27話 マジェスタ魔法学園2
リオ、ミルト、リリーの3人は学園の南門で待ち合わせをした。
当然3人とも制服を着て来ていた。
だが、新しい服を準備したとはいえ、これが貴族達のお眼鏡に叶うか分からない。
心配だった3人は、一緒に教室へ行くことにしたのだ。
南門から教室へ歩いて行く3人。
だが、どうも周囲からチラチラ覗き見されているように感じる。
「私達何か変かなぁ?」
とミルトがその視線を感じて不安そうにしていた。
「変というか、この服のせい」
リリーが冷静に核心を付いた言葉を発した。
「なんか目立ってるね私達」
リオの言った言葉が3人の現状を表していた。
3人が教室の扉を開けると、貴族たちが驚いた顔をした。
まさか、1日で服を準備してくるとは思ってもいなかったのだ。
3人は昨日座っていた席に移動した。
噂話をする貴族達。
3人の姿を見た貴族達の反応は2つに分かれていた。
1つは、ミネルバに代表される平民のくせに生意気なという反応である。
そして、もう1つは何あの可愛い服という反応であった。
そこに、シュミットが入ってきた。
シュミットは昨日追い出した3人が居ることに驚いた。
そして、その着ている服を見て驚愕に目を見開いた。
その反応に3人はニンマリして
「これで授業を受けれますよね?」
と言った。
その言葉に我を取り戻したシュミットは問題ないと言った。
その言葉に貴族達もこれ以上のイチャモンを付けれないようで、何の文句も出なかった。
そして、その日の授業が開始された。
その日の授業内容は、魔道具についてだった。
「魔道具は大きく2つに分けられる。一方は魔法陣だ。魔石を砕いてできた魔法粉と塗料を混ぜ合わせた魔法塗料で魔法図形を描き、そこに魔石か魔力を供給すると発動する形式の事だ。例としては、魔除けの祭壇がこれに該当する。
そしてもう一方は、魔法物質だ。これは、魔法物質に付与術を施すと発動する形式となる。例として、魔法剣や試験に登場したランプがこれに該当する。
この学園では、魔法陣は教えていない。というのも、魔法陣はまだ解明されていないことが多く取り扱うには危険が伴いすぎる。それをまだ未熟な学生に教えると取り返しのつかない事件が起きてしまう。それを防止する意味で教えていないのだ。
以上の事に何か質問はあるかね?」
「「「特にありません」」」
生徒たちは返事をした。
「よろしい。それでは魔法物質の説明に入る、誰か魔法物質とされる素材名を言ってくれたまえ」
とシュミットは生徒たちに質問をした。
「はい。魔法物質とされている素材は、魔法金、魔法銀、魔法銅、魔法鉄の4つですわ」
とミネルバが立ち上がり自信満々に回答した。
「宜しい、流石はロリス侯爵嬢だな」
とシュミットは褒めた。
ミネルバはその言葉にドヤ顔だった。
「ミネルバ嬢の回答が一般的には正解とされている。だが、本当はこの他にもう1つ存在する。
それは魔法白金だ。しかし、これは大変希少な品となっているため世の中に出回っていない。
それであるから、一般的には先の4つが正解となる。
因みに、もし誰かに魔法白金があると言われたら真っ先に詐欺を疑うように」
とシュミットは注意を促した。
なるほどと生徒達が頷く。
更にシュミットの説明が続く、
「これらの魔法物質だが、それぞれの素材ごとに付与術の効果が異なる。
この効果度合を付与効果倍率と言う。
そして、この付与効果倍率が一番高いのが魔法銀である」
とそこで生徒から
「先生。だから鎧や武器に魔法銀を用いるのですね?」
という質問があがった。
「その通りだ。魔法銀自体はそれほど硬くはないが、付与術の効果が高いため最高の防具や武器になりうる。
付与術師にとって魔法銀は、最高の素材だということを良く覚えておくように」
とシュミットは説明をした。
その質問した生徒は、
「では、魔法鉄はどうなんでしょう?」
と追加で質問をした。
