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第九話:起床と迷子

活動報告にコメントして下さった黎様ありがとうございます。

待っててくれる人がいるとわかったら力が湧いてきました!

手直ししていて更に遅れてしまいましたが、第九話どうぞ。

まだ暗い中、洞窟の中でもそもそと赤銅色の幼竜が起きてきた。日も出てはいないが幼竜の目には何ら問題ないらしく、簡易の寝床として盛った葉っぱを床に敷き直していた。終わったあとすぐに外に出かけて朝日が登って来るまでミリャの実やルラキフレサの実と追加の葉っぱを取ってきた。


 取って来れたミリャの実は六個、ルラキフレサの実は五十個ほどだ。シャンウーヴァはまだ時期が早いのか不作なのか実が小さく、酸っぱかった。

 えっ?ミリャの実が少ない?そこは、しょうがない。

 ミリャの実を取るには木登りをしなければいけないんだが、いかんせん幼竜には(みき)が太すぎて登るのに非常に苦労する。むしろ、一回登るのに数百、数千の爪痕(つめあと)を残してしまうだろう。そうなると先に木が駄目になってしまう。

 なのでガイルは、一番低い所にあるミリャの実を出来るだけ長い枝でつついて落としてきた。

 そっくり返り過ぎて背中から地面に倒れ込んだり、踏ん張りがきかず横倒しになった挙げ句に使っていた枝が上から落ちてきたり、長かったが(もろ)い枝を使ってしまったために折れた枝が顔面を直撃したり、という悲惨な出来事を乗り越えて六個のミリャの実を手に入れたのだ。ほとんど執念の産物である。

 集めている途中、途中でアスファレスマニタリの(たぐい)をいくらか見つけて食べていたので、腹は減ってない。すぐには作用しないかもしれないが、自分が覚えていたアスファレス(毒の無い)マニタリだと思って毒有りでは洒落にならないのでとりあえず自分で試すに留まっている。

 これでも幼竜生活が長いのと人間(ひと)だった時期に身に付けた知識が相まって、現在これと言った体調不良は起きていない。あっ幼竜生活は関係無ぇわ。



 洞窟の一番奥の広い部屋には入り口近くに小さな穴が左右に一つづつあいている。先住動物が貯蔵庫にでも使っていたのだろう。大きさ的にはどちらも幼竜が一竜(ひとり)くらい隠れられる程。

 その片方に小さな葉っぱを、周りは高く内側にいくほど低くなるように敷き詰めて、その上に傘に出来そうなくらい大きな葉っぱを被せて、それに収穫物を置く。

『まぁ、こんなんでも上出来、上出来。』

 とか独り()ちるとヘリオスが眠っている(そば)に手足を折りたたむように伏せる。何かあった時にすぐ動けるようにするためだ。

 ヘリオスは、無防備に横たわっていて起きる気配がない。呼吸は通常とあまり変わらないので、心配しなくても良いとは思う。

 それでも、【角はドラゴンの命。折れたら、どんなドラゴンでも死ぬ】とまで言われていた。

 厳密に言えば、自分らは生粋(きっすい)のドラゴンではないにしろ、命とまで言われた角を折られてしまったヘリオスは、どうなってしまうのか?角は繋がったものの何か不具合が起こるのではないか?と不安で(たま)らない。










 ―――数時間後―――



「…ン…クゥ……」

 うっすらと開けた目に最初に見えたのは、赤い鱗。視線を巡らせて全体を見て初めてガイルである事に気付いた。自分を介抱してくれたのだろうガイルは疲れているのか、コクリコクリと舟を漕ぎ始めていて先程のか細い声に気付いていないようだった。

 だが、頭痛が(ひど)く、吐き気は無いものの目眩(めまい)がするような気持ち悪さに声を発する気になれない。少しの間、この気持ち悪さと格闘して多少楽になりかけていた所に、ゴツンとガイルが(ゆか)に顎をぶつけた音がしてついでにそのまま起きたらしい。ふっとこちらに気づき、

