敗走
自分とイチノハはワープストーンで緑ノ国に戻る。
自分はイチノハに声をかける。
「買うって即決してたけど良いのか?すごく高かったぞ。」
「ええ、神の国が本当にあるなら有意義な情報よ。」
「神の国が無かったら?」
「ファンタジーとして楽しんで読むわ。」
イチノハは本当に本が好きなのだろう。
高いお金を払って有意義な情報が無かったら落ち込みそうなものだが。
自分はイチノハに声をかける。
「結局、禁書はみつからなかったな。」
「そうね。でもこの本に書いてある神の国の記述は禁書に通ずる部分があるわ。」
「そうなのか?」
「神の国が存在するかどうかは時々話題になるわ。行ったことがあるという人がいたり、無いと言い張る人もいるわ。」
「イチノハはどっち派なんだ。」
「実際に見たわけじゃないからなんとも言えないわ。」
そのような会話をしたのち、自分の家に帰り就寝する。
次の日、トークストーンでイチノハから連絡がくる。
「キッドくん、今日は緑の国の中心部フォルレット市に向かうわよ。私の家からワープストーンで移動するから、家に来れるかしら?」
「30分もあればいけるぞ。準備したらいくね。」
イチノハの家へ向かう。
イチノハの家に到着し、インターホンを鳴らす。
イチノハが出てきて口をひらく。
「来たわね、じゃあフォルレット市に向かうわよ。」
ワープストーンでフォルレット市へ向かう。
フォルレット市に到着する。
風景はアメリカの緑豊かな地域というイメージだ。
一軒家が多く、背の高い建物は魔法軍のお城が目立つくらいでそれほど多く無さそうだ。
イチノハが声をかけてくる。
「今回は魔法軍本部からのミッションよ。集合場所は魔法軍本部。移動するわよ。」
集合場所に到着する。
そこには戦闘部隊が40名ほど集まっていた。
医療部隊は8名だ。
戦闘部隊の隊長からミッションの概要が説明される。
「今回は領土拡大を目的としたミッションだ。非統治下のリザードマンの土地の制圧が目的だ。」
毎回だが、医療部隊は傷ついた戦闘部隊の治療が目的だ。
今回、医療部隊に知っている人はイチノハとアリムがいる。
そして今回のミッションでは移動に鳥を使うらしい。
イチノハに話しかける。
「鳥って俺でも操作出来るの?」
「会話が通じるから話しかけるだけで大丈夫よ。」
「ずいぶん頭の良い鳥だな。」
そして、移動するために鳥の元に向かう。
とても大きい。
人が二人に乗れるサイズの鳥だ。
イチノハが口をひらく。
「この鳥はビッグバード。ビッグバードにも色々種類があるみたいだけど、この鳥は人を運べる子ね。」
「こう見ると俺たちが食われそうなサイズだな。」
イチノハと一緒にビッグバードに乗る。
イチノハが鳥に話しかける。
「南西へ、みんなについていって。キッド、バーをちゃんと掴んでて。」
するとビッグバードが飛び立つ。
人が乗る用に掴むバーがある。
これを掴んでいないと転げ落ちそうな勢いだ。
空に飛び立つと風が心地よい。
あっという間に街が小さくなる。
空からの景色は絶景だが、手を話すとすぐに空中に投げ出されそうな恐怖感もある。
しばらく空を飛び、目的地に到着する。
ビッグバードを安全な場所に待機させ、戦場へ向かう。
医療部隊の配置が完了する。
自分はイチノハに声をかける。
「いやー、初めて鳥に乗って空を飛んだよ。怖いけど、気持ちいいもんだな。」
「落ちなくてよかったわね。たまに落ちる人いるのよ。」
「まじか、それって死ぬじゃん。」
「ビッグバードが空中で拾ってくれるから大丈夫よ。」
そして、料理の準備をしているアリムに声をかける。
「やあ、今日は何を作るんだい?」
「今日は茄子の煮浸しにしようかと思います。」
「前も茄子使ってなかったか?」
「茄子は美味しいのです。後はサラダも作りたいですね。」
まだ怪我人が運びこまれていないうちに雑談を楽しむ。
戦場はどうかと言うと、始まったばかりなので激しいぶつかり合いは見られない。
リザードマンが何か叫んでいるようだ。
「これ以上我々の土地に侵入すればただでは済まないぞ!」
威嚇しているようだ。
戦争はあまり好きではない。
べつに領土を拡大しなくてもよいのではないかと思う。
イチノハに声をかける。
「なあ、どちらかと言うと今回はこっちが敵役だよな。相手の土地奪うのが目的だし。」
「そうね、でも偉い人が決めた事だもの。仕方ないわ。」
「偉い人に命令されたら何でも受け入れるのか?」
「何でもじゃないわ。ただ、従った方が賢い選択かもね。」
「これによってリザードマンの土地を奪ったり、致命傷与えたら命も奪う事になるんだろ?なんか俺は気に食わないな。」
「優しいのね。でもここは戦場。ひとまず自分の身を守ることを考えたらいいわ。」
発砲音が聞こえる。
