トラウマの再来
夜の中でも、はっきりと響く声、
「だから、親の金でも取ってきなよ。って言ってんじゃん。じゃないと続けちゃうよ。」
元の世界の俺が、吐きながら嫌だと言っている。
俺は恐怖で体は動かなかったが、抑えられた手足をばたつかせる。
女生徒は、
「なら、ぐしゅぐしゅになるまで奉仕してもらおうかな。」
夢なのはわかっている。体が動かないなと考えあの頃を思い出すことにした。
所詮、自己認識だ。翌日には、クラスでこの事は笑い話にされた。
「お前、マジー。」
あんな言葉をかける“友人”に、なにかを取り合ってもらえるなどとは思わない。
思い出せば吐き気もしなくなる。重たい体に動くように意識を向ける。
彼らの意識が消えていき、狭い部室に膝をついている。俺一人になった。
ここは夢の中で、最初に夢で見た時の日は、胸を押さえつけたり、馬乗りになったままラ
ンディングとかして何回かイった様子だった。彼女は満足したようでそのまま帰ったが、
その後、他の取り巻きにもやられた。その次の日からも何回もやられた。
家族にも相談した。「なんで最初に相談しなかった。」とか「監督不行き届だ。本家と
もだめになる。」とか「お前が襲われるのが悪いんだ。」と親に言われたときはそりゃ、
ねえわ。と思った。
まあ、この件があって家族も離れていった、養子だったと事件が起こる前に、その事を
教えてもらって、親とも顔合わせしたばかりだったのに、最悪のタイミングだった。
「うちも、体面があるから。」
訴えはしない方向で親と義親父の話し合いが進み、俺の意見も聞き入れられず、学校を休
むこともできず、彼女達が飽きるまで付き合わされたので、互いの両親が顔合わせをする
頃には、クラスのいじめに発展し、彼らに「やったんだから、金を出せ。」と言われてい
た頃だった。
本家は徳川家で本家筋にあたるらしい。本家は、とりあえず学校に連絡して生徒同士が
顔を合わせないようにした。
彼らは悔しそうな顔をし、でも裏ではあたしらの勝ちだよ、と笑っていた。
両親の態度はよそよそしく、本家にも大学に受かるまではなかったことにしましょう、
と言われた。俺は、病院に通わせてくれてありがとう、と言って頭を下げた。もう疲れて
いてそれくらいの事しか言えなかった。
自殺未遂をその時初めてした。その時、満足したというあの女の声が聞こえた。
そうすると体からこんなの気持ち良くないとか、あいつは最悪だとか、溜まったものが抜
けていく。だがその痛みそれよりも痛かった。
「ああっ。」
家族からも見放された気がした俺は、一人で決めようとなにかを選ぶことを自分のため
に使おうとして、目的を失っている事に気がついた。
こう見えても人の笑顔を見るのが好きだった。人の助けになることが出来ると思ってい
た。普通の幸せが犯罪に巻き込まれただけで、跡形もなく無くなっていた。なにかが出来
ていることが要らないことだ、と突き付けられたが、返事も許されない状態だった。
死ねないのならそれでどうしようか、とぼんやり考えながら、ごめんと謝る家族の言葉
を聞き、なにか壊れている部分があって、それを自分でなんとかしないといけないんだ。
夢の記憶がここで途切れるかと思ったが、まだあった。今度は元の世界にいた時の付き
合っていた彼女を思い出した。あの後、出会ったんだ。
やる気が出ないな。何事もなくできていればいいや。進路もどこか入ればいいや。
そうすべきか考えていた時、チャラ男に声をかけられていた彼女に出会った。
付き合えるなんて思わなかったが、ある日、自分の体験を語った時、
「だから私が気遣われたのは、被害者としてなにもしない状態で過ごせばいいと、次は、
このようにしなければならない事をこのようにしなさいさ。向こうが決めてくれる。」
と話した。すると、彼女から
「今、前を向いて今の私に気遣いを向けてくれるあなたに私は励まされている。だから、
あなたが『犠牲』に気を取られて、与えてくれる人からもその事からも逃げないで。
情けや扶助を生活を送れるように使って、悪い事はないの。こちらから見て気遣いと思
えるようなことをしているのが行き過ぎだからよ。」
と返された。判断をそちらでしてもらっていい。せき立てられるのも嫌だし、そうやって
逃げようとした私に、彼女の言葉はまっすぐに届き、癒された。
あ、この言葉は人生の指針に触れているな。やっぱり、彼女は影響があったんだ。
まさか死んでから気づくなんて、と思ったが、彼女に返せるだけの幸せはあげるようにし
たとは思う。最後は、ケンカ別れしてしまったが、仲直りすればよかったな。
彼女のことを考えると、体を動かそうという気になり、あいつらへの恐怖を抑える事が出
来た。前はどうしてたっけ。初めは、オタクみたいな話を言って糧にでもしてもらったのか
と少しの行動をするところだっけか。
まず、自分の心でしたい事を思い浮かべる。食事をするところだ。
背筋を伸ばして食べたい。口を動かしたつもりになって咀嚼しようとしたら、お腹がいっぱ
いになった。ふと、体は死んでいるんだと気がついた。中学生の頃に行っていた社会の人々
の労働を思い浮かべて、そのおかげで生活できているんだ、家制度だとも考えたが、身体は
動かないままだった、あの日。
幸せと生活と勇気を司っているんだと2ヵ月でわかった孤独、家はなくともそういうふう
にしか生きられないのかと起き上がる今。
あー、虚無感が半端ない。人の考えなんて、喜ばれて、人の役に立ったと結ばなければ動機
が形成されないものだが、誰かを助けるのに自分が動くなら必要かも知れない。




