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朝の冷え込みがだんだんと厳しくなってきた。
この三ヶ月間ひたすらに座学を詰め込まれてきたが、もうじきテストがあるらしい。
テストが終われば冬季休みが来る。
冬季休みは畑の世話や水路掃除がなくなるので外泊したい者は決められた額の寄付を寮にすると外泊の許可がもらえる。
金取るんかい! と思ったものの、それが寮に残って家畜や我々の馬の世話をする者たちの食費になると言われれば納得である。クリスマスにはケーキなんかも出してあげて欲しい。俺と王子は領事館にお泊まりである。
イリスにクリスマスはないけど、この世界でも冬に何らかのお祭りがあることは珍しくない。国によっては収穫祭だし、あるいは一番寒い時期を乗り越えたことを祝うものだったり、そのたてつけは色々だ。それでもご馳走を食べてお互いの健康を祝い合うことに変わりない。
王都でもそれは同じことで、街を上げてのお祭り騒ぎなのだそうだ。なんとドームの庭が開放され、ゴーレムが管理する畑を見学することができるらしい。
しかも抽選に当たるとドーム内部の見学ツアーに参加できるとのこと。生きたドーム内部を見ることができる唯一の機会ということで国中の金持ちが抽選に参加するのだそうだ。
是非見てみたいものだ。ゴーレムに乗れたり黒狼を撫でたりみたいな触れ合いコーナーがあれば最高なんだけどな。顔出しパネルのあるフォトスポットでもいい。
さておき、先ずは試験に合格せねばならない。ちなみに俺は徽章の柄を覚えるのが苦手だ。胸や帽子に付けるバッジもあれば軍服に縫い付ける肩章もあり、法則性はあるものの部隊を区別するアルファベットや数字を入れるとその種類は無限大である。
さらに軍人だけでなく各地の諸侯が付けるリボン記章もテスト範囲だ。俺がポリオリでもらった準男爵のリボンもここに入る。運転免許の試験みたいな意地悪な引っ掛け問題は出ないと思うが、他にも教科はあるので気が抜けない。
そして今日は自習室を借りてリ行の面々に王子が法科の授業をしている。
「僕らはイリスの教えだけが法だと聞いてたから法科の時にノートの準備をしてなかったんだよ。そしたらあれこれ沢山出てきて、、、」
「それで覚えきれなかったと」
「そうなんだ。済まないがちよっと教えてくれないか。ノートを見せてくれるだけでもいいんだ」
「まあ、構わぬが。では自習室に行くか」
「悪いな」
そういう流れだ。ついでにリ行と同室のクスカの連中も付いてきて、本当の授業みたいだ。
「では先ず概要から。アーメリアの法律は『封建法』『教会法』『口承法』の三つから成り立っている」
「そこがもう分からないんだ。国民全員を縛る法は教会法だけなんだろ?」
「そうだ。しかし教会法には領主が家臣や騎士に果すべき義務や、逆に家臣が領主に対して誓うべき忠誠についての規定がない」
「確かに。でもそれって僕らに関係がないんだよな?」
「直接的にはない。しかし、もし例えば戦場で目覚ましい活躍ぶりを見せて爵位を賜ったりしたら当然そちら側の法に縛られることになる」
「うん、まあそうか。でもありえない話だな」
「ありえなくないぞ」
王子は俺を指差した。
「このオミクロンはな、魔物の来襲から我を身を呈して守り、それで父君に認められ準男爵の地位を与えられたのだ」
「えっ」
リ行たちの視線がこちらに集まった。みんな俺をただの付き人だと思っていたのだろう。悪いな。実は爵位持ちなんだよ。
「親が陞爵したんじゃなくて?」
「そう。こいつ本人がだ。夢のある話だろ?」
リ行たちの目が真剣になった。これでつべこべ言わず法科の勉強に身を入れるだろう。
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