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弥縫の煙  作者: ゴン
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小説の投稿ペースは気まぐれです。

弥縫の煙


                       〜縫〜


              〜序章・信じられないピアノ〜

 一人の生徒が死んだ。

 「いつぶりだろうか、夜回りなんて。一ヶ月前に一人の女子生徒が死んでからというもの、皆、やはり放課後の夜回りはあまり行きたがらない。それに、この学校はもう随分古いだろう。歴史あるものはさらに恐ろしく思えるな。」

 山口勝(やまぐちまさる)。彼は「カラッコロ」と靴の音を綺麗に響かせ歩く。

 「んっ?」二階の広い手洗い場を歩いていたら、四階・西音楽室だろうか、ピアノの音が聞こえるではないか。「まだ誰かいるのか、こんな時間に。」まったく、と思い音楽室に向かう。

 それにしても、心地よい音色だ。と思いながらもそこへ向かう。だがどうしてこの時間にピアノを弾くのか、と疑問に思い始めた。

 ガラガラッと扉を開け、「おい、いけないですよ。こんな時間に。」そう言いピアノをよく見ると、「晴人?」おいおい、と驚いた。それは俺の持つ生徒である。

 晴人がすっとこちらに顔を向ける。「早く帰りなさい、先生も一緒に玄関まで行ってやるから。」すると晴人はこちらに無言で近づいて来た。忘れ物はないかと聞こうとした、その時、晴人は俺の横を通り三階へ行く階段に猛ダッシュで行き、俺から逃げようとしたかのように走り去っていく。「おい、待て。」晴人は自分の教室へ向かった。

 「……」晴人の向かった教室にたどり着くと、彼は一人の机のそばで泣いていた。

 翌日転落死と見られる晴人の死亡が確認された。


                〜一章・忘れ物〜


 「あ…、学校に忘れて来ちゃった。」もう日が沈んだ頃。私は大事なものを忘れてしまった。「早く取って帰らなければ。」

 階段を登り、私の教室は三階にある。「ちょっと…」

 瀬戸桜。彼女は学校に行くに見合わない透き通ったワンピースで教室の扉を開けようと。

 「何してるの、そんな窓側で危ないわよ。」一人の少年が窓の縁に腰かけて外を眺めている。すると少年は立ち上がり、すっと頭から外へ落ちた。「なに、待って。」大声で叫んだ。


               〜二章・忘物〜


 「あ、まだ帰れない。もう一度戻ろう。」学校から立ち去ろうとする私に忘れ物が肩を叩いた。

 橋場友香里。彼女は学校へ戻る。

 「どうしたと言うの。」帰ったのはそう5時頃、まだ日が沈んでいなかったのに学校の階段を上がり、三階へ着いたその時には窓からは光は無く、とても暗い。教室に入ろうとした時、一人の少女が少し遠くの廊下に居た。「何よ、こんな暗い廊下を一人で、」綺麗なお洋服をヒラヒラとさせて一点を見つめる少女を一点に見つめ私は彼女に近づいた。一緒に帰りましょうと言えるか不安だったが、そう言うしかないように、まだ果てしなく遠くにいるように見えるのに、一緒に帰らないといけないと思っていた。

 「あなた。何組なの?」そう小さく語りかけ肩を触ろうとしたその時、綺麗な長い黒髪で見えなかった横顔を、首をぎろりとし、懐かしい目でこちらを見つめた。すると

 ………「私を」

 驚いて「いやっ」彼女は黒い黒い墨を撒き散らしたかように消え去った。だが、そこには古臭いボロボロの紙切れが、「手紙?それとも日記?」そこには『…呪われたの、…もう死に…』紙が焦げたように黒くてほとんど読めなかった。「呪われたってどういうことよ。」そんなの当然わからないことなのだが、たぶん彼女の書いたものだと思い、心配し始めてしまった。

 「彼女を見つけないと」そう思い、彼女の向いていた方向に向かう。

 薄暗い廊下を歩けば聞こえてくるのはメラメラと燃える音と、記憶の細道にある音色と声だけでした。

 そしてその廊下に光って見えているものは決して燃えない紙であった。「煙くさいわ。」手紙であろう紙には『届けて、そして私も待つわ。』燃えていた手紙からは突然、煙も消え、手紙の焦げから一文字の漢字が浮かんでいた。「楽」と。「楽?」。

