医療部隊入隊
医療部隊に入隊するための研修期間の3ヶ月は勉強尽くめの3ヶ月だった。
そんな中、プラタナスとの出会いもあり、有意義な時間を過ごせた気がする。
ちなみにプラタナスの試験結果は当然だが合格だ。
プラタナスはこれから、部隊知識、魔法知識、戦場知識の研修が残っているので、ここでお別れだ。
自分は早速医療部隊への入隊手続きを行う。
緑ノ国のギルドハウスへ向かう。
受付の女性に声をかける。
「すいません、医療部隊への入隊手続きをしたかったのですが。」
「はい、それでは必要書類の提出をお願いいたします。」
自分は医療知識試験の合格証書と小隊長のバッチを受け付けに提出する。
「はい、確かに。それでは医療部隊3等級のバッチをお受け取り下さい。」
これで無事に医療部隊への入隊が完了した。
自分はトークストーンでイチノハに連絡をする。
「イチノハさん?無事に医療部隊に入隊できたんだけど、これでミッションに連れてってもらえるかい?」
「あら、おめでとう。もっと時間かかると思ってたわ。そうね、ミッションの前に色々と案内しようかしら。」
「じゃあ早速合流してもいいかい?」
「それもそうだけど住むところ決めたら?」
確かにそうだ。
研修が終わったので寮には戻れない。
とりあえず家貸家を探す。
緑ノ国の家貸家に到着する。
受付の女性に声をかける。
「すいません、今日から入れる家は有りますか?」
「今日からですか。ハウスクリーニングが必要なので早くても1週間はかかりますが。」
まあ、それは仕方ない。
入るまで宿に泊まる事でしのげるだろう。
受付の女性に声をかける。
「じゃあ、それでもいいので物件見せてもらえますか?」
「かしこまりました。こちらの一覧をどうぞ。」
一覧を見る。
1LDKなら月約40,000Gから80,000Gと自分の手に届く範囲の物件が並ぶ。
自分は55,000Gの物件を契約した。
家貸家を後にする。
とりあえずは宿をとる必要がある。
宿屋を訪れる。
宿屋の受付の男性に声をかける。
「すいません、1週間連泊できる部屋はありますか?」
「なに?今時期は観光シーズンでどこの宿屋も空いてないよ?」
観光シーズンなんてあるのか。
確かに緑豊かな土地ではあるが運が悪い。
自分はイチノハに連絡をする。
「イチノハさん?とりあえず住むところは決まったんだけど住めるまで1週間かかるみたいなんだ。宿も観光シーズンで取れないらしい。」
「あら、それは災難ね。」
イチノハは通話越しで悩みながら口をひらく。
「んー、仕方ないから1週間だけうちに泊めてあげる。絶対変なことしないって約束してくれる?」
だいぶ警戒されているようだ。
まあ、イチノハに会うたび舐め回すような目で、いや、美しいものには自然と目が行くもので、決していやらしい目で見ていたわけではない。
いや、正直いやらしい目で見ていた。
やはり女性というものは男性の目線に気づくものなのか。
自分はイチノハに返事をする。
「絶対変なことしないよ。約束する。」
「じゃあ、これから合流しましょ。まずは施設を案内してあげる。」
それからイチノハと合流する。
イチノハが声をかけてくる。
「じゃあまずは病棟を案内するわ。」
イチノハについていき、病棟に案内される。
イチノハが病棟を案内しながら口をひらく。
「ここは主に戦闘で傷ついた人たちが収容されるわ。あまり患者さんをじろじろ見ないでね。」
そこには傷ついた人がたくさんいた。
中には腕や足が無い人も居て、戦争の悲惨さが見受けられる。
イチノハが口をひらく。
「次は小児病棟よ。小さい子が多いけどびっくりしちゃダメよ。」
小児病棟を見学する。
なかなかに悲惨な光景だ。