こちらの軍が攻め始めたようだ。
イチノハに話しかける。
「リザードマンって強いのか?」
「身体能力は人間より上ね。素早さが武器よ。」
「でも魔法使える分こっちの方が有利だよな?」
「計画を立てて軍の編成を考えてるもの。負ける想定をして戦場に出ることはないわ。」
早速怪我人が運び込まれてくる。
「腕に矢が刺さった!処置してくれ!」
イチノハが処置に向かう。
アリムに声をかけられる。
「料理できたから前みたいに戦闘部隊に持っていってくれる?」
「わかった。今度は怪我しないように戻ってくるよ。」
戦場へ料理を持って行く。
今回は遠距離戦の最中だ。
飛んでくる矢に注意して進む。
その時だった。
茄子の煮浸しに矢が入る。
汁が飛び散る。
「あちっ!あぶね!」
怖くなった自分は、戦闘部隊の後方に料理を置いて立ち去る。
後は好きに食ってくれ。
今回は無事に医療部隊の待機場所まで戻る事ができた。
医療部隊には1人だが、重傷者が運び込まれている。
戦況は拮抗しているというところだろうか。
アリムに話しかける。
「戦場は相変わらず危なっかしいな。茄子の煮浸しに矢が入ったよ。」
「それは素敵な飾り付けね。無事に戻ってこれてよかったわね。」
「今度は何を作ってるんだ?」
「そろそろ怪我人が増えて来そうだから薬草の雑炊よ。」
相変わらず調味料は目分量で入れているようだ。
アリムに話しかける。
「醤油が多くないか?」
「そうかな?」
アリムは味見をする。
「薬草が強いからもう少し足すわ。」
不安なくらい醤油が入る。
「悪い、ちょっと味見してみていいか?」
「いいよ。」
思ったほど醤油の味が濃くない。
目分量で醤油を入れていて不安だったが、案外大丈夫なものだ。
味見してアリムに話しかける。
「思ったより醤油の味、濃くないな。」
「でしょ?料理なんて目分量でなんとかなるよ。…時々失敗するけど。」
「失敗はするんだな。」
「食べられれば大丈夫大丈夫。どうせ魔法込めるんだし。」
そうしているうちに軽傷者が数日やってくる。
アリムが声をかける。
「これ食べて。それくらいの傷なら食べただけでなおるよ。」
軽傷者が薬草の雑炊を食べる。
みるみるうちに傷が治ってゆく。
何回みても便利な能力だ。
戦闘部隊が慌ただしくなる。
「おい、第1部隊はどうした!」
「隊長が孤立した!援護するには敵の数が多すぎる!」
「後衛も前線にでろ!」
「遠距離から近距離へ!」
「リザードマンに翻弄されるな!」
これは医療部隊も忙しくなりそうだ。
リザードマンもなかなかやるようだ。
リザードマンも陣形を組んで戦闘しているらしい。
怒号が飛ぶ。
「銃なんか持つな!剣だ剣!」
緊迫した状況が続く。
重傷者が運び込まれてくる。
それは2メートルを超える大男だ。220センチはあるだろうか。口には黒いマスクをしていて、鍛え上げられた肉体のようだ。
イチノハが治療にあたる。
「右足の複雑骨折。肋骨も折れてる。肺に骨が刺さってないか確認して。私は足に回復魔法をかけるわ。」
ここまで大きな人は初めて見た。
おまけに瀕死の状態で。
どう考えても人と戦っても負けなさそうな体格だが、それでもやられる世界だ。
戦争はやはり恐ろしい。
大男が口をひらく。
「主が現れた。こちらの軍がどれだけ耐えられるか。」
戦況は良くないようだ。
大男の治療が終わる。
大男がイチノハに話しかける。
「私がまた傷ついたら君に治療してほしい。ゆえに私は戦い続けよう。私の名前はエフ。いずれは君を守る刃になろう。」
大男、エフはそう言い残し戦場へ向かう。
自分はイチノハに話しかける。
「なんか臭いセリフ吐いて出てったぞ。気に入られたか?」
「治療する事が責務だからね。治療はするけども、守られるほどじゃないわ。」
リザードマンが声をあげる。
「我はリザードマンの戦士ベルム!ここからは私が相手だ!」
リザードマンの群れが一気に引いていく。
前線にはリザードマンの戦士ベルムのみがいる。
こちらは30人はいるだろうか。
先ほどの大男、エフはこいつの事を言っていたのだろうか。
こちらの軍は怯まずベルムに向かっていく。
しかし、振りかざした剣は空を割き、ベルムには一太刀も当たらない。
的確に回避されているようだ。
こちらは魔法攻撃も仕掛ける。
しかし、ベルムに振り払われる。
一目見ただけでわかる強さだ。
ベルムのスピードもそうだが、攻撃力も半端ではない。
2~3人が正面から戦闘をしかけるが、ベルムの槍の薙ぎ払いで全員が宙に舞う。
戦況が一気にリザードマン優勢へと変わる。
そうしている間にも医療部隊には怪我人が運びこまれてくる。
医療部隊は8人。
それ以上の怪我人が運びこまれ、あっという間に忙しくなる。
