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彼女がタンクだった……別れたい  作者: 鴉野 兄貴
愛に生き、愛に死ぬ。それが孤高のファンタジスタ

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12/13

「君がッ」 「泣くまで」 「 殴るのをやめないッ!」

 迫り来る巨体。


「!?」


 そう、どんな達人でも巨体によるただの体当たりは防げない。水と風の防護ごと吹き飛ばされた俺に龍の勝ち誇る声が聴こえる。


「栗山。楽しかったぜ」


 そういって、ヤツのあぎとが俺に迫る。

 じゅ。牙を伝って落ちた酸の唾液が俺の頬を焼く。

 脚ががくがくいって、立てない。

 しかし。


「このときを待ってた」


 本来、九十七式中戦車の機関銃は命より弾をケチる日本軍の悪しき伝統を受け継ぎ、20発までとなっている。しかし、つくなの砲は違う。

 弾数無限。どういう理屈か一分間に600発の徹甲弾を放ち、地龍の分厚い鱗と皮をも貫く。ドイツの科学力は世界一な砲。しかし本質はそこではない。


『この砲は取外しが可能なのだ』


「機関銃は本来サムライには扱えないけどな」

 この距離ならはずさねぇ。



 確かに大した硬さだったぜ。てめぇの身体は。

 だが、内部からならどうよ?


 ……轟音がヤツの口腔に炸裂した。


「く……り……や……ま……」


 やった。命中だ。たっぷり弾の味をくらいやがれ。このドクサレ……が。


 ずるり。膝が折れる。


 動かなくなった龍。

 暢気に俺を照らす太陽の光を受けて俺はへなへなとくずれ落ちていた。

 なにが護ってあげるだ。

 俺はお前を護れなかったのに。


「ごめん。つくな」


 視界まで暗くなってら。

 いや。違う。


 俺の視界を塞ぐもの。

 それが龍の尻尾と気がついたのは吹き飛ばされた後だった。


「やってくれたな。栗山!?」



 魔剣『村様』は龍の尻尾に刺さっている。つまり俺は身を護る術がない。

 俺を食い殺すべく、舌が裂け血の滴る龍の口が俺に迫る。

 むせるような悪臭と血の臭い。だが、それよりこのままつくなの仇を討てないことのほうが。

 クソッッタレぇェェェッ!!!


「えいっ!?」


 轟音。


「え? !?」


 振り返る。

 そこにはベコベコの、ボコボコになって。

 ……無限軌道の外れた鉄くずのような巨大な物体。


「まさか!?」

「たっだいま~~!?」


 さらに、砲が放たれる。何度も仕留めそこない、傷ついた『逆鱗』めがけて。


「貴様……死んだのではないのか!?」

「愛は無敵なのだ」


 また、一発放たれる。



 どうなってるんだ? おいッ?!!


「いや~~。回線不良で落ちちゃったよ。悪い悪いちーちゃん」


 へ!?


 確かに、デスゲームとはいえ回線で繋がっている。

 回線不良時は自動攻撃をアバターーが行い続けたりするし、通信が完全に断絶し、回線落ちすれば。


「よくよく考えたら、そりゃそうだね。

 ネットが繋がらなければログアウトできるよね」


 そんな単純な理由で脱出可能?

 今までの苦労って?!


「でもお前は戻ってきたのか」

「そりゃそうだ。ちーちゃんをほっとけない」


 ……ばっ……か。野郎……。

 熱い目頭は炎によるものではない。でも何より熱くて。いや暖かい。


「やるよ。ちーちゃん」

「あいよ」


 俺は『村様』を構え、霧雨のバリヤーを張る。



「機関銃、返してね」

「あいあい」


「いくぜッ!?」


 剣が鱗を引き裂き、砲がヤツの喉元の逆鱗を砕く。

 苦痛にあえぐ瀕死の龍を砲と剣が切り刻んでゆく。


「栗山。俺たちは」

「……いつまでも。親友だぜ。友昭ともあき


 魔剣『村様むらさま』の妖気と清涼を併せ持つ刃は空間を切り裂きながら、俺の親友だった龍。りょう友昭ともあきを切裂いた。


 ホント、俺たち。どこで間違ってしまったんだろうな。

 瞳を濡らす熱いものは、『村様』の霧雨ではなかった。

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