五、初仕事
初めに手に取ったのは「衆合地獄」と書かれたファイル。涅さんの説明では衆合地獄は「邪淫」の悪行を行ったものが落とされるそうだ。先ほど錦さんも言っていた通り、不貞を犯した者や、パートナーであっても無理矢理の行為なども対象になるらしい。
私が死ぬ要因ともなった世界一嫌いな男は、きっと死後罰を受けるだろうと考えると少し心が軽くなった。……とまあ私の私怨は置いておいてもどんな罰を受けるのかが気になるところだが、衆合地獄は刀で出来た林、刀葉林の上で絶世の美女が誘惑し、美女の元へ行こうとすると刀で切り裂かれるという地獄らしい。刀の林を登ってでも会いにいきたい美女とは一体どれほどのものだろう。
それほどの美女なら私も一度見て見たいななどと思っていたが、ここで一つの疑問が湧いてきた。美女ということは誘惑する側は当然女性なのだろうが、邪淫は何も男性だけがする罪ではないのではないだろうか。
とりあえず疑問に思ったことや気になることはメモに残しておこう。地獄は沢山あるのだから、どんどん見ていかなければならない。なにせ衆合地獄に付随する小地獄だけでも16種類はあるのだから。
「どう〜?順調?」
「あ、衆合地獄は今終わったところです。」
次はどのファイルをチェックしようかと考えていたら、後ろから錦さんが声をかけてきた。
「衆合地獄からやったんだ〜。どれどれ……」
そう言うと、私が気になるところを書き加えたファイルを見ながら錦さんは何やら考え込んでしまった。
「あの……何か問題ありましたか…?」
「いや、これ良いな〜と思って!衆合地獄の誘惑係に男も入れるってやつ!」
「あ、やっぱり衆合地獄は男性向けだったんですね。」
「そうそう。小地獄の脈脈断処は女性向けだけど、女性向けのはそれぐらいしかなかったしいいかも!おーい、涅〜!ちょっと見て〜!」
「そんなに大きな声で叫ばなくても聞こえていますよ。では私も拝見させてもらいますね。」
そして涅さんは錦さんが持っていたファイルを横から除くような形で見ながら、
「うん、確かにいい案だと思います。これなら人を用意するだけで出来ますし。刀葉林も沢山生えていますのでスペースを分ければ問題ないでしょう。」
「その人を用意するのが大変そうではあるけどね。」
「絶世の美女に対抗できる男性を探さないとですもんね。やっぱり今いる誘惑係の方々もすごい美人さんなんですか?」
「もちろんみんな綺麗なお姉さんだよ〜。それに働いてるのも妖狐とかそういうのが得意な人達が多いしね。」
「人選の問題はありますが、一先ず企画書を作って篁さんに提案してみましょうか。茜さんの発案ですので、ご自分でやってみますか?」
「はい…!ぜひやらせて下さい…!」