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 数式と言ったが問題は文章だった。


 問題が書かれたA4サイズくらいの黒板を見せられた。

 この国には黒板があるのか。炭鉱が盛んてことで石灰が出るのだろう。

 問題は次のように書かれていた。

 

「六名の部隊を七日離れた地に送り込む。必要なパンの数は幾つかを算出せよ。パンは一日に三個とする」


 ええと、ロクシチシジュウニの三倍だから126だ。


「126個です」

「おお、早いな。うむ合っとる。では各兵士がそのパンを自分で持つとして一人が持つパンの数は幾つになる?」


 126を六で割ってもいいが、暗算だと間違えそうだったので単純に三食を七日ぶんでサンシチニジュウイチで21だ。


「全員が均等に持てば、ひとり21個持つことになります」

「うむ。その通りだ」


 ルカ氏は今度はゴソゴソとズボンのポケットから懐中時計を取り出した。


「この時計は何時を指している?」

「七時十二分ぐらいでしょうか」

「うむ」


 ルカ氏はモサモサに生えた髭を撫でた。


「ふーむ。では一年は何日だ?」


 え、知らない。前世なら365日だが異世界ってくらいだから違うのだろう。


 いや、待て。

 だったら一日が二十四時間なのもおかしくないか?


「ひょっとして365日ですか?」

「うむ。合っとる」


 えええ? てことはここは地球なの?

 凄いショックなんだけど?

 え、過去? 未来?

 いや、並行世界か?

 へー、、、異世界って地球だったんだ。


 そういや北斗七星あったもんな。

 気づけよ、俺。

 そういや月の柄も一緒だった。

 普通そこでおかしいと気づくだろ。馬鹿じゃないのか?


「、、、オミクロン。おいオミよ。聞いておるのか?」

「あ、いや、すみません。聞いてませんでした」

「まったく、急にボウッとしてなんじゃ。もう一度聞くぞ? イリスの教えとはどんなものだ?」


 ちょっとテストはもう終わりにして考える時間が欲しい。

 この世界が並行世界とするならば、やはり地球と違う物理法則が成り立ったりするのだろうか?

 それが魔法?

 いや、待て。

 並行世界でも天体が違う可能性だってあるんじゃないのか?


「おい、オミクロン。知らぬのだな?」

「あ、いえ。神はエルフではなくヒトを選び、イリスの水を飲めば死後、天の国に招かれ平穏で豊かな暮らしが約束されると」

「なんじゃ、良く知っとるじゃないか。ではイリスに定められた禁忌はなんじゃ?」


 禁忌?

 天動説を唱えた異世界人がイリスに殺されたって話は聞いたが、具体的な教義は教わってない。


「すみません、知りません」

「ふむ、お前はイリス教徒ではないのだな?」

「はい。僕は世間から隔離された小さな漁村で生まれまして。こないだカイエンを通った時にチョロっと、イリス湖にションベンはするなと教わったくらいでして」

「イリス湖に小便?」

「はい」


 ルカ氏は急に下を向いて肩を震わせた。


「イリス湖に小便か、、、確かに禁忌だわな、、、」


 顔を上げてなお、ルカ氏は笑いを堪えていた。

 ツボだったらしい。

 しかし、不敬だから堪えているのだろう。


「よかろう。お主の今後の扱いの参考にさせてもらう」

「なんか、済みません」

「いや、問題ない。 、、、プッ!」


 あ、噴き出した。

 よっぽど不敬だったんだな。

 こういうのは言っちゃダメなことほど面白いもんな。


 ちょっとからかってやろう。


「イリスの禁忌は、、、?」

「ブフッ! やめろ! ワシはイリスの水を飲んだ敬虔な信者なのだ!」

「失礼しました」

「まったく、、、下手すりゃ厳罰だぞ、、、」


 末端価格が100万円の水を飲んだのか。

 金持ちだな。

 確かに、それに俺の小便が入ってたかもなんて言われたらショックだよな、、、


 そう思ったら俺も可笑しくなってきた。


「、、、クッ!」

「ブフッ! フハハハ、、、! やめんか!!」

「ホント済みません!」



 この時から随分と経って、俺の取り調べのこの様子がルカ氏の鉄板の小話になったことを知った。


「あのオミクロンを聴取した時のことじゃ。イリスの禁忌を尋ねたところ、あ奴は真面目な顔をして『イリス湖に小便をすることです』と、こう答えたんじゃ!」


 この小話は鉄板ギャグとして王都にまで伝わったらしいが、そんなことは俺の知る由ではない。


 笑いのレベルが低いぞ。

 恥を知れ。


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― 新着の感想 ―
 ああ、やはり有名人にはなるのか(笑)
いやそのネタで笑えるのは精神的にお若い 全く面白くなかったです 中学生かな? しかしこの唐突に始まったテストは興味深いですね できる仕事の割り振りに利用するのかな?
模範解答はどういうものだったのか気になる
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