表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/28

第4話 本の中にあるもの

「実は涼子ちゃん、本を読んでた訳じゃないの。本の中に別のものはさんでて、それが気になって何度も見てたの」

「別のものって、なに?」

「えっと、その………………ラブレター」

 最後の一言は、消えちゃいそうなくらい小さな声になっていた。

「えぇーーーーーっ! ラブ………モガモガ」

「ダメーっ!」

 思わず叫びそうになった私の口を、ユキちゃんがふさぐ。

「まひるちゃん、大声で言わないで」

「ご、ごめん。ビックリして、つい……」

 涼子ちゃんが真っ赤になりながら言う

 ごめんね。けど、本当にびっくりしたんだよ。

「ラブレターって、涼子ちゃんが書いたんだよね。好きな人がいるの?」

「……うん」

「すごーい」

 私なんて、恋愛はマンガの中の出来事みたいな感じだよ。

「相手は誰なの?」

「えっとね……」

 話を聞くと、涼子ちゃんの好きな相手は、ひとつ年上の六年生。涼子ちゃんの家の近所に住んでて、ずっと仲良しだったんだって。

「けど来年には卒業して中学生になるし、そしたら今までみたいには会えなくなるかも。その前に好きって言いたくて、ラブレターを書いたの」

 話をする涼子ちゃんは、パッと明るくなったり、さびしそうになったり、表情がコロコロ変わってた。

 きっとそれだけ好きなんだろうな。

「涼子ちゃんに好きって言われたら、きっとその人もすごく喜ぶよ」

「そうかな?」

 間違いないよ。だって今の涼子ちゃん、とってもかわいいんだもん。

 だけどそこで、ユキちゃんがしょんぼりした声で言う。

「でもそのラブレター、あの本の中にあるんだよね?」

「うん。誰かに見られたら恥ずかしいから、お気に入りの本に挟んで持ってきたんだけど、ちゃんとあるか気になったの」

 それで、授業中も何度も見てたんだ。

「また新しく書くことはできないの?」

「できるよ。でも、本に挟んでるのを坂田先生に見られたらどうしよう」

 そっか。

 せっかく書いたラブレターを別の人に見られたら、きっとすごく恥ずかしい。

 三人で悩んでたけど、二時間目の授業開始のチャイムが鳴って、これ以上相談することができなくなってしまった。

「ごめんね、力になれなくて」

「ううん。心配してくれてありがとう」

 涼子ちゃんはそう言うけど、やっぱりどこか不安そうに見えた。

(坂田先生にラブレターを見られる前に何とかしないと。でも、わけも話さず返してほしいって言ってもダメだよね。そうなると、もうこれしかない?)

 実は、みんなで悩んでいる時、ある方法が思い浮かんだ。

 坂田先生にバレないように、こっそりラブレターを取り返すんだ。

 こんなの、ユキちゃんや涼子ちゃんが聞いたら、きっと無理だって言うよね。

 坂田先生は、没収したものは職員室にある自分の机にしまっているし、しかもその机には鍵がかかってるって聞いたことがある。

 そんなところからこっそり取り返すなんて、そりゃ無理だよね。普通なら。

 だけど私は、普通とはちょっと違う。忍者だ。

 正確には忍者の修行中で、将来忍者になるかもわからないけど。

 なんだかドロボウのマネをするみたいだけど、このまま何もしなかったら、涼子ちゃんがかわいそう。

 お父さんからは忍者ってバレちゃダメって言われてるけど、バレなきゃ忍者の力を使ってもいいよね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