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大事な物

モンスターの群れに戦闘部隊がおされているようだ。


そこでアリムに声をかけられる。


「キッド君、戦場にこの料理持って行ける?」


麻婆茄子のようだ。


鍋一杯に入っている。


自分はアリムに声をかける。


「これを戦場に持って行ってどうしたら。負傷者に食べさせろと?」


「健常者でいいの。食べてもらえば分かるわ。あ、後スプーンたくさん持って行って。」


自分は言われた通りに戦場に麻婆茄子の入った鍋を持っていく。


地吹雪がなる戦場を鍋を持って駆け抜ける。


これだけ見るとかなり滑稽な光景だ。


そして、戦場のそれなりの場所にたどり着き戦闘部隊の人たちに声をかける。


「麻婆茄子です!これを食べて下さい!」


自分は何をやっているのだろうか。


戦場で戦っている人に向かって料理を勧めるなんて。


戦闘部隊の人たちが集まってくる。


そして麻婆茄子を口にする。


すると、戦闘部隊の人の腕に赤いスジのようなものが纏わり付いている。


これも何かの魔法だろうか。


戦闘部隊の人が口をひらく。


「うおおお!力が湧いてくる!」


するとその人は凄い力でモンスターを吹き飛ばしてゆく。


どうやらこの料理を食べると攻撃力にバフが掛かるようだ。


アリムの料理恐るべし。


それから、アリムの料理を食べた戦闘部隊は攻撃力が増し、モンスターの群れをどんどん倒してゆく。


自分は医療部隊の馬車に戻ろうとする。


戻る途中にボロボロになったアタッシュケースを見つけた。


アタッシュケースを開けてみる。


中には衣服とロボットのおもちゃ。そして手紙が入っている。


手紙の宛名を見てみるとアダムへ。と書かれている。


アダム。聞き覚えがある。


そこで思い出す。


小児病棟に居た男の子の名前だ。


これは届けなければならない。


すると後ろから狼のモンスターがやって来る。


とっさにアタッシュケースを抱え込む。


モンスターに背中を攻撃される。


背中に激痛が走る。


自分はモンスターを振り払い、医療部隊の馬車へ向かう。


もう少し、もう少しだ。


アタッシュケースを抱え、必死に走る。


背中が猛烈に熱い。


なんとかたどり着く。


そこにはイチノハが居た。


イチノハが自分の背中を見て口をひらく。


「え?ちょっと!酷い傷!すぐに治療するからこっちきて!」


背中の傷はかなり深いようだ。


イチノハが他の医療部隊に声をかける。


「回復魔法は私がかけてるから、縫合準備お願い!早くして!」


切羽詰まるその様子から傷の深さが伺える。


なんだか意識が遠退いてきた。


医療部隊の声が聞こえる。


「バイタルチェックよ!準備を急いで!」


傷を負っていた瞬間はアドレナリンでも出ていたのだろうか。


走るどころか意識を保つのですらやっとだ。


イチノハが口をひらく。


「キッド!傷は塞いだわ!他にどこか痛い所はない?」


「あぁ、背中以外は大丈夫だ。」


しかし、イチノハの回復魔法は強力だ。


もうほとんど痛みがない。


自分は立ち上がる。


そしてイチノハに声をかける。


「なあ、傷はどんなんだったんだ?」 


「もう起き上がれるの?無理しないでね。すごい深さだったんだから。」


「そうか、どれくらい?」


「背骨がはっきりと露出していたわ。よく走れたわね。」


それを聞いてゾッとする。


イチノハが口をひらく。


「処置が早かったからすぐに傷が塞がったけど、重傷だったのよ?」


アリムが現れる。


「ごめんなさい。私が戦場に料理を持って行くようにお願いしたから。」


自分はアリムに声をかける。


