十二、逸材
色々なことがあった週末もあっという間に過ぎ去り、またいつもの月曜日がやってくる。今日はいよいよ面接の日だ。それとは別に、衆合地獄へ勧誘した長春さんのことも涅さんと錦さんに伝えなければならない。出会いが出会いだけに何となくの後ろめたさを感じながら、詳しい話は濁してたまたま良い人材が見つかったと言う事実だけを2人に報告した。
「では、これでとりあえず2人は決まりましたね。」
「はい。シフトを考えると、最低でもあと2〜3人は欲しいところです。」
「今日の面接で良い子が見つかるといいね〜」
そうこうしているうちに、ついに面接の時間がやってきた。閻魔庁の入り口から改革課の居室まで案内の看板を出し、居室の前には椅子を並べて準備をする。時間が近づくにつれ少しずつ人が集まりだし、最終的には20人あまりの人々が集まることになった。
「――本日はお集まりいただきありがとうございます。只今より面接を始めさせていただきます。呼ばれましたら先頭の方から順にご入室下さい。」
現世では面接を受ける側しか経験したことがなかったので、自分が面接官として人を見るというのは少々緊張してしまう。面接官は私の他に、涅さん、錦さん、そして衆合地獄の代表である紅梅さんにも参加してもらっている。面接は何事もなく順調に進んでいき、いつの間にか最後の1人となった。
「――次の方どうぞ〜」
「……失礼します。」
最後に入って来たのは、身長2mは超えるであろう大きな鬼だった。その姿にどこか見覚えのある気がして、ハッと思い出す。私が篁さんに企画書を提出に行く際、落とした付箋を拾ってくれたあの鬼だった。あそこで会ったという事は既に地獄で働いている獄卒ということなので、部署移動の希望だろうか。
「では、簡単な自己紹介をお願いします。」
「……鈍です。現在は黒縄地獄で主に拷問を担当しています。」
「既に獄卒として働いているようですが、どうして今回はこちらに応募しようと思ったのかしら?」
「元々は内勤希望だったのですが、この見た目から拷問官に採用されまして…。でも暴力とか苦手で……同じ拷問でも誘惑係なら自分の手で直接亡者を痛めつける訳ではないのでいいなと思って……」
紅梅さんの質問に答えた男の理由は見た目からは全く想像が出来ないものだった。こんなに大柄で強そうな男がそんなことを考えていたとは。確かに私が当時の採用担当でも間違いなく拷問担当に抜擢してしまうだろう。
「なるほどねぇ。直接の刺す切る潰すとかは無いにしろ、亡者を刀葉林へ誘い込んで痛みを与える訳だけど、その辺は大丈夫なのかしら?」
「はい……頑張ります……」
見た目に反して気の弱そうなところが心配ではあるが、今回の募集で何よりも大事なのは女性の亡者が誘惑されて刀葉林を登るほどの魅力があるかどうかだ。大柄で筋肉質な身体が好きな女性達は一定数いると思うが、問題はその長い前髪に隠された顔である。
「すみません、1度前髪を上げてもらってもいいですか?」
「あっ、はい。これでいいでしょうか……?」
言われた通りに前髪を上げた鈍は、またしても予想外のギャップで我々を驚かせることとなる。長い前髪を上げて現れたのは、彫刻の様に整った端正な顔であった。
「えっ!待って、めっちゃイケメンじゃん!」
みんなの心の声を代表するかのように、錦さんが1番に口を開く。
「あら〜、確かにこれなら問題なく働けそうね。」
紅梅さんもまさかの逸材を発見して満足げな表情である。一方当の本人は顔を出すことに慣れていないのか、「あの……もういいでしょうか…?」と照れた様子ですぐにまた顔を隠してしまった。
最後の鈍さんの面接が終わり、私たちは早速話し合いに移る。
「最後の子にはびっくりしたわねぇ。まさかあんなに整った顔をしていたなんて。」
「ほんとですよね〜!前髪で隠しちゃうなんて勿体無いな〜」
「では彼は前髪を切って顔を見せるという条件付きで採用、ということでどうでしょうか?」
「それがいいですね。皆さん他に印象に残っている方はいますか?」
「そうねぇ……私は蜘蛛の子なんて色気があって向いてそうだと思ったわ。」
「女郎蜘蛛と人間のハーフと言っていた彼ですね。名前は、ええと……檳榔子さんですね。」




