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22話 王都パオリ

王都パオリは、東西8キーメルテ、南北9キーメルテの巨大な都市である。

その中心部には白亜の王城がその存在を誇示していた。

そして、王城を中心とした半径3キーメルテには防壁がそびえ立ち、町から隔絶された空間となっていた。

カオンも大きい町ではあったが、流石王都である、その規模はカオンの比ではなかった。

市場も町の至る所にあり、住民の多さを感じさせた。


魔物との闘いで王都に到着した時は、既に日が落ちかけていた。

そのため、巧とリオとシルバーウルフは、馬車隊の隊長ギータに紹介してもらった宿屋に泊まることにした。


――次の日


「護衛ありがとうございました。フィートさん達について来てもらってよかったです」

と巧は感謝の言葉を発した。


「こういう事はあまり無いんだがな」

とフィートとしても想定外の事件が起きたとでも言いたげだった。


「それじゃあ、俺たちは行くな」

シルバーウルフは、巧とリオと別れを告げた。


シルバーウルフの面々は王都の主要通りの方へ消えていった。

ギルドへ行って討伐の報告と褒賞をもらいに行くとのことだ。


「さあ、俺たちはマジェスタ魔法学園に行こう」


「うん」

ついにマジェスタ魔法学園へ行くのだ。

リオは、ワクワクと不安が混ぜこぜになっていた。


巧とリオは、5時間ほど彷徨い、人に道を聞きながらやっとマジェスタ魔法学園へとたどり着いた。

もうお昼も過ぎた頃である。


周りを壁で囲まれた巨大な敷地の中にそれはあった。

敷地の南側にある巨大な門に行き、門番に要件を伝えると門番は受付の場所を教えてくれた。

教えられた道を進むと、1つの大きな洋風の建物が見えてきた。

巧とリオは、その建物の受付を目指した。

受付は建物を入ってすぐの所にあった。


リオは、その受付をしている男性に受験をしたい旨を話した。


その男性は

「貴女が受験をするのですか?」

と聞くのでリオはハイと答える。


「それでは、推薦状を出してもらえますか?」

とその受付の男性は言った。


巧は、懐からニージェスに書いてもらった推薦状を取り出した。


その男性は、それを見て驚いた。

まさか本当に推薦状を持っているとは思っていなかったのだ。

この学園に受験したいと訪問して来る平民の大半が、推薦状のことをここで初めて聞くのが通例だからだ。


驚きから復帰したその男性は、ある1つの可能性を考えて、気を引き締めた。

そう、偽造だ。

このマジェスタ魔法学園は、この国最高の魔法学校である。

入学のための不正が後を絶たない。

近年は、推薦者の魔力刻印が施される推薦状の偽造はあまり見ることがないが、可能性が無い訳ではない。

受付の男性は、心の中で思っていた

(偽造であれば捕まえてやる。さあ、見せてもらうぞ)と。


巧は、その男性が何を考えているか知らぬまま、推薦状を手渡した。


その男性は、あまり見たことのない形式に戸惑いを覚えた。

(なんだこの形式は? 近年では見ない形式だな。推薦者は誰だ?)