「いや、あの料理があったから戦闘部隊が勢いを盛り返したんだ。怪我をしたのは俺の落ち度だ。」


重傷者がまた運び込まれてくる。


息をつく暇がないくらい忙しい。


重傷者の手当てが終わったようだ。


イチノハが近くにやって来る。


自分はイチノハに声をかける。


「なあ、医療部隊って普段からこんなに忙しいのか?」


「忙しさでいえば今回は中くらいかしら、ミッションで攻撃力の高いモンスターの群れを相手にしてるから負傷者は多いわね。」


「ちなみにどのくらいのランクのミッションなんだ?」


「今回はAランクね。」


「結構高いんだな。医療部隊は基本的にAランクとかそれくらいのミッションが多いのか?」


「医療部隊にランクという概念はないわ。負傷者が出そうな現場に派遣される事が多いわね。」


「そうか。」


「私の所属している部隊が戦場に行く事が特別多いの。医療部隊にも町での医療が中心だったり、病棟の患者さんを見るのが中心の部署もあるのよ。」


「何でイチノハはこの部隊に配属されたんだ?」


「キッドもそうだと思うけど、私、小隊長を経験してから医療部隊に入ったのよね。そう言う人は戦場経験があると見なされて戦場に派遣される事が多いの。」


「なるほどな。納得の理由だな。」


個人的に気になるので、後でアリムにも聞いてみよう。


そして自分はアリムの所へ向かう。


アリムにもイチノハと同じ質問を投げ掛ける。


「アリムさんは何でこの部隊に配属されたんだ?」


「何で急にそんなことを聞くの?」


「いや、医療部隊って特殊でしょ?それぞれどんな経緯があるのかなーって気になって。」


「まあー、私は元々赤ノ国の田舎町に住んでて、仕事を探してる時にまずは赤ノ国の医療部隊に入ったんだけど、医療部隊の給料って緑ノ国の方が良くてね。それで、食料に魔法を込める能力が緑ノ国の医療部隊に認められてこっちに配属になって今に至るって感じかな。」


「へえー、確かに食料に魔法を込められるって便利だもんな。」


アリムと話しこんでいると料理中だったのだろう。


フライパンから火の手が上がっている。


自分は口をひらく。


「おい!まずいぞ!水!水!アリム!魔法で火は消せないのか!?」


「私は無理だよ!あーあ、何で目を離しちゃったかな!」


イチノハが走ってやって来る。


イチノハはフライパンの炎を覆い被せるように植物の弦を被せる。


自分はイチノハに話しかける。


「すまん、助かった。」


「燃え広がらなくて良かったわ。アリムさん、これが初めてじゃないのよ。前も料理中に目を離して、火の手上げてたのよ。」


アリムがてへぺろみたいな表情をして口をひらく。


「ごめんね。」


アリムは結構ドジっ子なのだろうか。


それにしてもイチノハのおかげで助かった。


そんな騒動がありながらもミッションが終了する。


自分はイチノハに声をかける。


「これからは他に予定あるか?」


「特に無いわよ。」


「それなら病棟にアタッシュケースを届けに行ってもいいか?」


「そんなボロボロのアタッシュケースを?まあ、別に良いけど。私はついていかなくてもいいのよね?」


「ああ、俺一人でいい。」


そして小児病棟へ向かう。


向かった先はアダム君の部屋だ。


すると、そこには恰幅のよいオバサンの看護師が今にも泣きそうな顔でアダム君を見ている。


自分はその看護師に声をかける。


「どうしました?」


すると、部屋の外に連れ出され状況を説明される。


「実はね、少し前にアダム君の体調が急変してね、治療するにも小さい身体でしょ?体力が持たないって医師に判断されて、薬による治療をしてたんだけど、もう脈も測れないくらい血圧が低くなっててね。あなた、医療部隊ならこの意味がわかるでしょ?」