小さい子が傷ついている姿を見るのは心が痛む。
そこで男の子から声をかけられる。
「お兄ちゃん。ママを知りませんか。」
「え、いや、俺は知らないなぁ。」
その男の子は右腕と左脚が無く、肌がとても青白い。
そこに中年の恰幅がよいオバチャンの看護師が男の子に声をかける。
「アダム君、ママはね、違う病院にいるの。アダム君が元気になったら会えるわよ。」
それを聞き、男の子、アダムに声をかける。
「元気になったら会えるってさ。頑張って早く元気になろうな!」
「うん!僕早く元気になる!」
オバチャンの看護師に手招きされる。
その看護師が小声で声をかけてくる。
「ホントはね、アダム君のお母さんはアダム君を地雷の爆発から守ったせいで亡くなったのよ。それにアダム君、もうすぐ誕生日なんですって。ほんとに可哀想な話よね。」
中々に可哀想な話だ。
小児病棟は大人が入っている病棟よりインパクトが強かった。
イチノハが声をかけてくる。
「病棟はこんなものね。次は部隊だけど、明日から一緒に出てもらうから今日は家に帰りましょう。」
自分は疑問に思った事をイチノハに質問する。
「怪我って魔法で治せるんでしょ。何でこんなに怪我した人が病棟にいるんだ?」
「いくら魔法で治せると言ってもそれはすぐに治療出来た場合。傷を負ってから時間が経っていると魔法でも治せない事が多いのよ。」
それは知らなかった。
魔法は万能だと思っていた。
そしてイチノハの家に向かう。
イチノハの家の扉が開く。
家の中はとても綺麗に片付いており、木の温もりが感じられるよい家だ。大きな本棚、観葉植物などがあり、居心地が良い。
イチノハが口をひらく。
「好きな所に座って。早速食事を作るわ。」
お言葉に甘えてテーブルの前に座る。
それにしても家の雰囲気が落ち着いていてとても良い。
ナツキの部屋とは大違いだ。
しばらくすると食事が運ばれてくる。
ジェノベーゼのパスタと彩り豊かなサラダが運ばれてくる。
早速パスタをいただく。
「いただきます。ん、うまっ!」
ジェノベーゼのパスタは口に入れた瞬間ソースの旨味が口に広がる。麺の固さもこれがアルデンテだろう。とても良い食感だ。
サラダもいただく。
千切りにされた野菜を口に運ぶとそのみずみずしさがわかる。これも食感が非常に良い。
イチノハに声をかける。
「イチノハ、めっちゃ料理上手いな。すごく美味しいよ。」
「ありがとう。まあ、この辺は野菜が新鮮だから。」
そして食事が終わり、イチノハに声をかける。
「家にお邪魔するのに手ぶらも悪いかなと思って差し入れを買ってきたんだ。良かったら食べて。」
自分は買ってきたチョコレートを差し出す。
イチノハが口をひらく。
「あら、気が利くじゃない。頂こうかしら。」
イチノハがチョコレートを食べてしばらく経過したがどうも様子がおかしい。
イチノハがとろんとした目で声をかけてくる。
「キッド、あんたこれが目的だったのね?」
「え?何の話し?」
自分は差し入れしたチョコレートを確認する。
お酒が入っている。
買った時には気づかなかった。
見た目がお洒落という理由で買ってきたがまさかお酒が入っているとは。
イチノハが近いてきて口をひらく。
「私は覚悟を決めたわ。好きにしたいんでしょ?」
イチノハの服がはだけて、白い肌で弾力のありそうな胸元が見える。
予想外の事態だが、これはラッキーな出来事だ。
もう、こうなったら自分も男だ。
やることをやらせてもらおう。
自分はイチノハの服に手をかける。
その瞬間だった。
「うわぁあ!」
足が植物の弦に引っ張られ、そのまま宙吊りになる。
イチノハが口をひらく。
「あれ?どこ行くの?」
これはイチノハの魔法じゃないのか?
