2.命の浄化【5】
「それでも、ヴォルは助けてくれましたから。」
確かに、彼は私を守ると言っていました。そしてふと、こう言う意味なのだと理解しました。村や町以外の場所は、魔物の世界です。それくらいは知っています、出会った事はありませんでしたが。そして商人などの各集落を渡り歩く人々は普通、用心棒を高い報酬で雇っているそうです。
「ヴォルは、冒険者ではないのですか?」
そう。魔物と戦う力のある人は、用心棒か冒険者をしています。それで報酬をもらい、生活するためですね。
「そうだな、本質的に冒険者と言う訳ではない。これは偽りの姿。けれど、今メルに話す事は出来ない。」
そう…なのですか。私はヴォルにとって、どのような立場なのでしょうか。
「行くぞ。」
ヴォルもウマウマさんに跨がり、先程までと変わらず私を後ろから抱き包むように手綱を握ります。自然と私を支えるようにして進むのです。訳が分かりません。この優しさの意味はなんでしょう。
「あの…、ヴォルは私に何をさせたいのですか?」
恐る恐る問い掛けながら、後ろを見上げます。
「言っただろ、俺の妻になれと。」
淡々と答える彼の言葉には、全く本心が見えないのです。
「そ、それは聞きましたけど…。」
「それならば、これ以上話す事はない。」
「はい…。」
突き放すような言葉に何も言えなくなり、私は黙ってヴォルの手綱を握る手の中にいました。このまま私、セントラルに連れていかれるのでしょうか。けれど、セントラルはこの大陸ではないはずです。
「あの…。」
「何だ。」
「セントラルまではどれくらいかかるのですか?」
私は生まれ育った村以外、外の事は全く知りません。セントラルの事も、そういった大きな町があると言う事しか知らないのです。
「ここからなら、半年も掛からないだろう。」
驚きです。簡単に言ってくれましたが、村の外に出た事がない私が半年も?この、魔物がたくさんいる世界を旅するのですか?そりゃ、ヴォルは強いんでしょうけど、私は明らかに足手まといです。
「あの…、私は戦えませんが?」
「そんな事は分かっている。戦わせる気もない。」
ハッキリ口にして下さるのはありがたいんですけど、根本的な不安を拭い去ってはくれないのですね。