つまり、危篤の状態だということだろう。


脈も測れないくらい血圧が下がっているとはそう言う事だ。


自分はオバサン看護師に声をかける。


「それなら尚更急がなくてはいけない。アダム君と話をさせてくれ。」


「でも、もう反応も薄くなっているのよ?」


自分はオバサン看護師の言うことを無視してアダムへ寄り添う。


自分はボロボロのアタッシュケースからロボットのおもちゃを取り出しアダムのお腹の上に乗せる。


意識が混濁しているようだ。


アダム君の反応は無い。


自分はボロボロのアタッシュケースから手紙を取り出す。


そしてアダムへ声をかける。


「アダム君、聞こえるか?手紙を読むぞ。」


かわいいアダムくんへ


アダムくん4さいのたんじょうびおめでとう。


げんきにおおきくなってくれてうれしいわ。


これからもいっぱいごはんたべてげんきにおおきくなってね。


おおきくなったらろぼっとのはかせになるのよね。


そんなアダムくんにはろぼっとをぷれぜんとします。


ろぼっとでいっぱいあそんでくわしくなってね。


ママより。


アダムが僅かに目を開ける。


その様子を見て自分はアダムの目の前にロボットのおもちゃをかざし声をかける。


「アダムくん聞こえたか?ほら!ママからロボットのプレゼントだ。」


アダムがか細い声で口をひらく。


「…ママ…ありがとう…ママが見えるよ……行かなくちゃ。」


その言葉に何も言えなくなる。


アダムが目を閉じる。


完全に意識は無い。


自分は泣き出しそうな気持ちを押さえオバサン看護師に声をかける。


「ドクターを、呼んでくれませんか。」


「えっ、は、はい。今すぐ。」


ドクターがアダムの病室へやって来る。


そしてアダムの心臓拍動、呼吸停止、瞳孔散大・対光反射停止を確認する。


つまりは死亡確認だ。


ドクターが口をひらく。


「ご臨終です。」


なぜだろう、病室で一目見ただけの少年が亡くなった事に対して涙が出る。


死とは誰にでも平等にやってくる。


そんな言葉を聞いたことがある。


だがこんなに不平等な事があるだろうか。


まだまだこれから人生を歩んで行く事が出来たであろう幼い子の死を見ると死は不平等な物に見える。


恰幅のよいオバサン看護師も泣きじゃくっている。


この人はどんな感情で泣いているのだろうか。


少なくともアダム君はこの世に生まれ、愛されていた。


母親からの手紙を読んだから断言できる。


この世界でも、現実世界でもそうだ。


なぜ戦争は無くならないのか。


人類の歴史は常に何かと争い、何かを敵として己の身を守り、そして死んで行き、また生まれるの繰り返しだ。


厳密には違うかもしれない。


しかし、自分の短い人生経験で思った事だ。


異世界でもこんなにリアルな経験をさせられると辛いものがある。


自分は涙を拭い、イチノハの家に戻る。


家に着き、一呼吸おいてからイチノハに話しかける。


「なあ、俺さ、小さい子が亡くなる場面に立ち会ったんだけどさ、死と直面するってしんどいな。」


「そうね、医療部隊に入ってからそう言う場面は結構みてきたから気持ちは分かるわ。」


「慣れるもんなのか。」


「難しい質問ね、まあ、事象としては慣れるわね。ただ、人が亡くなってゆく中でも自分にとって大事な物は失わないようにしなきゃだめよ。こういう職業だから余計にね。」


「大事な物。」


自分にとって大事な物はなんだ。


金か?


いや、この世界にきてから現実世界の金は全て失った。


気持ちか?


気持ちなんてものはその時の気分で変わる。


大事な物なんて、考えようともしなかった。


自分はイチノハに質問をする。


「イチノハは大事な物があるのか?」


イチノハは無表情で口をひらく。


「あえて言葉にすると探究心かしら。私も大事な物といったものの、常にそれを探しているの。大事な物と言っても私の言う大事な物はなにも物質の事を指しているわけじゃないわ。大事な物を常に追い求める事、それが私にとっての大事な物よ。」


なんというか哲学的で言っている事が理解出来ない。


自分はポカンとしながらイチノハに声をかける。


「なんか難しい事考えてるんだな。正直理解できないよ。」


イチノハがまた無表情で口をひらく。


「私も理解してないわ。だから常に追い続けるの。」


また難しい言い回しをされる。


最初から思っていたがイチノハはミステリアスだ。


トウヤやナツキの時と違って掴み所がない。


イチノハが口をひらく。


「こんな話をしたからこそ、あなたに話すわ。私、禁書を集めてるのよね。」


自分は少し驚いた表情で返事をする。


「禁書?」


「そう、禁書。色々なものがあるわ。開いたら魔法が発動するもの、真の歴史が書かれているもの、世界を滅ぼす事に繋がる事が書かれているもの。」


「それで、なんだ?」


「あなた、ワープストーンで全国いけるわよね?」


「まあ、全部の国行ったことあるな。それで?」


「各国の禁書を集めてきてほしいの。」


「と、いわれましても。」


「私も行けるときはついていくわ。禁書とそうでない物の見分けつかないでしょう?」


これはイチノハと冒険フラグがたった。


おっさん的には美少女、いや美女との旅は大いに歓迎だ。


しかし、扱うものが禁書とは。


イチノハが口をひらく。


「あくまでもメインは緑ノ国のミッションよ。生活もあるから。行けるときに外国につれてって。ということ。」


「まあ、連れてくくらいならいいぞ。」


イチノハが少しだけにこやかになり口をひらく。


「じゃあ決まりね。早速一週間後に長めの休みあるからその時かしら。」


イチノハとの禁書探しの旅に行く事が決まった。


そして1週間後。


自分は家を借りて早々に家を開けるという事態になったが、どのみち戻ってくるから良いだろう。


イチノハの家で過ごした1週間は忘れない。


美女にごはんをつくってもらい、美女の生活するさまを拝めたり、偶然発見したブラジャーにFと書いてあった事を。


準備が整いイチノハが口をひらく。


「初めはどの国に連れていってくれるの?」


「そうだな、黄ノ国にでも行こうか。」


自分とイチノハはワープストーンで黄ノ国へ向かう。


黄ノ国ヤンクルル市に到着する。


イチノハに声をかける。


「それで、禁書がどこにあるかどう調べるんだ?」


「そうね、ベタなところだと、本屋や図書館ね。」


「そんな大々的に禁書なんてあるか?」


「まあ、ごく稀にあるくらいね。一番安全なルートよ。」


本屋に向かう。


本屋に到着してイチノハに声をかける。


「どうだ?ありそうか。」


「見て回らないとわからないわ。」


自分はイチノハについて本屋を回る。


イチノハが一冊の本に食い付く。


イチノハに声をかける。


「その本、どうかしたか?」


イチノハが本から全く目を離さず答える。


「この本面白いわ。買おうかしら。」


「禁書ではなくて?」


「禁書ではないわ。私、普通の本も好きなのよね。」


まあ、家に本棚があるくらいだ。すべて禁書というわけでも無いだろう。


普通の本が好きでもなにも不思議ではない。


そして本屋ではその一冊の本を買って終了だ。

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