「なっ!!!」

受付の男性はその推薦状の推薦者を見て絶句した。


「推薦者:ニージェスだとぉぉぉ?!!!」

受付の男性は、あまりの衝撃に思わず叫んでしまった。


巧は、それを見てニージェスの推薦状ではダメだったかと不安になった。


その叫びを聞いた受付の人達がワラワラと集まってきた。

「「ニージェス?」」

「あのニージェス?」

「懐かしい名前ね」


「馬鹿な! あり得ん!」

その男性は、巧達を睨んだ。


「お前ら、推薦状を偽造するにも程があるぞ? わが校始まって以来の天才、ニージェス様の名前を騙るなど万死に値する!」

と受付の男性は叫んだ。


「「天才???」」

巧とリオはハモッた。


「ニージェス様が、この学園に居ないことを逆手に好き放題しおって、許さんぞ!」

怒りで手の震えが収まらない受付の男性から、推薦状をひったくった女性がそれを眺めた。


「!!」

その女性は推薦状をマジマジと見つめた。

そして、

「この推薦状、本物かもしれないわよ」

と言った。


受付の男性は、何を言われたのか分からない顔でその女性を見た。

そして、次にあり得ない物を見たような顔で巧とリオを見た。


「嘘だろ?」

と受付の男性は、まだ信じていないようだ。


「ほら、この複雑ながら美しい魔力刻印。こんなのを作れるのはニージェス様くらいよ」


そう言われた受付の男性は、その魔力刻印を吟味した。


「確かにこんな複雑な魔力刻印など他に類を見ない」


そして、更に別の女性が過去の魔力刻印を持ち出してきた。


「これがニージェス様の卒業時の魔力刻印よ」


推薦状を確認していた2人は、2つの魔力刻印を比べた。

そして、その2つの刻印は酷似していた。


それが決定打となり、漸く推薦状が本物であることが認められた。


「申し訳ありません。まさかニージェス様の推薦状を持ってくる人が居るとは思わず。

ニージェス様とはどの様なご関係でしょうか?」

受付の女性が、男性の頭を片手で下げさせながら謝罪した。


リオがニージェスとの子弟関係を簡潔に説明した。


受付の女性は、その説明で納得した様子だった。


「それで、あの、ニージェスが天才ってどういうことですか?」

と今度は巧が聞いた。


「はい。ニージェス様は若干9歳でこのマジェスタ魔法学園にご入学され、僅か3年後の12歳で上級を含めた全魔術を極められた天才なのです。これは、わが校始まって以来初のことで、ニージェス様以外で達成した者はおりません」


「えぇっ! ニージェス・師匠ってそんなに凄かったの?」

と巧とリオが言った。


「更にニージェス様は、12歳の卒業時、わが校に古くから伝わる伝説の聖なる装備、聖装せいそうを与えられたマジェスタ魔法学園最高の魔術師なのです!!」

と先ほどの男性が誇らしげに語った。


「聖装……。せいそう?! ま、まさか……」

そう、巧は気付いた、気付いてしまったのだ。


(そ・そういえば、この学園に来てまだ1度もニージェスが着ているような制服を見てないぞ)

ここに居る受付の男性も西洋の使用人のような恰好をしていた。

ここに来て、巧は全て自分の誤解だったことを悟った。

ニージェスが言っていたマジェスタ魔法学園の正装というのは、聖なる装備だったということを。

大人を含めたマジェスタ魔法学園の関係者全員が、あの私立小学生のような制服を着ていると思っていた巧は、マジェスタ魔法学園関係者全員に頭の中で密かに謝罪した。

そして、あの恰好でウロチョロしているニージェスを密かにショタ趣味だと思っていた巧は、そのことを深く謝罪した。


「12歳だったニージェス様が聖装を着た姿は、とても可愛らしく、かつお似合いでした」

と思い出してはウットリする受付の女性。


「そんなに可愛らしかったんですか?」

と現在の姿からはとても想像できない巧が聞いた。


「それはもう。あのほっそりとして如何にも儚げな美少年ぶりと言ったたら……」

とその女性は腕を抱えてもだえるような仕草をした。


「そうだったんですね……」

(卒業後何があったんだ……ニージェス)


「最近お会いになられたのですよね? 現在のお姿は如何でしたか?」


巧はドキリとした。

すぐさま、リオと目で会話した。

リオも夢を壊さない方向にと言っているように思えた。


「はい。とても(世紀末覇者のような)恰好の良い男になっていますよ」

と巧は言った。

リオもうんうん頷いている。


「まあ。お会いしたいわ~」

と受付の女性はウットリしながら言った。


(会ったら違う意味で卒倒しそうだけどな)

と巧は思った。


色々あったが、推薦状の受理と受験票を獲得したリオは満面の笑みを浮かべた。


「付与術師の定員は30名、受験者は貴女を含め51名です。頑張って下さいね」

と受付の女性は言った。


リオはにこやかにハイと言った。


宿屋に帰ってきたリオは、最後の追い込みをすることにしたようだ。

鬼気迫る顔で今までの勉強してきたことを復習している。

師匠が天才だったということが影響しているのかもしれない。



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