不穏な朝
ここは・・・。見覚えのある蛍光灯。
ああ、またこの場所に来たのか。クラスメイトの声が聞こえ、笑い声がこだまする。
自分の身体を最大限意識しつつ、目を閉じる。自分に求めていることや加害者としてす
がることがあるのだろう。分かっていた、もう何度も整理したんだ。目を開けると、
「ねぇ、なんかさ。」
裸の女が腰の上にまたがって、制服持って、にへーと笑っていた。
起きた。息を吐いて、瞳孔が開いてるんじゃないかと思った。
それから起き上がる。おねしょもしてないな。全身汗ぐっしょりで、これからどうすれば
いいのか、と考えてしまう。
ふと、自分のほほを伝うものがあることに気づく。涙だった。
また、泣いていく生活かよ。異世界に来てまで、前の世界であった事に悩まされる。
あいつは、俺の反応をおもしろがった。あんなやつの考えが、人々に取り入れられ、逆に
性的暴行を受けたこちらが非難された。それを相談したら大人たちがショック療法として
加害者の事を考えろ、と言ったのは事実で、その後、あの日の事を思い出すだけでなく日
に日に、加害者がいたぶりにくると自分が妄想するようになった。
見たくなかった、そう思えば、きっと見ただろう。
彼女が腰の上に乗っかったまま下腹部を動かし、高らかに笑い声をあげているであろう
ところを。
夢は覚めたんだ。元気な父に、優しい母、笑顔の妹、仮に俺に何かあったら彼らは飛ん
でくるだろう。もう心配はかけないんだ。
まずは、単純な自己暗示だ。あいつはもういない。体を落ち着かせて、ゆっくり呼吸を
整えろ。
自分で生活していける。今は養ってもらっているが、動ける。
生まれ変わったんだ。自分の事を他人の事のように置くこともやってきた。体が行動す
るたびに痛む事もない。
今は別の人間の人生なんだ。
朝、重い気分になりながら、着替えて朝食作りをするとお父さんのところに連絡が来た。
「隣町のシュタラークで大型の魔獣が出たらしい。気をつけるようにとのことです。」
「わかった。警戒を怠らないように。」
シュタラークは東の道沿いにある村のことだ。
お父さんはそう村人に連絡をしておくように、と伝えるとリビングまで来た。
「母さん、まだはっきりと確認したわけではないが大型の魔物が出たらしい。ボアドッグス
らしいから電気網でいいと思うが、気を付けてほしい。」
母さんは、
「わかったわ。カイン、気を付けてね。」
と言った。
俺もうなずいて、気をつける、と返事した。
「ジュリアは家から出ないようにな。」
お父さんが妹のジュリアに注意をしている。
「はい。」
可愛らしく返事をしている。
お父さんは、
「それじゃあ、安全を確認してくるから、ご飯は食べてていいから。アルスは食べたら家の
手伝いで薪割りを忘れずにな。」
必要な指示をして、お父さんは家を出る。
俺は用意した朝食を食べ、お父さんのご飯に布をかける。
「それじゃあ、手伝いをしたら広場に行ってくる。」
お母さんにそう告げると、
「まず、薪割りをして、お昼には教会の啓示よ。」
そう返された。ちぇっ、そう思ったが、
「さっき見たら十分あったよ。少し足しておくくらいでいいよ。あ、東の方には近づかな
いから。」
と俺は説明した。
「それならいいけど。」
母さんはそういうと妹に本を読ませていた。
その様子を見て、俺は裏の小屋に出て、薪を割りに行った。
腰を落として視線を薪に合わせ、打ち下ろす。
トン、と音を立てて薪を割ると、少しすると一山できた。
小さいころからやっているからもう慣れてきた。おかげで、俺の体は多少の筋肉がつい
て体はしまっている。
まぁ、親に筋トレさせられているのはあるが。
阪神淡路大震災の被害に遭われた方に哀悼の意を表します