 膝を伸ばしたその瞬間。誰かが耳元で囁いた。「返して」声を発した時の温かな息を感じた。「誰?」突然のことながら誰と声が出た。「わかったわ。返しに行くから待っててね。」そう答えた。気づくと足元には鍵が落ちていたのです。保管室と書かれた鍵である。「保管室?入ったことがないわね。」そう言い私は向かう。

 「ここね…何があるっていうの。」中には、歴史的なものが並べられており、そこ土偶などから視線を感じるほどの貴重品であった。中のものに気を取られていると、私の後ろにあった、能面をつけ、綺麗なお洋服を来たマネキンが持っていた檜扇(ひおうぎ)を落とした。落ちた檜扇にくっついていたように、もう数百年前であろうかボロボロの紙が出てきた。触れようとした時、知らない白黒の記憶が頭を過った。

 「お鎮まりください。どうか、どうか、……」「私の…私を。…かえして」

 「あぁ、何よ、これ、私の知ってるものじゃない…」除霊師だろうか、十二単を着た女を鎮めようとしている場面が見えたのである。そして、私は、後ろの、気配に、気づいた。

 「その檜扇を持ちなさい」と着物を着た大正時代を漂わせる女がこちらへ喋りかけて来た。「きゃ。あなた?」と驚くと、彼女は続けて「その檜扇は、かつての霊を鎮めるための除霊師が使っていたものよ。そう昔この学校がある前に、ここの地域では、呪われたと言われる誰かが、もう人間様が呪われないようにと生死をかけた舞をし続けるという文化があったそうな。その檜扇を使って舞い続けたの。想いは力に変えたかったとね。」そういうと女は、姿を消した。「檜扇…」突然のことながらも、どうして私が檜扇を持たなければと不思議に疑問に思った。だが彼女の声は私の頭の千里に残った。そしてまたもやその声は、私に「理科室」といい、消え去った。


                〜三章・歪み〜


 理科室前の廊下を歩く。久しぶりだった。ここで友達とお喋りしながら理科室に入った記憶。ふわふわとした気持ちに、廊下の薄暗さなんか気にならなかった。

 「……ぅなん、だぁよね…」「う、ふぅふふ」二人の高い声とその姿が目に映る。だが、完全には思い出せない。それは終戦後のラジオのような声質。

 理科室に着いてドアを開けようとしたが、鍵がかかっている。「職員室にあるのかしら。」ちらっと、ドアのガラスから中を覗くと、あの時の少女が居た。「あなたっ」やはり懐かしい。中から鍵を閉めたの?そう思ったが、理科準備室から理科室が繋がっているため、その鍵を見つけに行った。

 そう、思い、廊下の方に体の向きを変えた瞬間。おかっぱの成人女性が立っていた。私は怖くなり逃げようとしたが、廊下は女の立っている方にしか進むことができない。女が向かってくる。「どうして、どうして。かぁえして。」と。「いや…」どうしようと思った時、女は憎らしさを声に出したかのように叫び私のところへ飛びかかって来た。

 檜扇が動いた。檜扇を盾に前に構えた。その檜扇に女が飛びついた瞬間。「ああぁあ!!ぁ…」顔を押さえて痛そうに倒れ込んだ。「檜扇…」檜扇にいろいろな漢字が書かれていることがわかった。そこには「楽」とも書いており、手紙にも書かれてあった漢字だ。「今、手紙を彼女に、」突然また着物を着た女の声が聞こえた。「彼女に…」檜扇に書かれている「楽」という漢字からは、線香が燃えたように燃え、煙が出ている。私は彼女が起き上がる前に近づき、彼女に、「あなたのなの…?ごめんなさい。」そう言い、そっと手紙を置いた。すると彼女からは煙が上がり、頭から静かに燃えていった。そうすると檜扇の「楽」という漢字も元に戻り、彼女は手紙と共に煙になった。そこには日記であろうものが落ちている。

 『いつまでも待っていた。けれど、来ることはなかった。でも来てくれるはずの次の日には、あの人は幸せになった、なれた。あぁ、ワタシだけ、ワタシだけ、いつまでもここで待ってやる。愛すより許すほうが難しいと気づかせたあなたへ。そして生まれつきのものは道を決めると断言したような顔をしたあなたへ、幼くもずっと待ってるから。』

 私はその日記を読んだ瞬間、なんて酷いことを彼女にしたのだろう。と除霊の恐ろしさと儚さを感じた。「ごめんね、ごめんなさい。」次は幸せであってくれることを願った。そして悟った。「早く見つけないと…」

 


長い期間をあてて投稿していく予定です。物語自体は短くはなく長すぎずという感じです。

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