シュミットは
「魔法鉄だが、実はそれほど付与効果倍率は高くない。しかし、魔法鉄は硬度を高くすることができ純粋な武器防具として優れている。それに魔法銀などに比べると大幅に安いという利点がある」
つまり、魔法鉄は付与術の効果はそれほど高くないが、硬度が高く攻撃力や防御力があり安いということだった。
とそこで授業終わりの鐘が鳴った。
「この授業は、これで終わりだ。あと、後ろの3人は放課後、私の所に来るように」
とシュミットは言い、教室を出て行った。
リオ達3人は、何故呼び出されたのか不安になった。
その後の授業は、付与術の種類などの講義と実地訓練だったが、その事が心配であまり身に入らなかった。
――そして放課後
リオ達3人は教員室に向かった。
そして、教員室の前に到着するとシュミットを呼んでもらった。
少しすると、シュミットが教員室から出てきて3人を相談室という部屋に案内した。
そして、何かの呪文を唱えた。
危害を加えられるのかと疑いの目を向けるリリー。
それを察知したシュミットは、
「心配するな。盗聴されないようにサイレンスの魔法を掛けただけだ」
と言った。
完全に疑いは晴れていないが、一先ず話を聞くことにしたリリー。
「さて、君らを呼び出した理由だが。その服をどこで手に入れたかを教えてもらいたいのだ」
とシュミットは言った。
「どうしてそんなことを聞くんですか?」
とミルトが警戒しながら聞いた。
ミルトとしては、シュミットから無理難題を課せられたことから、また同じような無理難題を言われるのではないかと警戒したのだった。
シュミットはその理由を言って良いか逡巡していたが、
それを言わないと本当の事を話してもらえないと思ったのか、その理由を話し始めた。
その内容は衝撃的であり、聞いた3人は絶句していた。
そして、リオ達3人は、シュミットにこの話は内密に頼むと念を押された。
他人に話しをしたら騎士団に拘束される可能性すらあると警告された。
話が終わったリオ達3人は、無言で帰宅し始めた。
聞いた話が衝撃的過ぎて、誰も話す気にならなかったのだ。
3人が帰った後、シュミットは学園長室に赴いた。
コンコンとドアとノックした。
「レオード学園長、シュミットです」
少しすると
「入りなさい」
という声がした。
シュミットは学園長室の扉を開けて中に入る。
そこには、初老に差し掛かるくらいの中背の男が居た。
その初老の男は、どうもソワソワしている。
「それで、要件はなんだね?」
と学園長が言った。
シュミットはあまりの事の重大さに真剣な顔をして学園長を凝視し、どこから話した物かを考えていた。
その顔を見た学園長は
「まさか、無断で拝借した魔法銀のことがもうバレたのか?」
と思わずかっぱらった魔法銀の事がバレて糾弾しに来たのかと勘違いした。
「あれは学園長の仕業でしたか!」
と怒るシュミット。
「あれ? バレてたんではなかったのか?」
自爆する学園長にシュミットはキツイ目を向ける。
だが、この学園長にきつく言った所でこの行為が無くなることは無いと知っていた。
「その事ではありません。もっと重大な事です」
その真剣な仕草に学園長は真面目な顔になった。
「ふむ。それで重大な事とは?」
シュミットは今日あった出来事を学園長に説明した。
「なんと! それは本当か?!」
「分かりません。が、可能性は高いかと」
学園長は、これから起こるであろう混乱に渋い顔をした。
そして、シュミットは学園長にその人物と会って欲しいと依頼した。
「分かった。その者に会おう。ならばシュミットよ、魔法結界の準備を」
「分かりました」
学園から帰宅したリオは、すぐさま巧の所へ行った。
そして、この制服の事で教師から話しがあると依頼された事を話した。
巧は、何だろうと少し考えたが、商機かもしれないとそれを承諾した。
そして、日程調整後その日は2日後の放課後と決まった。




