4.我が儘ではない【2】
「あ、ありがとう…ございます?」
「おいおい、俺の言った事を聞いていたのか?一人は危険だ。アイツと一緒にいろ。一人なら外に出るな。」
「あの…、ヴォルの事…ですよね?」
「当たり前だ、お前は馬鹿か。他に誰がいる…っ!?頭の悪い奴だな。いっそ犯してやろうか。」
「そんな事をしてみろ。お前の首が飛ぶだけで済むと思うなよ。」
「っ?!」
びっ…ビックリ二回目です。ベンダーツさんの背後から、冷たい鋭い声が静かに響いてきました。ヴォル、登場です。えぇ、それは怖い顔をしていますよ。あ、ヴォルの場合は凍った様な感情のない顔なんですけどね。
「…何だ、自分から来たのか。てっきり研究室で拗ねてるから、また朝まで放置かと思ったんだが。」
ベンダーツさんは、私の手首を掴んだままヴォルに向き直ります。本当にこの人、ヴォルに慣れていると言うか怖がらない人ですね。
「手を離せ。」
「嫌だと言ったら?」
「…お前の手首ごと切り落とす。」
ぅわ~、やめてくださいよっ!それ、冗談じゃないですよね?
「ったく…、しっかりとお前が掴まえとけ。今度フラフラしてるとこを見たら、俺が食ってやるからな。」
はいっ?!私を食べても美味しくないですよっ?!
「…お前、考えてる事が違うから。」
青くなった私に向き直ったベンダーツさんは、一言それだけを告げて手を離してくれました。って言うか、人の考えてる事が読めるのですか?そんな事を思っていた私をよそに、さっさと立ち去るベンダーツさんでした。勿論ヴォルは、彼の姿が見えなくなるまで鋭い視線を投げ付けていましたが。
「はぁ…。」
大きくヴォルが溜め息をつきました。最近多くないですか?もしかして、疲れています?
「あの…、大丈夫ですか?」
私の言葉に、ヴォルが恨めしそうな瞳で見てきます。ん?何でしょうか。あ、もしかしてまた精霊さんがヴォルを呼んだのですかね?
「帰るぞ。」
「えっ?」
「部屋にだ。」
「はぁ…あ、あの…っ。」
「ガルシアには言っておいた。」
「あ…、そうですか。」
まぁ、ガルシアさんが知っていれば問題ないです。それに部屋って言うのは、ヴォルの部屋の事ですよね。ん?何でしょうか。ヴォルが私を見ています。
「メルはガルシアの心配をするのだな。」
「はい?」
「俺はどうでも良いのか?」
な…、何ですと?目を見開いた私に、ヴォルが一歩近付きます。
「俺はメルじゃないと駄目だと言っているのに…、俺を放っておくのか。」
ち、近すぎますよっ。顎を指先で取られ、アワアワしているだけの私でした。本当にこういった対処法が分かりません。




