2.どうすれば良い【3】
「お気付きではありませんでしたか?この半年、貴女は毎日様々な勉学に励んでいらっしゃいました。ですが、知識だけではバツです。お心をしっかりとお持ちください。」
ベンダーツさんってキツい言葉をぶつけてきますけど、案外優しい人ですか?もしかしてヴォルに酷い言い方をするのも、何か理由があったりします?
「何ですか。そんなにやけた顔で見ても、私には気持ち悪いだけですけど。」
し、失礼ですね。
「それはすみませんでしたっ。」
少しムッとして言い返すと、僅かにベンダーツさんの表情が緩んだ気がしました。
「それくらい強気でいきなさい。下位の者の言葉に耳を貸す事は悪くはありませんが、それに左右されるのはなりません。」
「分かりました。」
本当に…素直に優しく出来ないのですかね、この人は。でも、確かにそうですね。いちいちヘコんでたら、身体が持ちませんよ。
「優しいんですね。」
思わずニッコリと告げます。…ベンダーツさんが硬直しました。どうしたのですかね?
「あ…、貴女という方は…。」
珍しく狼狽えていますが、私は何かしましたか?とりあえず首を傾げてみます。
「何でもありません。では、礼儀作法の復習から始めます。」
あら、復活が早いですね。ベンダーツさんは片方の眼鏡を触りながら、いつもの口調に戻りました。
そんなこんなであっという間に午前中が終わり、お昼を挟んで午後の勉強です。薬草の知識は私自身が欲しかったので、色々と見聞きするのがとても楽しいです。
「この薬草は何でしたか?」
「あ、消炎止血用ですよね?実際に生えているのを見るのは初めてですけど、使った事がありますし。」
そうなのです。私は今、薬草専用農園に来ています。本に書かれたものだけではなく、実際に触れていこうという方針のようです。
「でも、苦いんですよ。」
「当たり前です。口にするものではありませんから。」
アハハ…、口にしたのは私です。だって、擂り潰す物がなかったのですから。
「道具がなかったら、どうすれば良いのですか?」
「探しなさい。」
あ~、簡潔なお言葉ですね。
「とは言っても、清潔でなければ意味がありません。傷口に細菌が入れば、それこそ薬草では間に合わなくなります。その場合は、咀嚼しかないですかね。味はどうであれ、身体に害はありませんから。」
ベンダーツさんの言葉を聞いてホッとしました。今更なのですけど、それ以外に考え付かなかった私ですから。やはり、知識は大切ですね。あって困る事はないですよ、本当に。




