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彼女がタンクだった……別れたい  作者: 鴉野 兄貴
彼女がタンクだった……別れたい

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2/13

嘘……廃人のモラル低すぎ!

「♪♪♪」


 つくなは頼られると調子に乗る困った子である。

 キュラキュラと無限軌道キャタピラを鳴らして進むわけだが。


 皆、チハの速度を舐めていた。

 もう一度言う。チハたんの速度を舐めていた。


 漫画とかで、戦車から逃げる主人公とか、あっさりハンドガンで戦車破壊する主人公とか。アレ、嘘やからっ?! いや、チハだったら携行火気で破壊可能かも知れんが(以下略)。


 そんな風に思い悩む俺をおいていくつくなに気付いたのはかなり距離を取られてから。


 シェイハ! シェイハシェイハ! シェイハシェイハシェイハ! オゥイェーーイ! オゥイェーーイ! オゥイェーーイ!


「つくなああっ?! ちょっーーとまてえっっ?!?」

「ちーちゃんが追っかけてきてくれる……じーーん。感動だ」


 因みに、馬に乗れる職は限られている。つまり、騎士と侍。あとは乗馬スキル持ちとリアルで乗馬経験がある人間だけだ。



 チハの机上最高速度は時速40キロメーートルだが、そこまでは出ない。なぜなら(以下略)。

 それでも俺達のように中の人たちがキモオタやデブやガリの集まりで歩くことそのものが面倒な連中よりは移動速度は速いし安定している。


 要するに、突出したつくなはあっさりゴブリンに囲まれていた。

 因みに、ゴブリンはこのゲームでは最弱のモンスターだ。コボルドより弱い。

 あっちは固体ではゴブリンに劣るが数で押してくるからな。


「……!!?」


 どうやら油をかけられて火もつけられたらしい。

 泣きながらこっちに向かってくるつくな。こっちくんな。


「つくな! そのまま川に突っ込め」

「わかったよ~~!?」


 俺は小型核爆発呪文を唱え、ゴブリンの先頭を殲滅。オーバーキル? 死にたくないので加減はしない。弓に矢を番えると残った連中に矢を放ち、最後は刀を抜いて突っ込もうとして。


「あれ? 廃人どもは何処!?」



 廃人どもは木だの岩だのに隠れていた。お前ら、どんだけキチン?

『友情は コボルドより弱く トーレナ岩より脆い』

 至言である。


 俺たちはその後も歩く。

 ああ。何故俺は神の塔なんぞ登らねばならんのだ。

 かといってこいつ一人でいかせるわけにはいけないしいやこのブスのことなんてどうだっていいけどそうじゃなくて。

 ふいに声をかけられる。


「ちーちゃん」

「あん? つくな」

 エンジン音がやかましくてよく聞こえない。


 馬はアイテム枠の癖にキャタピラ音やエンジンの音にビビるらしい。なだめながら進む俺。

 キャタピラが踏みつぶした草花が嫌にリアルだ。草汁の臭いがしそうな感じが生々しい。


「みんなついてこれているのかな」

 知るか。あんな薄情な連中。

「けしかけるだけけしかけておいて逃亡する奴らは友人でもギルメンでもねぇ」


 ましてやつくなは騎士レベル1。あいつらはマスターレベル13以上。



 100レベル以上だって少なからずいるのに「死んだらソレまでだから」と抜かしかくれていたのだ。

 補足しておくと10あれば一般的な人間の最大レベル。特殊クエストを受けて10以上になることが出来、13でマスターと呼ばれ、ほとんどの魔法や技を覚える。


 ただし、侍や騎士や司教などのハイブリットジョブについては魔法使いや僧侶の魔法をすべて覚えるには最低でも26必要だったりする。

 ちなみに俺36。廃人? ほっとけ。


「なんかさ」

「あん」


 つくなの砲塔がこっちを向く。……なにをする気だ?


「お前、俺を撃つ気か」

「ちがうよっ?!?」


 砲塔が器用にぶんぶん回る。

 馬がビビるからやめろ。


「自転車デーートみたいじゃない」

「馬と戦車じゃどうみても騎乗随伴歩兵と戦車だ」

 つくなの索敵能力は予想通り低かった。元々本人が鈍いというのもある。



 とりあえずおれの視力と警戒スキルがないとゴブリンの不意打ちに遅れを取るらしい。

 何故索敵能力が低いのかって? そもそもチハには当時の戦車にしては珍しく通信機能があったものの視界的な問題で(略)。


「ね。ね。ちーちゃん」

「なんだ」


 馬を止め、エンジン音を切ってもらう。

 うるさくてかなわん。


「手、伸ばして伸ばして」

「う~~ん?」


 急にエンジン音。嫌な予感。馬がビビる。

 鋼鉄の砲塔が俺の顔面に迫る。

 勿論必死でかわす。殺す気か?!


「なぜキスをかわすんですか~~!?」


 今の鉄の塊の襲撃はキスだったのかよ??!

 至近距離でつくなが自棄で放った57ミリ砲が炸裂。鼓膜が破れた。



「……傷薬の無駄遣い」

「はい。ごめんなさいちいちゃん」



 つくなは1レベル僧侶と同じく一日一回しか回復魔法が使えない。


「傷薬といえば、装甲が油と炎で真っ黒になっちゃいました。お嫁にいけません」

「戦車なら普通」


 アホな会話を繰り返しつつ『神の塔』を目指す俺達。

 ああ。町で平和に暮らしていれば何処かの勇者さまがボスを倒してくれるだろうに、

 なんで俺はつくなの莫迦の所為でこんな危険な目に遭わねばならんのだ。


「ねね。ちーちゃん」

「あん? 敵は見つからずだ。なんだいったい」


「ありがとう。ついてきてくれて」

「……ばか」


 褒めたり挨拶するのは得意だが、されるのは苦手だ。



 ----== SystemMessage ==----

 ○月○○日、○○時より、全ての町、村エリアのメンテナンスを行います。

 該当エリアにいる方は、エリア外に移動、または運営の手間を省くため死んでくださるようお願いいたします。



 この瞬間、村や町で誰かが助けてくれるまで待機と日和見を決めていた連中は死んだ。

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