4.我が儘ではない【5】
「…ル、…メル。」
何処かで私を呼んでいる声がします。…この声、知っています。
「…ん…っ。」
柔らかい光が見えたので、薄く目を開けてみました。あぁ、ランプの灯りでしたか。視線を巡らせ、こちらを見つめるヴォルに気が付きました。
「ヴォル…、おはようございます?」
「あぁ…、まだ夜だがな。気付いて良かった。メルが意識を失ったから、酷く焦った。」
意識を…?ヴォルの言葉に今度は記憶を巡らせ、瞬間湯沸かしの如く真っ赤になった私です。そう言えば何と言うか…私、ヴォルと致してしまいました。
「大丈夫か?」
心配そうに私の顔を覗き込むヴォルに、とにかくコクコクと頭を縦に振ります。
「水を飲むか?」
「は…い。」
そう言えば、物凄く喉が渇いています。まぁ、それは…ですよね。とりあえず、ヴォルが差し出してくれる水を飲む為に起き上がります。ん~…、違和感がありますね。えっ、何処にって?それは…あはは…。
「本当に大丈夫か?」
水を飲んだ私に、再度問い掛けてくるヴォルです。余程心配させてしまったようですね。
「はい、大丈夫です。少し身体が…筋肉痛ですが…。」
「そ…、そうか。」
私が赤くなったのを見てか、ヴォルまで頬を染めました。って言うか今気付きましたが、すっかりサッパリしている私です。勿論、薄手の寝具を身に付けています。
「ヴォルがその…、綺麗にしてくれたのですかね?」
「あぁ。ガルシアに湯を用意してもらったのだ。シーツも替えてもらったから、メルはそのまま寝ると良い。」
ガルシアさんに見られました…。まぁ、今更なのですけど。
「ヴォルはまだ起きているのですか?」
「俺は少し…。」
「何故です?」
口を濁すヴォルに詰め寄る私です。チラリと外を伺えば、もうとっぷりと日が暮れています。いくらなんでも、休んだ方が良いのではないですか?
「…興奮して、…寝れそうにない。」
はい?
「またメルを襲いそうだから…、研究室で休む。」
あ~………男の人って、体力がありそうですものね。でも。
「嫌です。」
「メル?」
「一人で寝るの、嫌です。寂しいです。ヴォルと一緒が良いです。これって我が儘ですか?」
私だけが思っているのなら、これは我が儘ですよね。
「…いや、我が儘ではない。俺が少し我慢すれば良いだけの事だ。部屋を空けるにせよ、気になるだろうしな。分かった、一緒に寝よう。」
「ありがとうございます、ヴォル。」
嬉しいです。とても幸せですよ。出会った頃では考えられなかった事ですね。