だとしたら相当まずい。
植物の弦は宙吊りにされた自分をアクロバティックな体勢に縛りつける。
縛りプレイにしてはだいぶハードな体勢だ。
イチノハが口をひらく。
「ねえー、どこ行くの?私、火照ってきたんだけど。」
どことなくエロいイチノハはおっさん的に非常に嬉しいが今はそれどころじゃない。
植物の弦を解かなくては命も危ない。
そして自分は植物の弦に振り回され、家の中の家具にぶつかり部屋がめちゃくちゃになる。
「がっ、死ぬ、死ぬ…」
死を覚悟したとき、植物の弦がほどかれ、自分は床に落ちる。
イチノハの様子を確認する。
美しい顔に似合わずバカデカイいびきをかいて熟睡しているようだ。
植物の弦はイチノハの魔法の暴走だったのだろうか。
自分は熟睡しているイチノハを確認し、意識を失った。
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時間がどのくらい経っただろうか。
自分は目を覚ました。
あらゆる物が散乱する部屋の中。
行儀よく寝ているイチノハ。
とりあえずイチノハを起こす。
「おーい、起きろ。起きてくれ。」
イチノハが目を覚ます。
「うーん、え?何これ?」
「起きたか、イチノハ。記憶はあるか?」
「いいえ、チョコレートを食べた辺りまでは記憶があるんだけど。それにしても頭が痛いわ。」
「とりあえず部屋を片付けようか。」
イチノハと一緒に部屋を片付ける。
ある程度片付いた時に自分は口をひらく。
「イチノハ、ごめん!俺の買ってきたチョコレートにお酒が入ってたみたいだ。」
イチノハがはっとした顔で話しかけてくる。
「原因はそれね!私酔っぱらってたんだわ!」
それにしても凄い酒癖だ。
イチノハに酒はダメ。絶対。
そして、日にちと時間を確認する。
イチノハが口をひらく。
「あら、まだ朝だわ。ミッションの時間まで全然余裕があるわ。」
「そうか、したら部屋を綺麗にしてから家を出ても間に合うな。」
部屋を綺麗に片付けてからイチノハと一緒にミッションへ向かう。
町の郊外に到着した。
そこにはたくさんの馬車が存在している。
そしてイチノハに純白のローブを身に纏っている集団の所へ案内される。
イチノハが口をひらく。
「ここに居るのが医療部隊のメンバーよ。キッドもローブに着替えて。」
イチノハから純白のローブを渡される。
自分はひとけの無い所でローブに着替え、医療部隊に合流する。
イチノハが口をひらく。
「今日から新しく医療部隊で働くキッドよ。皆さんよろしくね。」
自分も簡単に自己紹介をする。
「キッドと申します。皆さんのご迷惑にならないように頑張りたいと思います。」
すると、40歳ぐらいの緑色の髪色でショートヘアーの女性が声をかけてくる。
「キッド君、よろしくね。私はナンシー。今回の医療部隊の隊長よ。」
「よろしくお願いします。あの、俺、魔法使えないけど大丈夫ですか?」
「それなら軽症の方々の治療にあたればいいわ。ポーションが積んであるから、それを使ってね。」
そして今回のミッションの内容がナンシーから説明される。
「今回は町の郊外にいるモンスターの群れの討伐ミッションについていくわ。負傷が戦場で動けなくなってる時は基本的には戦闘部隊の人に輸送をお願いして、自力で動ける人は医療部隊の所にきてもらって救護するわ。」
説明が終わりミッションへ向かう。
医療部隊の馬車は結構広い。
それだけあり、馬3頭で引っ張られる。
モンスターの群れの場所へ向かう。
そしてモンスターの群れの討伐が行われる。
意外と戦場の近い位置で待機をしていて、こちらまでモンスターに襲われないか不安だ。
