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 イクラの件だが、ジルも俺も腹を壊さなかったため毎日ひと腹かふた腹イクラを漬けることになった。

 村人の中で好き嫌いはある程度出たが概ね好評である。


 食べ方としては、いつもの貝と魚のシチューにぶっかけて食べるのが手っ取り早い。

 村には食器も潤沢にはないのだから仕方ない。


 ゆくゆくはウニなんかも獲れるようになると嬉しいのだが浜では見かけない。岩場の方なら居そうだが、ゴーグルとかがないと捕るのは難しそうだ。


 食べ切らなかったイクラの残りは岩場の方に撒き餌として撒いてみている。効果の程はまだ分からないがゴミとして焼却処分するよりは良いのではないだろうか。


 投網漁の助手の仕事はだんだんと慣れてきて、近頃は途中でへばることはなくなった。

 毎回5〜6投はジルと替わってやらせてもらうのだが、こちらもまあまあキレイに広がるようになってきた。

 陸で網を投げる練習をやらせてもらったのだが10投もすると背中に来る。

 濡れると重さは倍増するのでトレーニングとしては1日に5〜6投で充分なのかもしれない。

 俺の身体はまだ10歳だしな。



 ある日、ボラを捌いている時にジルがこう言ってきた。


「オミよ、この魚の卵も海水で漬ければ美味いんじゃないか?」


 そもそもこの魚がボラなのかどうかが分からないのだが、ボラなのならカラスミの原料ではある。

 ボラというと、俺の貧弱な釣り知識によると臭くて食べれない外道中の外道というイメージだが、フィリピン辺りでは高級魚という話を聞いたような気がするし、ブラジル辺りではボラ祭りなんてのがあるとかないとか。

 目黒のサンマ祭りみたいなもんだろうか?

 アレは落語のネタだっけ?


 考えがまとまらないが、この魚の卵も食えないことはないのだろう。


「わかんないですけど、明日やってみましょう」

「コレじゃダメなのか?」


 ジルは捌きたての卵をぶらぶらさせた。


「内臓は腐るのが早いから引き揚げたその場で捌いて冷たくしとかないとヤバイらしいんですよ」

「ああ、砂に置くのがダメってそういうコトなのか?」

「そうなんです、少しでも腐ると生臭くなって味が落ちるし腹も壊すんで」

「ほう」

「血が一番腐りやすいんで血抜きがその場で出来ると良いんですけど」

「ふむ、その辺はお前に任せるわ」

「はい」


 カラスミの作り方なんて知らないけど多分塩に漬けてぺったんこに押しつぶして干せばいいんだろう。

 イクラも出来たんだから、まあなんとかなるだろう。


 しかしこう見ると血管が結構多く走っていて血抜きは難しそうだ。

 ちょっと乱暴に扱うと皮が破けて中身が流れてしまうのも厄介なところだ。

 サイズもタラコなんかと比べるとずっとデカイので塩漬けが海水で大丈夫なのかどうかも気になる。

 イクラはほぐして漬けるから早いのだがボラの卵はつぶが小さいからできればタラコ状かカラスミのような保存食にしたい。

 

 芋のシチューに削ったカラスミをどっさりかけて食うのを想像したら腹がぐうと鳴った。


 とっとと魚を捌き終えてメシにしよう。

 もうトマトは採れないのでこの時期はかぼちゃのシチューだ。

 これはこれで甘くて旨い。

 俺の腹がもう一度ぐうとなった。

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