6.知りたい【2】
「…どうしても、ですか?」
「………すまない。これは…、何とも…。」
どうやら、精霊さんはかなり際どい事を告げたようです。だってそうでもなければ、これ程ヴォルが言い淀むなんてないですから。
「分かりました。では、もう聞かないでおきます。」
私のその言葉に、明らかにホッとしたようなヴォルでした。少しだけ寂しく思うと同時に、私はここに来た一番の理由を思い出しました。
「って言うかヴォル?生命の精霊さん、さっき生まれたって言ってましたよね?」
「あ、あぁ。朝ここに来た時に精霊達がざわついていてな。メルが来る少し前に誕生した。」
「そうなのですか。残念です、貴重な場面に遭遇出来ませんでした。」
本当にガッカリしたのですが、ヴォルはそれでも驚いているようです。
「本来精霊は、人の前では姿を隠すのだ。特に誕生したてで力のない精霊は、森の奥に身を隠して自らの成長を待つ。」
言われて初めて気付きました。そうですよね、身を守る術を持たないのであれば当然の事です。でもこの子、私に触れてくれましたよ?
「…メルだから、なのだな。」
はい?それって、どういう…。
「メルだから、触れたくなる。」
「っ!?」
ボンッと赤くなったであろう私の顔。そんな艶っぽい目で見ないで下さいよ…。頬を必死に隠す私ですが、ヴォルは微笑むばかりでした。
「あ…そうなると、回復の魔法が出来るようになるのですか?」
「…そうだな。契約にもよるが、精霊次第でもある。元々魔法を使えるのは人間ではない。」
それは聞いた事があります。魔法を使わせてもらう、って。
「でも、魔力を持っている人が全てその考えではないのでしょう?」
「そうだ。魔法を己の能力と勘違いし、周囲を圧しようとする者もいる。国ではそういった場合も考慮して、魔力持ちを管理して統括しようとしている。」
「魔力を持っているだけで、その人の居場所が分かってしまうのですか?」
「あぁ。」
「何だかそれって、監視されているみたいですね。ヴォルが旅に出ている間も、もしかしなくても監視されていた訳ですよね?」
「そうだ。死んだとしても遺体を魔法石にする為だ。」
淡々と語るヴォルですが、おかしくないですか?それって、人としての価値観から外れていますよ。…価値観、ですか。私の価値観も、ここにいる方々と違うのですよね。物のように扱われる存在がいる事を改めて認識しました。勿論、納得は出来ませんが。