そんな中早速負傷者が現れる。
負傷者が口をひらく。
「モンスターに噛まれた!治療を頼む!」
ナンシーから指示を受ける。
「軽症ね、キッド君お願い。」
自分は負傷者に消毒液とポーションをかける。
みるみる傷が治っていく。
負傷者が口をひらく。
「ありがとう、また戦場に戻る。」
そんな中、医療部隊にひたすら料理を作っている女性を見つける。
その女性は30代に見える。髪色は茶髪がベースで毛先だけが赤。髪の長さは胸の辺りまである。顔は丸顔で、八重歯が特徴的だ。
名札にはアリムと書いてある。
自分はその女性アリムに声をかける。
「その食事は皆さんに振る舞うのですか?」
「んー、まあ、負傷者用ですかね。健常者の方も食べられますが。」
負傷者用?意味がわからない。
見たところ流動食でも無いようだが。
アリムは料理に味付けをしているようだ。
だが、だいぶ大雑把だ。
胡椒が大量に入ったように見えたが。
自分はアリムに声をかける。
「あのー、胡椒多すぎません?」
「大丈夫、大丈夫、この食材は味が薄いからこれくらいでちょうどいいはず。まあ、目分なんだけどね。なんとなく大丈夫。」
少し不安だ。
そこに負傷者がまた現れる。
ナンシーから指示を受ける。
「軽症、キッド君お願い。」
自分は消毒液とポーションを持って治療の準備をする。
そこでアリムが声をかけてくる。
「負傷者の方にこの料理を持って行って。」
自分は言われた通りにする。
じゃがいもだろうか。サイコロ状で一口サイズに切られている。
しっかり火が通っていて美味しそうな匂いがする。
負傷者がアリムの料理を口にする。
するとみるみる内に傷が癒えてゆく。
自分はアリムに声をかける。
「この料理は?」
「私は料理に魔法の効力を込める事ができるんです。料理には回復魔法を込めてるんです。」
「それじゃあ普通に回復魔法使えるんじゃないですか?」
「いや、私は魔力が弱すぎて無理。だから食材を媒体にして効果を増幅させているのです。」
魔法には色々あるものだ。
自分は近くに居たイチノハに声をかける。
「なあ、料理に魔法を込める事って出来るのか?」
「それはアリムさんのユニークスキルね。時々特殊なスキルを持った人が居るのよ。その一人がアリムさんよ。」
「へえー、そりゃ凄いな。」
アリムが声をかけてくる。
「キッド君だっけ、白衣、太もものところ破れてるよ。」
自分は太ももを確認する。
そこには何かに引っ掛けたのだろうか。
白衣がペロンと破れている。
続けてアリムが声をかけてくる。
「こっちきて破れた所を見せて。」
破れた所をアリムに見せる。
するとアリムは破れた箇所に魔法をかけだした。
アリムが口をひらく。
「はい、直りましたよ。」
白衣の破れた箇所を確認すると、直したとは思えないぐらい綺麗に直っていた。
自分はアリムに話しかける。
「おー、凄い。ありがとうございます。」
「戦闘で服ってボロボロになるでしょ?私はこの魔法で服も直したりもしてるんですよ。」
便利な魔法だ。
これも所謂ユニークスキルだろうか。
アリムは料理に裁縫という家庭科に特化したような魔法を使えるようだ。
すると重傷者が運び込まれてくる。
ナンシーが指示をする。
「首を噛まれて出血多量!すぐに回復魔法を!」
イチノハが救護に向かう。
自分も医療を勉強した身だ、イチノハに着いていく。
すると、女性に声をかけられる。
「あなた、回復魔法使えるの?」
「いえ、使えませんが。」
女性は凄い剣幕で口をひらく。
「じゃあ邪魔!早く避けなさい!」
自分は道を空ける。
さすが医療現場だ。
切羽詰まる状況だと穏やかではない。
戦況は良くない状態らしい。




