3.抱き枕になるんだろ【4】
「はい…。」
恐る恐る近付きました。どうしたら良いのでしょうか。寝具の端に膝をつきましたが、どうしたら良いのか全く分かりません。
「きゃっ!」
すると突然腕を強く引かれ、私は自分の意思に反して寝具の中に滑り込んだのです。状況が分からず、パチパチとまばたきを繰り返します。
「抱き枕になるんだろ。」
後ろから…正しくは後頭部の上の方からヴォルの声が聞こえました。えっ…、抱き締められているのですか?背中が密着しています。私の身体はヴォルの腕がお腹の辺りに回されているので、全く動けません。頭は腕枕をされているようで痛くありませんでした。
「あの…っ!」
戸惑いの方が強く、混乱して言葉が出てきませんでした。
「寝る。」
あぁ、相変わらず簡潔ですね。私はこんな状況で寝られるはずがないです!………背中が温かいですね。野宿にも少し慣れてはきましたが、やはり魔物がいる外の世界で安心して爆睡なんて出来ません。尚更離れているとは言え、男の人が一緒なので。と言う事で、私はあまり寝た気のしない毎日を送っていました。ですが、今のこの状況はそれ以上です。真後ろにいるんですよ!!
って言っていた心の声は何処へ。すっかり熟睡してしまった私は、ウマウマさんの朝イチの嘶き声でパチリと目が覚めました。ああああああああ…、私ってば何て事をっ。未だに背中を温めてくれる体温に安心と混乱を覚え、ヴォルを起こしてしまうのが怖くて目覚めてから動けないでいます。…ですが、心地の良い朝の目覚めでした。
「起きたのか。」
「は、はいっ!」
飛び上がる程驚きました。まぁ、ヴォルにしっかりと固定されているのでビクッとしたくらいですが。
「良く寝られたようだな。」
え?………私の事、心配していてくれてたのですか?ヴォルの今までにない優しい声に、私はこれまでとは違ったドキドキに包まれました。何でしょう、これ。
「どうした、メル。」
「あああああのですねっ!」
「あぁ。」
静かな声。身体を伝わると、声がいつもより甘く聞こえ……………ませんが!!ど、動揺している場合ではないですっ。