『ヘリオス!?起きたのか!?大丈夫なのか!?』

 と(すが)るように声をかけてきた。頭痛と気持ち悪さに耐えながら、それほどまでに心配してくれた友に頬笑み、言葉を返す。

『うん、なんとか…』

 ほぅと息をつき『良かった…』を連呼しつつ、ガイルはヘリオスを抱きしめていた。

 しかし当のヘリオスは、その息苦しさとまだ体調がすぐれないためにもがく事も出来ず、

『…ガ……ガイ…ル…ぐる…じぃ……………ガィ…ゥ…』

 苦しそうと言うどころか、死にそうなほど弱弱しい声に驚いて

『わ、(わり)ぃ!つい。』

『くはぁ……少し……くらい…加…減…して………』

『…お前……具合悪いのか?』

 弱弱しくぐったりと自分にもたれ掛かるヘリオスを、心配そうにそっと寝床に寝かし直す。ヘリオスが頭痛なんかの事を伝えると、とりあえず食べ物を口にした方がいいとミリャの実を六つ持って((くわ)えて?)きてくれた。

 幼竜の姿では実の皮を剥く事が出来ないので鉤爪で頭頂部から尻にかけて割り裂く。どうせ芯や種の部分も幼竜の顎や胃には全く問題無しなので、四つに分けたらヘリオスに渡す。

 シャリシャリと旨そうに食べるヘリオスを見て

『もう一個いるか?』

 と聞くと欲しいと言うので同じ要領で二つ目のミリャの実も四つに分ける。結果、ミリャの実:四つ ルラキフレサの実:二十数個を食べ、眠りについた。ヘリオスが消費した分を再度集めるためにガイルは、追加で持ってきた葉っぱを自分用の寝床として盛り、動いた為崩れた掛け布団代わりの葉っぱをヘリオスに被せて洞窟を出る。




 ルラキフレサの実の様な小さく軽い物は背中と翼を使って運んでいるが、ミリャの実のように大きな物は咥えるなどしても精々2、3個が限界なので、こまめに洞窟に帰り食糧庫に運び入れる。水分はこの二つの実で十分(まかな)えるのだが、近くに実のっているすべての実を取ってしまうと、緊急時に食べ物が無くなってしまうし、すぐに実は()ってはくれない。なのである程度蓄えた所で、ちょっと足を()ばして近くを散策することにした。

 ヘリオスを見つけた近くで水の匂いがしたのを思い出してその方面に行ってみることにしたものの、小川の近くまで来て後悔する。

 なぜなら、水場にはありとあらゆる生き物が来るからだ。ちなみに今はガイルを踏み潰せそうな体躯の岩蹄山羊(カプリコルノ)が二頭(雄と雌)、水を飲んでいる。側には岩のような大きさの森林(ガーバート)(グイ)までいる。彼らは草食獣ではあるものの肉食獣に対して自ら攻撃しに行くくらい気性が荒い。

 もう少し彼らの間が狭ければお互いに攻撃しあったのではなかろうかという所に飛び込みそうになったガイルは、気付かれないようにその場を去ろうとする。が、小枝をパキッと逝ってしまい、(ちょっ、待て!字が違うだろ!!)岩蹄山羊(カプリコルノ)の一頭(巨大な角を持つ雄の方)がガイルに気付いてしまった。

『何だ貴様は!俺ッチの恋路の邪魔しやがって!!』

 雄が荒い足音を立ててガイルに迫る。雌の方は雄が邪魔者を追い払うのを待つのが退屈なようで、前足の蹄でカツカツと河原の小石を蹴って催促している。ガイルは逃げたい所だが、岩蹄山羊(カプリコルノ)の雄は簡単に逃がしてくれそうにない。相手の言葉が理解できるのならばせめて話し合いを、と思ったが…

『邪魔して悪かった。すぐにどっかに行くからかんべ…』

『問答無用!!』

 後ろ足で立ちあがり片足2本、計4本の蹄のある前足をガイル目掛けて思いっきり振りおろす。

『わぁぁー!!ちょ、待っ…』

 なんとか避け距離を取って落ち着かせようとしたが、どうやら相手は既に完全に頭に血が上っているようでまっすぐに突進してきている。ガイルは必死で逃げ回りながら水場から遠ざかる。それを岩蹄山羊(カプリコルノ)は執拗に追いかけて時に角、時に蹄、時に体そのものを武器に襲いかかる。

