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 林を抜けて西門のエリアに入った。

 延々と広がる葡萄畑の中を歩く。

 ちょうど今は葡萄の収穫期のようで、背中に大きな籠を背負った男女が葡萄を収穫している。

 馬車に積まれた大量の樽に葡萄を入れていっている。

 ちなみに葡萄畑に入る前に教官から指示が入った。葡萄畑内では水袋へ水を足すのを禁止するとの事だった。葡萄を水で濡らした者は罰を与えるとの事。やっぱワインが薄まるからダメなんだろうか。葡萄の収穫は天気との戦いだって漫画に書いてあった。収穫直前に雨が降ったら台無しなのだそうだ。

 てことは葡萄を潰す前に洗ったりもしないのだろうか。流石ヨーロッパ人は不潔だな。

 でも樽に入れた葡萄を踏み潰すのは若い女の子の仕事なんだっけ?

 そこは高く評価する。仲良くなれそうだ。

 葡萄の木は背が低いので見渡しが良い。なので振り返ってみた。だって女の子達を見れば元気が出るじゃないか。すると長い隊列の最後尾に馬車が見えた。脱落者をアレで回収してるのかも知れない。荷台がいっぱいになったら寮に送り届けるのかな。残念なことに女の子は遠くてよく見えなかったよ。

 そして、やはりこの夏の終わりの日差しの中での行軍は中々に厳しくポツポツと脱落者が出始めた。

 数人で脱落してるグループは主人に付き添って従者も脱落してるのだろう。独りで座り込んでいるのは従者か単独で入学した平民だな。

 俺も実際疲れてきた。腰に下げた模造刀が重い。盾も大きくて邪魔くさい。そしてリュックが背中の通気を妨げて暑い。休憩の度に背嚢を下ろし、背中に張り付いた服を剥がして王子と風を送り合った。

 いやまあしかし、背嚢の中身が毛布と僅かな食料だけだからまだマシなのかも知れない。本番だったら数日ぶんの食料でぱんぱんだもんな。

 休憩中に王子と話す。


「オミはどうだ。まだ行けるか?」

「まだ行けますけど、かなりキツイですね。盾と剣が邪魔すぎます」

「だな。我ももう駄目かも知れぬ。歩くだけだと軽く見ていたがこれは中々だな」

「ですよね。ちょっとストレッチとかやっときますか」

「ああ、もう人目は気にしてられぬな」


 俺たちは屈伸をしてアキレス腱を伸ばし、前屈や上体回しなんかをして全身をほぐした。前屈をしたら腰が伸びて気持ちよかった。長く歩くと脚より先に腰にくるのだ。辛くなる前に休憩の度にやっておけば良かったかもな。馬の旅の時は俺が慣れてないせいでよくやっていたのだ。

 見れば他にも身体を動かしている連中が目に入った。まだこれで道のりの半分か。いや、この行軍が王都一周としてだが。二周はマジで無理だぜ。

 日が傾き夕日に炙られて首や後頭部が熱くなってきたところで南門エリアに到達した。

 葡萄畑からは外れ、水路沿いを歩く。水路を流れる水がとても魅力的に映る。今すぐ飛び込んで冷たい水で顔を洗いたい。頭から水を被って全身を冷やしたい。

 そこに教官の馬が通った。


「十分後に四時間の休憩! 水路での水浴びを許可する!」


 歓声をあげて水路に飛び込みそうになったが、なんとか踏みとどまった。十分後か。しかし長い休憩があって良かった。仮眠が取れるし隊列から離れてトイレができる。

 前の方で水路に踏み込む者が見えたので俺たちも荷物を下ろしてブーツを脱ぎ水路に足を入れる。深さは十センチ程度だし水はぬるかったがそれでも構わない。水袋の水を頭から被って水を堪能した。水浴び最高! そして四時間休憩ってことは行軍は王都一周で終わりだという事だ!

 早々に水から上がり、毛布を敷いて寝転んだ。思わず感嘆の声が漏れる。寝るの最高! しかしそのまま寝てしまったりはしない。寝心地を確認したらトイレと飯だ。水路から充分離れるようにお達しが来たので充分に離れた。この辺りは収穫が終わった畑なので穴を掘って致す。次の種蒔きがいつかは知らないが春なのならそれまでに土と混じり合ってこなれてくれるだろう。優秀な肥料だ。


 馬の走る音と起床の掛け声で目を覚ますと月が空に登っていた。月明かりで毛布をしまい、靴下とブーツを履く。腰に剣を下げ、水袋を肩に掛け、背嚢を背負って手に盾を持つ。

 あちこちでうめき声が聞こえる。みんな膝や腰にダメージが来てるのだろう。見れば王子も腰に手を当てうめき声をあげている。


「大丈夫ですか、腰ですか?」

「いや、ふくらはぎだ。笑うなよ? 酷い筋肉痛だ」

「ゆっくり伸ばしましょう」

「いたたた、、、普段からもっと歩いておくべきだったな」

「普通に暮らしてたら三十分以上歩くことはそうそうありませんからね」

「城内を歩き回るのと真っ直ぐ歩き続けるのとではやはり違うな」

「分かります」

「お主は大丈夫そうではないか」

「僕はジロ河口からポリオリまで歩いて来ましたからね」

「そういえばそうだったな」


 月明かりの下、行軍をしながら前後を見る。やはり歩き方がギクシャクしている者が多い。平民よりも貴族がダメージを受けてるように感じる。そうだよな。平民はみんな自分の街から歩いて王都まで来てるんだもんな。

 再開してからの行軍はかなりゆっくりなペースになった。先導する教官が皆のダメージを慮ってるのか、夜道だから慎重になっているのかどちらだろうか。何にせよゆっくりなのはありがたい。

 もう脱落者がでないといいな。


いつもお読みいただきありがとうございます!

書いて出しになっておりとんでもない間違いがあったりしてますが生暖かくご指摘いただければと思います。

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
この行軍、クラスのランク分けに使われるのかもな。 終わってまだ余裕がある連中はそれなり以上に鍛えられていると見るべきだし。
 靴擦れ、が起きそう……。
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