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医療研修

緑ノ国へ到着した。


町の雰囲気は緑ノ国だけあり、草木が生い茂っている。生い茂っていると言っても無造作に生えている訳ではなく、花壇等に花が咲いていたりとしっかり整備されている。


建物はそれほど多くない。中心部に住んでいるわけではないのだろうか。


思ったより田舎だ。


イチノハが声をかけてくる。


「さっそく医療部隊の研修を受けてもらうために手続きをしてもらいますね。詳しくは担当の方の指示を受けて下さいね。」


「え、イチノハさんと行動出来る訳じゃないのかな?」


「緑ノ国への案内はしますけど、一緒に行動するかはまた別の話しですよ?」


さっきまで浮かれていた自分がアホみたいだ。


イチノハがさらに声をかけてくる。


「まずは医療部隊に入るための基礎を学んでくれないと一緒に行動出来ないですからね。研修が終わって医療部隊に無事に入れればまた案内しますね。」


まあ、まずは勉強しろと。


確かに医療部隊に入れない事には緑ノ国へ来た意味が無くなってしまう。


イチノハに案内され、研修施設に案内される。


さっそく受付を行う。


受付の女性に声をかける。


「すいません。医療部隊に入るため研修を受けたいのですが。」


「研修をご希望ですね?医療部隊に入るためには少なくとも1年の研修期間が必要ですがよろしいですか?」


1年も研修期間が有るとは予想外だ。


イチノハと行動出来るまで1年の足踏みとなるが仕方ないだろう。


ふと思い受付の女性に聞いてみる。


「あのー、期間もっと短くなったりしませんか?」


「魔法軍に所属されているのならば階級によって短縮される科目もありますが、魔法軍に所属されてますか?」


「はい、所属しています。」


「何等兵様ですか?」


「小隊長です。」


「小隊長様ですね。それなら、部隊知識、魔法知識、戦場知識の3科目が免除され、医療知識を習得して頂ければ医療部隊に登録可能です。」


「ちなみに最短でどのくらいで医療部隊になれますか?」


「医療知識のみなら最短で3ヵ月で習得可能です。」


「もうひとつ質問良いですか?」


「どうぞ。」


「魔法使えなくても医療部隊に入れますか?」


「所属できる課が制限されますが所属は可能です。」


制限される課が少々気になるがとりあえず安心した。


ひとまず研修を受ける手続きを進める。


受付の女性が話しかけてくる。


「ちなみにお住まいが通える範囲ならご自宅から研修の参加が可能ですが、そうで無ければ寮が有りますがどうなさいますか?」


イチノハに視線を向け聞いてみる。


「あのー、もし良ければイチノハさんの家に住まわせてもらえますか?」


イチノハが表情一つ変えず答える。


「キッドくんなんかエッチだからだめ。寮にしてもらって下さい。」


玉砕だ。


美女とのハッピーライフの夢が潰えた。


泣きたい。


受付の女性に声をかける。


「寮でお願いできますか?」


「共同生活になりますがよろしいですか?」


共同生活。これがあった。一緒に生活する子が可愛い女の子なら嬉しい。


自分はわくわくしながら答える。


「はい、共同生活で大丈夫です。」


受付の女性が話しかけてくる。


「それでは寮へご案内いたしますが、準備はよろしいですか?」


一応最低限の物はリュックに詰めてきた。すぐにでも行けるだろう。


受付の女性に声をかける。


「大丈夫です。」


「それではご案内いたします。」


ここでイチノハとお別れだ。


早く医療部隊に所属し、合流したい。


寮に到着する。


部屋は2段ベッドが2つあり、部屋は勉強机があるくらいだ。


受付の女性が話しかけてくる。


