第一章②
タイキは犬の耳を隠して、家に戻った。母は早く帰ってきたタイキに驚く。
「タイキ、どうしたの」母は無事のようだ。タイキは事情を話し、犬の耳を見せる。母はショックを受けたようだ。無理もないだろう。
「母さん。父さんは」
「そうね」
母は父に連絡しはじめた。その間に、自室に向かう。部屋にはフレディが横になっていた。
フレディは起き上がり、タイキに寄ってきた。
『お帰りなさい』
タイキは辺りを見渡す。そして、フレディをじっと見つめる。
「フレディなのか」
『私の言葉を理解できるのですか』
タイキは頷く。おそらく、犬の耳に変わってしまったせいだろうと彼は解釈した。
『どうしたのですか。その耳は』
「…気がついたら。もっと、普通に話せ」
『うん。タイキ、学校は』
「休みになった。俺みたいになった生徒が出たためだ」
と、タイキはため息をつく。
『タイキ…いや、何でもないよ』
フレディは何か言いかけたみたいだ。
「どうしたの。フレディ」
『本当に何でもないよ。タイキ、人間のままでいられるといいね』
「ああ。フレディ、犬になっちまったら…」
『そん時になってから考えようよ』
と、フレディは言ったのだった。
タイキが帰宅して、数時間後、父が帰宅した。父も同様に犬の耳になっていたのだ。父のはサルーキという犬種の耳である。
「会社の人、ほとんどが同じ症状なんだ」
と、父は母に説明していた。
「父さんは、フレディと会話できる?」
タイキはフレディを抱き抱え、父の元につれてきた。 「お、お前まで…。タイキは会話できるのか」
「一応」
と、タイキは苦笑いしながら答えた。父もフレディと会話できるみたいである。
そして、緊急家族会議がダイニングで開かれる。
「これは病気だろう」
「それだった、母さんもうつるんじゃない?」
と、タイキは言った。帰ってから母はタイキ、父と接触している。
「ニュースを見よう」
父はテレビをつける。テレビでは緊急特番が組まれていた。なぜなら、全世界で犬耳事件が発生したからだ。