4.俺の精霊を一人つけた【4】
コンコン。強めのノックの音が響きました。私はまだ、後ろから伸ばされたヴォルの腕に抱かれているままです。ワタワタと慌てますが、ヴォルは全く力を緩めてくれません。あの~、人に見られるのはかなり恥ずかしいのですけれど?
「気にするな。どうした。」
前半は私に小声で、後半は扉の向こう側に向かってヴォルの声が放たれました。だから、気にするなって言うのは無理なんですって。
「ガルシアでございます。サーファの事で…。」
「入れ。」
ヴォルはガルシアさんの話の途中で告げました。言いたい事が分かっているからなのでしょうか。
「失礼致します、ヴォルティ様。先程はサーファがお心を煩わせたようで、申し訳ございませんでした。」
深々と頭を下げるガルシアさんですが、サーファさんは大丈夫だったのでしょうか。
「どうせ一人でキレているのだろう。放っておけ。それと、二度とメルに近付けさせるな。」
「それは…。」
「ベンダーツの指示か。」
「…はい。」
「アイツ…。文句があるなら俺のところに来いと言っておけ。」
「ですが…。」
「以上だ。」
まだ納得いかない様子のガルシアさんでしたが、ヴォルはそれ以上の言葉を打ち切ってしまいました。ガルシアさんは渋々ながらも頭を深く下げた後、退室していきました。何かヴォル、偉そうです。いえ、初めて会った時もそうでしたね。横暴な人だと思ったのでした。そう言えば、今はそうでもないです。…私、慣れたのでしょうか。
「どうした、メル。」
呼び掛けられて顔を上げると、先程とは違って私の知っているいつものヴォルでした。いつの間にか私の正面にいて、不思議そうに小首を傾げています。これ、最近良く見ますね。瞳だけではなく、ジェスチャーが感情を表現しているようです。
「少し考え事をしていただけです。…あの、ヴォル。この魔力の液体は誰にでも作れるのですか?」
「…そうでもないようだ。」
私から視線を外したヴォルは、精霊さんの一人に意識を向けていました。え?精霊さんに聞いてくれたのですか?
「ヴォルは、精霊さんとお話が出来るのですよね?私には聞こえませんでしたが。」
「そうか、聞こえないのか。」
「凄いです。ヴォルは色々な事が出来るのですね。」
剣も魔法も強く、血筋も見目も素晴らしい。精霊さんにも好かれてるなんて、本当に私にとって雲の上の存在です。皆がヴォルに好かれようとするの、当たり前ですよね。私は自分に不釣り合い過ぎて、逆に畏縮してしまいますけど。本当に…、何で私なのでしょう。




