31話 護衛
ある日のこと。
巧は学園長室に呼び出された。
巧が、学園長室に入るとそこには、レオード学園長と2人の女性騎士が居た。
「タクミ君、わざわざ呼び出して悪かったね」
とレオードは巧をねぎらった。
「はい。どんな御用でしょう?」
巧は、ちょっと警戒しながら言った。
「ハハハ。そんなに警戒せんでくれたまえ。何もせんよ」
巧は、またレオードに魔法を掛けられるのではと警戒したのだった。
「それで用件だが、ここに居る2人の騎士を君の護衛に付けることが決まった」
「はい?」
「貴殿の護衛となりました、スージーと申します。宜しくお願い致します」
「同じくメイベルよ。宜しくね」
スージーは、金髪のストレートヘアが似合う20歳くらいの美人騎士
メイベルは、青い髪のショートヘアに少し妖艶さを感じさせる、これまた20歳くらいの騎士だった
「こらっ、メイベル。勇者候補者様に失礼ですよ?」
「勇者候補者?!」
巧は、初耳なその言葉に反応した。
するとちょいちょいと肩をレオードに叩かれ、巧は部屋の隅に連れていかれた。
2人に話が聞こえない位置まで来るとレオードがその経緯を話した。
それによると、異世界人である巧を護衛するべきという声が王宮内で大きくなった。
だが、異世界人であることを公表すると色々問題が起きる。
それならば、勇者候補者にしてしまおうということになったらしい。
そして、巧は勇者候補者として王宮の庇護下に入れられることになったとのことだ。
巧が、護衛なんて要りませんよと言うと、
他国や魔王も異世界人を欲しがっている。
それらが本気で誘拐を企てたなら、護衛の居ない一般人の巧などひとたまりもないと説明された。
巧は、この間の泥棒の件のことを思い出し、護衛を受け入れた。
「でも、何で女性なんですか?」
「それは、リオ君が居るからだ。緊急の時、流石にリオ君の部屋に男が入る訳にはいくまい?」
巧は、なるほどと納得した。
「大丈夫。2人とも腕は確かだ。冒険者クラスならBは間違いないぞ」
「ええ?! そんなに強いんですか?」
「ああ、だから心配せんでいい」
そんなこんなで、巧はスージーとメイベルを受け入れた。
巧は、スージーとメイベルを自宅に連れて帰った。
そして、店の扉を開けて家に招き入れる。
護衛をしてもらうのに、家の構造を知ってもらわなくてはならないからだ。
店に入るとスージーが商品を見て興味を引かれたようだった。
メイベルは、何やら奥の生活空間を見たそうにしている。
「勇者候補者様、この商品を見ても宜しいでしょうか?」
とスージーが聞いてきた。
「良いけど、勇者候補者様は止めてくれ。タクミで良いよ」
「ほらね。スージーは堅苦しいんだから」
とメイベルはにやけながら同僚を弄った。
「貴方は礼儀が無さすぎます」
スージーは反論しながらも店の商品を見始めた。
「タクミさん、これは何ですか?」
スージーが聞いたのは、仕舞われて円筒状になったテントだった。
手に持って重さを確かめている。
「それは、テントです」
「へ~、1人用のテントを売っているのですか」
スージーは、羊毛製のテントを運んだことがあるのか、このサイズと重量を1人用だと思ったようだ。
「いえ、それは5~6人用のテントです。それは比較的大型の物なんですよ」
と巧は、少し驚かせたくなって、1人用じゃありません大人数用ですというニュアンスを言葉に含めた。
「えっ?! これが5~6人用ですか? 嘘でしょう?」
巧の狙い通りスージーは、驚きを露わにした。
「では、後で見せましょう」
巧は自信満々に答えた。
それから、各部屋の説明や家の周りの確認などを経て、家の裏にある庭にてテントの設置をすることになった。
巧は、手慣れた手つきでテントを設置していった。
30分くらいでテントを設置し終えた巧は、スージーの方を見た。
そのスージーは、設置されたテントを見て驚きに固まっていた。
「あれが、この大きさになるなんて信じられない」
とスージーは茫然としている。
メイベルも驚いていた。
「これは、羊毛じゃない。それどころか動物の毛ですらない。もしかして、魔物の皮ですか?」
とスージーは質問してきた。
しかし、その素材を言う訳にはいかない。
ナイロン製なんて言った所で何のことか分からないだろうが、この世界には無い素材だ。
素材の名前を言えば、異世界人だとバレる可能性がある。
リスクは取らない方が良いだろう。
「秘密です」
と巧は言った。
スージーは、一瞬残念な顔をしたが直ぐに気を取り直したようだ。
そして、隅々までテントを眺めると、中に入ろうとした。
「タクミさん、これはどうやって入るのですか?」
スージーはジッパーの開け方を知らないため、入れなかったようだ。
巧は、外側の扉のジッパーを開けガルウィングドアのように開けた後、その次のメッシュ状の扉のジッパーを開けた。
「どうぞ」
「このテントは凄すぎます。もしかして、この細かい格子状の扉は、虫よけですか?」
「正解です」
スージーは、機能満載な上軽量なこのテントを見て
「欲しい。是非とも売って下さい」
と言った。
「このテントは銀貨9枚でお売りしますよ。でも騎士がそんなテントなんて使うんですか?」
と巧は聞いた。
スージーが使う機会が無ければ、興味なんて持たないと言い。
メイベルも騎士団の派遣、重要人物の護衛、事件の調査などで遠出することがあり、その時に使うようなことを言った。
スージーは懐をガサゴソ漁り、銀貨9枚を取り出した。
「えっ?! 銀貨9枚即決?!」
今度は巧が驚く番だった。
「こんなの買わないなんて、騎士として失格です」
とまでスージーは言い出した。
巧が、メイベルを見るとメイベルは顔を背けてどこ吹く風の様子だ。
するとスージーが
「メイベルも欲しいと思っているはずですが、お金が無いんですよ」
と教えてくれた。
「ふん。5~6人用なんでしょ? スージーが持っていれば、私も入れるんだからそれで十分よ」
とメイベルは強がっていた。
なんだかんだ言ってこの2人は良いコンビなのかもしれない。
そして、次の日からスージーとメイベルが護衛に付くことになった。