「時間帯的に部屋の寮生の方は研修中です。寮生活についてはガイドブックをご覧下さい。研修は明日から開始されます。それでは。」


とりあえず部屋の寮生が戻って来るまで待機する。


新生活のスタートだ。


時間が経ち寮生が帰ってくる。


扉が開く。


男の子だ。髪色は黄緑。髪型はおかっぱでフチの細い眼鏡をかけている。年齢は同じ17歳くらいだろうか。良く言えば頭の良さそうな印象。悪く言えば陰キャな印象だ。


女の子と相部屋ではないのは残念だが、まあ、普通に考えたら異性で相部屋は無いだろう。


その男の子は部屋に入って来ることなく扉を閉めた。


そして再び扉が開く。


自分は声をかける。


「今日からお世話になるキッドです。よろしくお願いします。」


男の子が口をひらく。


「あ、よろしくお願いします。部屋を間違えたかと思いました。」


「急に一緒になってごめんね。なるべく迷惑かけないようにするから。」


「いや、こちらこそ。あ、僕の名前はプラタナス。実は僕も3日前くらいにここに来まして、新人です。」


「そうなんだ。プラタナス君は緑ノ国出身?」


「はい、そうです。キッドさんの出身は?」


「俺はナチュラル村って言うずっと遠いところの出身だよ。」


「へえー、聞いたことないや。」


お互いに簡単に自己紹介をして雑談をして過ごす。


今日はこれ以上特に何もなく終わる。


次の日、自分はプラタナスに質問をする。


「研修受けたいんだけど、どうしたらいいのかな?」


「ガイド読まなかったんですか?自分で教科書買って、講義も好きに組み合わせて受講するんですよ。」


「あぁ、なんか書いてあったな。自販機みたいなので教科書買うんだよね。プラタナス君は何の科目から取ろうとしてるのかな?」


「僕は医療知識から取ろうと思ってます。」


「そしたら一緒に受けても良いかな?仲間がいた方が頑張れそうだからさ。」


「あ、良いですよ。そしたら一緒に行きますか。」


さっそく教科書を買ってプラタナスと一緒に講義を受けにいく。


教科書がものすごく分厚い。


覚えきれるだろうか。


教室に移動し、講義を受ける。


肺の構造についての講義だ。


内容は詳しく肺の事に説明されて、専門用語も飛び出す。


初っぱなから内容が難しい。さすが医療という感じだ。


次に一次救命の座学と実技を受ける。


講師の人から講習を受ける。


「次に救急が出動してから、現場に到着する平均時間が8.6分であり、そこで、この心停止してからの生存率のグラフを見て欲しいのですが……」


まだ、身体の構造の講義よりは分かりやすい感じだ。


実技に移る。


講師の人のデモンストレーションが終わり、実技に挑む。


演技するのは恥ずかしいと思いながら始める。


「人が倒れている!そこのあなたは救急への連絡を!回復魔法使える方は手伝いをお願いします!呼吸を確認します!」


初動の声かけや確認を行ってから、人形に心臓マッサージをする。


講師の人から声をかけられる。


「もっと患者さんに身体近づけて、テンポをもう少し早く。そのペースで2分間続けましょう。」


この2分間がなかなか大変だ。


心臓マッサージは案外疲れる。


その後も数種類講義を受けてから寮に戻る。


部屋でプラタナスと会話をする。


自分はプラタナスに声をかける。


「結構忙しいんだな。」


「そうですね。」


会話が続かない。


プラタナスはそのまま参考書を読み始める。


まあ、1日一緒に行動したといえ、初対面だ。


こんなものだろう。


翌日、また講義を受けに行く。


今日は行動心理学についてだ。


講師の人が説明をする。


「物事の見方を変え、違う価値を見いだします。例えば、死亡率が10%の手術と生存率が90%の手術ならどちらに同意するか。という例が有名です。これがリフレーミング効果です。」