自分はポーション及びハイポーションを片手に走り回る。
アリムも料理作りをやめ、治療に走る。
イチノハは重傷者の手当てを行っている。
リザードマンの群れも攻めてくる。
完全にリザードマンに戦場を制圧された。
戦闘部隊が叫ぶ。
「あの化物をなんとかしろ!」
その時だった。
ベルムにエフが立ち向かう。
ベルムが口をひらく。
「お前はさっき吹き飛ばしただろう。」
エフが返事をする。
「守る者ができた。今度は負けない。」
エフはベルムに向かってミドルキックを放つ。
ベルムはそれを槍で受け止める。
ベルムが槍を横に振り、反撃する。
エフはジャンプで攻撃をかわす。
ベルムが追撃を行う。
エフは防御の体勢をとり、攻撃を受けきる。
攻撃を受けた反動で周りに衝撃波が発生する。
その後も一進一退の攻防が続く。
そして、リザードマンの群れも攻めてくる。
こちらは戦闘部隊が不足しており防戦が精一杯だ。
自分は嘆く。
「おいおい、こりゃー医療部隊もリザードマンに殺られちまうぞ。」
イチノハが口をひらく。
「治療に専念して。泣き言はその後。」
ベルムとエフはまだ戦っている。
お互いに距離をとりつつ、チャンスを伺っている。
ベルムが口をひらく。
「てっきりデカイだけの雑魚かと思って侮った。身体能力は高いようだな。」
エフが口をひらく。
「お互い様だ。」
ベルムとエフの戦いも気になるが、リザードマンの群れが押し寄せて医療部隊の馬車もついに攻撃される。
イチノハが馬車の外に出る。
自分は思わずイチノハに声をかける。
「おい!外は危ないぞ!」
するとイチノハが魔法で、医療部隊の馬車を囲むように樹木が生えてくる。
一部のリザードマンは生えてくる樹木に巻き取られ身動きがとれなくなる。
防御壁の完成だ。
イチノハの心配をする必要は無かったようだ。
イチノハが声をかけてくる。
「私がリザードマンの群れを食い止めるからその間に治療を続けて。」
「わかった。みんなに声をかけるよ。」
医療部隊は体勢を立て直す。
そんな中、ベルムとエフの戦いに動きが表れる。
ベルムの槍がエフの胴体を貫通している。
ベルムが口をひらく。
「我こそがリザードマンの戦士ベルム。一度打ち破った相手など恐れるに足らぬ。」
エフは何とか意識が有るようだ。
イチノハに声をかける。
「おい!あの大男、エフの胴体に槍が貫通してるぞ!」
「今は防御魔法で精一杯。助けに行くのは無理よ。」
そんなところに緑と茶色が混ざった髪色でトップにボリュームがあり、髪を横に流すダンディーなヘアースタイルの男性が声をかけてくる。
「私は緑ノ国魔法・騎士軍4番隊主翼のセンダン。みんなを逃がしにきた。医療部隊のメンツでよく持ちこたえた。」
そう言うとセンダンは戦場へ向かう。
センダンはイチノハに声をかける。
「防御魔法を解いていいぞ。治療に専念しなさい。」
するとセンダンはリザードマンの群れに向かい土の魔法を放つ。
広範囲に土石流の勢いで泥がリザードマンの群れを襲う。
あっという間にリザードマンの群れを拘束した。
ベルムが口をひらきながらセンダンに襲いかかる。
「誰が来ようと我を止められるもの無し!」
センダンが目で威嚇する。
ベルムの動きが止まる。
センダンが口をひらく。
「君がリザードマンの主か、だいぶ傷ついてるじゃないか。私の目的はみんなを逃がすこと。これ以上の侵略はしない。」
ベルムが力なく倒れこむ。
センダンが医療部隊に向かって口をひらく。
「人数が多くて大変だと思うが治療をしてほしい。完了したら皆で撤退しよう。」
そこから医療部隊の治療が始まる。
イチノハはエフの治療に向かう。
そんなイチノハに声をかける。
「なんだ、エフが気になるのか?」
「違うわよ。症状の重い順よ。」
確かにエフは無数の傷に加え槍が胴体を貫いている。放って置けば命は無いだろう。
そして医療部隊の治療が一段落する。
そんななか自分はリザードマンの戦士、ベルムにハイポーションを持っていく。
ベルムが声をかけてくる。
「我はお前たちの敵ぞ。情けをかけにきたか。」
自分はベルムの傷にハイポーションをかけながら話しかける。
「侵略しようとしたのは悪かった。戦いが終われば敵も味方もないと思ってるよ。」
ベルムはおとなしく治療を受け入れる。
自分は口をひらく。
「みんな!忙しいのに悪いんだけど、リザードマンも治療してくれ!そしてそれぞれの国へ帰ろう!」
医療部隊はポカンとするもの、頷くものなど反応は様々だった。
しかし、みんなはリザードマンの治療に協力してくれた。
リザードマンのベルムが話しかけてくる。
「お前はたちが侵略してきたのは許しがたい。しかし、この恩は覚えておこう。」
緑ノ国の部隊は死者0名で撤退。リザードマンも死者0体でこの戦闘は幕を閉じた。




