は立入禁止になってまして、そことは別の食堂に隣接するキッチンへ入ったのです。
「とりあえず、このパンは食べられそうだな。後は、これとこれと…。」
ヴォルは次から次へと食料を物色し、手当たり次第にテーブルの上に広げていきます。旅で彼の料理の腕を知っている私は、目の前に並べられる食材に自然と心を弾ませていました。
って言うか、私も何か作れるのではありませんか?ここには道具もありますし…。




