↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛮族女王の情夫《ジゴロ》 番外編【金色の愛と銀色の恋】  作者: 枕崎 純之助
第二幕 『銀色の恋』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/74

第27話 『女王と宴』

「クローディア殿。ようこそお越しいただいた」


 共和国の現・大統領はクローディアを最上の賓客《ひんきゃく》としてもてなした。

 ドレスで着飾ったクローディアを歓待《かんたい》し、多くの政府要人たちが同席する宴席《えんせき》の中で彼女を紹介したのだ。

 クローディアは持ち前の美貌《びぼう》と胆力で、この難局を見事に乗り切って見せた。

 その堂々たる振る舞いと巧《たく》みな話術で、大統領の応援演説をするにふさわしい人物として自分を要人たちに印象付け、大統領を大いに満足させたのだった。


「ふぅ。さすがに疲れたわ」


 宴《うたげ》が終わり、用意された豪華な客室に引き上げたクローディアはそう言うと、ソファーに深く腰を沈めた。


「お疲れ様でございました。クローディア」


 アーシュラは小姓《こしょう》たちと共にクローディアのドレスを解《ほど》いていく。

 他の小姓《こしょう》らはお茶の準備で忙しい。

 クローディアは腰を締め付けるコルセットを外してもらって、息をつきながらアーシュラに目を向けた。


「大統領は思い描いていた感じの人物そのままだったわね」

「はい。大統領ご本人は悪い噂《うわさ》は聞かない方ですが、周囲には腹に一物持った人物がチラホラいるようですね」


 クローディアの秘書官として自らも礼服に身をまとい宴《うたげ》に参加したアーシュラは、同席していた政府要人たちを抜け目なく見定めていた。


「まあ心の綺麗《きれい》な者ばかりでは務まらないわ。政《まつりごと》はね。それよりアーシュラ。気付いていた? 宴《うたげ》の間中、ワタシを睨《にら》みつけていた女がいたことに」


 クローディアは宴席《えんせき》ではにこやかに振る舞いながら、同じ部屋の中にいる何人かの女たちのうち1人から時折、棘《とげ》のある視線を向けられていたことを感じ取っていた。

 それは華美なドレスに身を包んだ栗色の髪の女であり、かなり目立っていたが、それ以上に目立つクローディアに対して険のある顔を向けていたのだ。

 そのことはもちろんアーシュラも気付いていた。


「はい。あれは確かマージョリー・スノウ。父親は国内最大手の商団であるスノウ財閥《ざいばつ》を束《たば》ねる男であり、大統領支援派の中でも最も影響力の高い人物です」

「なるほど。その箱入りのお嬢様が出席していたってわけね。で、ワタシが彼女に睨《にら》まれる理由は何かしらね? 蛮族《ばんぞく》の女王だから見下されているのかしら。それとも単に田舎《いなか》者のくせにワタシが目立っていたから気に入らなかったのかも」


 そう言うクローディアだが、その声や表情に自嘲《じちょう》の色は微塵《みじん》もない。

 むしろこの状況を面白がっているようだ。

 そんな主の内心を敏感《びんかん》に感じ取っているアーシュラは、クローディアのお茶を淹《い》れながら嘆息《たんそく》する。


「クローディア。鬱憤《うっぷん》晴らしにあの女を張り倒すのはおやめ下さいね。お願いですから」

「そんなつまらないことしないわよ」


 そう言うクローディアの前のテーブルにお茶を差し出してアーシュラは言った。


「調べておきますよ。マージョリーの周辺を。クローディアに余計な火の粉が降りかかるのは困りますから。それに……せっかくこうしてここまでやってきたのですから、この機会に共和国のことを出来るだけ知っておかなければ」


 そう言うアーシュラを今度はクローディアが窘《たしな》める。


「アーシュラあなた……血が騒いでない?」


 元々、暗殺などの隠密《おんみつ》任務や調査など密偵《みってい》としての仕事をクローディアの下で数多く手掛けてきたアーシュラだ。

 未知の土地である共和国にやってきて血が騒がないはずがない。

 クローディアの問いにアーシュラはニヤリとして答えた。


「ええ。騒いでおりますよ。知らないことを知りたいと思うのは人の性《さが》ですから。ただ、ワタシもあなたの秘書官として弁《わきまえ》えておりますので、心配は御無用です」

「本当かしら……気付いたらあのマージョリーとかいう女が闇《やみ》に葬《ほうむ》られていた、なんてことにならないことを祈《いの》るわ」


 半信半疑でそう言うと、クローディアは淹《い》れたての茶を飲んでひと息つくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。