一つの疑惑
15歳になり、俺もこの町を離れることになった。
その前に腕試しをしようという話になった。
「いくぞっ。」
父さんの斬撃が八方から迫りくる。俺は、緩やかに切っ先が目線の高さに落ちるのを、
ふっと切っ先を消し、胴を打ち込むと木刀で防がれていたが、それを読んでいて、そのま
ま頭へと木刀を下す。
父さんの頭に当たり、声が上がる。
「それまで。」
「やった。ありがとうございます。」
「参った。これは取られた。」
「門出だから花を持たせてくれたのでしょう。ありがとうございます。」
礼を言うと、
「まあ、子供に全力はだせないが、私も15歳で親から一本取るとは思わなかった。
でも、今のは対応できなかったな。よくやった。」
父さんは、そう褒めてくれた。
「よし、今日は門出を盛大にお祝いしよう。」
その晩は、ごちそうだった。
教会の学びも進み、一応学校も今までにないほど優秀という形で送り出された。
町長の子だしね。あの教会の一件以来、町では聖人のような扱いだ。
いろいろあったが、助け合って暮らしてきたんだな、としみじみもした。
その日はよく眠れた。
朝、部屋にいるとき、マイアが現れた。
「フレイが、自分の自治内で反乱を企てているものがいそうなので、禍が起きるかもとの事
よ。自治内っていうのはこの世界全般。」
彼女はそう告げた。
俺は、
「禍というのは、魔物がたくさん出てくることをいうのか。」
と聞いた。
マイアは、
「その通りです。世界と世界の境から強力な魔物が大群で来ることになります。あなたも、
もうすぐ16歳になりますから教えますが、フレイはこれまで禍が起きるとか暗殺が横行す
るとか理由を付けて神々の援助を断ってきました。
今回、どうも次期女王を討とうとしていて、魔族が人間を奴隷に使うという侵略をおこな
おうとしているので、今、他の世界の神の干渉を許すわけにはいかない、との返答でした。
今まで、何回もやりとりをしていましたからおそらく最終回答です。」
と伝えた。
俺は、
「そんな危機がくるのに手助けを断るのか。王族は子孫、家族なんだろ。それに禍の魔物は
魔族の手先なんじゃないか。」
怒る俺に、女神は、
「そうです。しかし、フレイは自分の欲求と相手を意のままに活かすのが大好きなのです。
国民のほとんどが子孫ですが、王族といえども手駒にしかすぎません。
彼女はそもそも禍を起こしている人物です。今までにもいくつか起こして、人間の争い事
をつくったり、魔族の勢力を拡大させました。その頃は魔族もまだ弱かったのですが。
今までの戦禍を見ても、禍の魔物はフレイの命令により、魔物や人間に関わらず襲うようで
す。町ごと壊滅させられたこともあります。」
と言った。
なにか憤りといったものを覚えるが、俺はどうしていいか分からなかった。今まで信仰は薄
い方だと自覚していたが、この世界を統治している者だと思っていた。
俺は、つい口にしていた。
「なんだってそんな事をやるんだ。自分が統治している世界だろう。生きているエネルギー
とか魔力としてもらっているんじゃないのか。」
マイアは、
「それはまだわかりません。フレイは争いが起きた後、必ずなにか制度を制定したり、組織
を作り直して自分の管理だけでうまいことやってきました。
今回の事が、魔族の管理外の暴走か、偶発的にせよ自分の仕組みのために、自分で書いた
ストーリーで起こさせたか。」
そう話す。
俺は、
「あるいは、魔族の意思統率までやって、初めから仕組んでいたということもある。
動機も愉しいから、という事も可能性としては考えられる。」
口にも出したくなかったが、そんな可能性を言っていた。