それにしても色々な事を勉強する。


医療に関係あるのか?と思う物もある。


哲学や倫理学という物も学ぶらしい。


次は回復魔法の講義を受ける。


講師が説明をする。


「回復魔法とは、文字通り回復が目的で、攻撃魔法と性質が異なります。マナの変換を行い、回復魔法に繋げます。この返還により、属性を問わず使用出来るのが回復がです。」


まあ、魔法の使えない自分にとっては知識として留めておくくらいか。


今日も何種類か講義を受けて寮に戻る。


寮に戻りプラタナスに声をかける。


「ねえ、プラタナス君って趣味とかあるの?」


「何でですか?」


「いや、何でって言うかコミュニケーションとろうかと。」


「うーん、特に無いですね。」


「そうか。」


相変わらず会話が続かない。


自分も真面目に勉強に集中したほうが良いのだろうか。


1週間程が経過した。


そこであることが気になった。


それはプラタナスが昼食の時間にトイレに入り、次の講義の時間まで出てこない事だった。


そして、その時間帯に自分がプラタナスのロッカーに偶然通りかかった時だった。


女の子がプラタナスのロッカーの鞄を開けている。


その光景を見つけ声をかける。


「おい、お前何してるんだ。」


「ッチ。」


その女の子はプラタナスの鞄を開けたままその場を立ち去る。


自分はプラタナスの鞄を確認する。


鞄を確認すると剃刀の刃が入っていた。


講義で剃刀の刃を使うことがあるだろうか。


それにしてもはだかで剃刀の刃を持ち歩く事は無いだろう。


間違いない。


さっきの女の子が入れたのだ。


その日、寮に戻りプラタナスに話しかける。


「ねえ、プラタナス君。困ってる事ないか?」


「いえ、特に。」


「気になったんだけど昼ごはん、トイレで食ってるのか?」


「………」


「俺さ、見たんだよね、女の子がプラタナスの鞄に剃刀の刃を入れてたの。」


「………」


「はっきり言うけどさ、イジメられてるんだろ?」


「………」


「明日から一緒に昼飯食べよう。それと、鞄重いかもしれないけど持ち歩こうか。」


プラタナスは口を開かない。


その日はそのまま就寝した。


次の日、午前中の講義が終わる。


プラタナスに声をかけ、一緒に昼ごはんを食べるように誘った。


「プラタナス君、昼ごはん一緒に食べようか。」


「………」


プラタナスは無言だが、自分についてくる。


プラタナスを見ると鞄を持ち歩いているようだ。


ひとけの無い所を見つけ、プラタナスと昼食を取る。


プラタナスに声をかける。


「昼ごはん食べれるか?」


「うん。」


「ここならあまり人も来ないから毎日一緒にごはん食べようか。」


「うん。」


口数は少なかったが、プラタナスは自分と行動するようになった。


そして、一緒に行動するようになって数日が経過した。


その日の講義が終わり、寮に戻りしばらく経ってからプラタナスが口をひらく。


「キッド君、ありがとう。」


「お?どうした?」


「いや、一緒に行動してくれてから嫌がらせが無くなったから。」


「やっぱりか。何も気にするな。俺がいる間は一緒にいるからさ、俺に気を遣わないで何でも話してくれ。」


「うん。」


それから一緒に行動するようになってからプラタナスへの嫌がらせは無くなった。


イジメをする人間も大したことの無い奴だ。


自分と行動する姿を確認しているだろう。


それからは何もしてこなくなった。


しばらくしてプラタナスがまた口をひらく。


「僕、こんなだからさ。昔からイジメの対象になってたんだ。」


「そうか。」


「だからキッド君が気にかけてくれてすごく嬉しかった。」


「気にするな。俺もプラタナス君と同じ研修生だ。だから一緒に行動するのは変な事じゃ無いだろう?」


プラタナスが泣き出す。


今まで我慢していたのだろう。


嗚咽が出るくらいに泣きじゃくる。


泣きじゃくる感情は本人にしか分からないが、これが悪い意味では無いことは確かだった。


そして、約1ヶ月が経過する。


プラタナスへの嫌がらせは完全に無くなる。


しかし、犯人を捕まえる事はできておらず、遭遇もしなくなった。


少しモヤモヤするが、嫌がらせが無くなった以上深く調べる事は出来ない。


それに犯人捜しをすることが必ずしも正解ではない。


これは自分の経験から学んだ一つの答えだ。


今日は採血の実習を行う。


人形を使って練習をしたのち、講師が口をひらく。


「それでは研修生同士で実際に採血してみましょう。」


プラタナスと向き合う。


プラタナスに声をかける。


「じゃあ俺が先にプラタナス君の血を採るね。」


「うん、失敗しないでね。」


講義は受けた。


自分は学んだ手順を頭に描き、プラタナスに針を刺そうとするが、血管がわからない。


どぎまぎしていると講師が話しかけてくる。


「これじゃあ、絞めすぎ。血管を見えやすくするために腕をゴムで絞めるけど、説明した通り強すぎると逆に血管が見えなくなりますよ。」


言われた通り腕を絞めていたゴムを緩める。


講師が話しかけてくる。


「じゃあ、手を握ったり離したりしてもらいましょう。その時に血管が収縮するからそれで血管の位置ちゃんと確認して。後、針を刺す時は向きに注意して、向きが逆だと血が取れませんよ。刺す所の皮膚を少し伸ばしたら成功しやすくなりますよ。」


言われた通りプラタナスに針を刺す。


成功だ。


注射器に血液が上がってくる。


プラタナスが口をひらく。


「おおー!良かったー!」


無事に採血の実習が終わる。


そして月日が経ち、試験の日が迫ってくる。


医療知識の習得は予想以上に大変だ。


合格出来るかどうか非常に不安だ。


プラタナスと最後の追い込みをする。


勉強をしながらプラタナスに声をかける。


「プラタナス君、DMってなんだっけ?」


「糖尿病の事ですよ。」


「プラタナス君、バイタルサインのRRてなんだっけ?」


「呼吸数ですよ。」


「くそ、略語が多すぎる!頭から抜ける!」


正直自分はヤバイかもしれない。


プラタナスに答えを聞いてばかりだ。


そんな中、プラタナスは自分の質問にスッと答える程の余裕が見受けられる。


試験の数日前は寝る間を惜しんで勉強した。


そして試験当日。


自分とプラタナスは試験会場へ向かう。


自分はプラタナスに声をかける。


「いやー、寝不足だ。もう結果とかどうでも良いから早く解放されたい。泥のように眠りたい。」


「睡眠不足は試験には大敵ですよ。そんなコンディションで大丈夫ですか?」


そんな会話をしながら試験会場に到着する。


そこは大きな会議室のようだった。


広い空間に一つ一つ机が列べられている。


自分の受験番号と席を確認して着席する。


そして試験が開始する。


自分は眠気と戦いながら答案に向かう。


そして試験が終わる。


試験が終わり、プラタナスに声をかける。


「もう、ゴールしても良いよね。」


「眠たさの限界来てるじゃないですか。とりあえず帰って寝ましょう。」


そして試験の結果が出るまで1週間ほど待つ。


自分は医療知識の試験だけ受かれば医療部隊への入隊資格が得られるので、その後の講義は出ずに過ごしていた。


そして試験の結果が出る。


合格だ。


こうして自分は医療部隊への入隊資格を得ることが出来た。

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