 そのため、森にしばしこんな音が響くのだった。

 ドスン 『のわっ!』  バキン 『だぁっ!』  ドン 『おぅっ!』  ミシミシミシバサァー 『でえぇぇ!?』   バコン  『ひぎぃっ!』  ザシャァッ  『うわぁっ!!』  バキバキバキっ  『みぎゃぁ!!』

(前足スタンプ→角で茂みを薙払い→木の幹に突進→木が倒れ→岩に角を叩きつけ→土ごとガイルを掬い上げ→掬い上げたガイルが突っ込んだ茂みに体当たり)

 スミマセン、描写出来るほどの文才がないんです。ちなみに、ちゃんと避けてますよ?



 30分後、逃亡劇からようやく解放されたガイルは、森の中でたたずんでいた。めちゃくちゃに走ったせいで洞窟の方向が分からなくなってしまったのである。


(たしか日は洞窟の真正面から登ってたし南に行けば見覚えのある所程度には着くと思うけど…)


 木漏れ日も久しいほどおい茂っている森の中で、しかも昼近いだろうとなると日が落ちるような時間にならないと東西南北がわからない。

 だからと言って他の生き物に聞くのはおそらく無理。だって幼竜より弱い動物なら逃げてしまうし、強かったら襲われるだろう。それに東西南北なんて知識があるかさえわからない。

 仕方なく空腹とのどの渇きを癒すため果物を探してみる。もちろん目印に枝や石を使って迷わないように。

ミリャの実とは、大きな木に()る直径約10㎝の丸い実である。

 その丸型の実のど真ん中を上から下に一直線に芯があるため頭頂部と尻が(へこ)んでおり、頭頂部の(へこ)みの底から果梗(かきょう)と呼ばれる細い枝が()えている。この枝は木と実を繋いでいる部分であり、此処を小動物は咥えることで素早く運べるようだ。

 色は上から十分の七が赤く、十分の二が薄緑、十分の一が白いと食べ頃でシャリっとした食感でとても甘い。小さな実は真緑だが大きくなるにつれて上から赤くなっていき、緑は下に行きながら下の方から薄くなっていく。しかし全体が赤くなる頃には内側で本格的に種を作り始めてしまうので甘くないどころか触感までひどくなる。(正確に言うとグッチャグチャで食べれたもんじゃない)


 

ルラキフレサの実とは、小さな木に()る1㎝~2,5㎝程の楕円形の実である。

 少し酸味があるが、さわやかな甘みがある。

 色は様々で赤紫から黒藍の間までの色がある。実が小さい時期やまだ熟していない時期は黄緑色である。

 花弁の名残なのか枝についている所の反対側には5,6枚の小さな三角形の(ひだ)が付いている。種は小さいので実が落ちて植えられるくらい種が成長していなければ、そのまま食べる事が出来る。


アスファレスマニタリとは毒の無いマニタリの総称。反対に毒のあるマニタリの総称はキンディノスマニタリと言う。

 どちらも色と形が様々なのできちんと特徴を覚えていないと危険。


ちなみに作者はネーミングセンス皆無です。人物(?)の名前は頭に浮かんだ物。アイテム(?)類は主にそのままの名前。

ミリャの実→ミリャ(ギリシア語で林檎)

ルラキフレサの実→ルラキ(ギリシア語で藍)フレサ(スペイン語で苺)つまりブルーベリー

アスファレスマニタリ→アスファレス(ギリシア語で安全)マニタリ(ギリシア語で茸)

キンディノスマニタリ→キンディノス(ギリシア語で危険)マニタリ(ギリシア語で茸)

ちなみに

シャンウーヴァ→シャン(中国語で山)ウーヴァ(イタリア語で葡萄)そのまんま山葡萄です



っていうかよく考えたらギリシア語多っ!!あんまり気にしないで名前作ってたのに。次回出るって言ってたアレは長くなりすぎて入りきりませんでした!(土下座)しかも、小説編集でごまかしたし…(汗)

で…でわでわ、第十話お楽しみに~。

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