闘技大会2
3位決定戦はナツキが勝利した。
戻ってくるナツキに声をかける。
「ナイスファイト!よくやった!」
ナツキは笑顔でピースサインを向けてくる。
イタガキ隊長の治療が行われる。
それと同時にナツキにも回復魔法が掛けられる。
お互いの治療が終わり、表彰式の準備が行われる。
ナツキが口をひらく。
「いやー、私もまだまだね。もっと強くならなくちゃ。」
自分は笑いながら返事をする。
「はは、十分だよ。これだけの猛者相手に良く戦ったよ。」
ナツキが腕を組ながら返事をする。
「全国大会はこれより強い人がいっぱいいるのよ。ここで優勝するくらいの実力は必要よ。」
「そうかもしれないな。でも、今は頑張って入賞出来たんだから胸張って表彰式いってきな。」
ナツキの表情がほころぶ。
「それもそうね。誉めてくれてありがとう。」
その表情は誇らしくもあり、とても可愛らしかった。
表彰式が行われる。
優勝はバルギット、準優勝がアラン、3位がナツキだ。
ナツキを破ったアランが準優勝とは意外だ。
バルギットの戦いは見なかったが優勝したのだから相当の実力者だろう。
赤ノ国の闘技大会は幕を閉じた。
次は全国大会だ。
全国大会までは2ヵ月ある。
その2ヵ月の間にナチュラル村へワープストーンで飛び、ミッションの合間にナツキは先生に稽古をつけてもらいに行った。
自分もそれについていく。
先生の家に到着する。
ナツキが大きな声で先生を呼ぶ。
「先生!お願い!また稽古をつけてほしいの!」
先生が家から出てくる。
「そんな大きな声を出さなくても聞こえているよ。何か悔しい事でもあったのかい?」
ナツキが口をひらく。
「闘技大会の全国大会に出られる事になったんだけど、赤ノ国大会では3位だったの。だからまだ強くならなきゃいけないの!」
先生が何か思い出すような表情でナツキに声をかける。
「んー、懐かしいな闘技大会。僕も全国大会に出たことあったなぁ。」
ナツキが興味津々に先生へ声をかける。
「先生も出てたの?何処まで行ったの?」
先生が返事をする。
「2回戦で負けちゃったけどね。まあ、それだけレベルが高いんだよ。」
ナツキが口をひらく。
「先生の全盛期でしょ?それでも2回戦までしか行けなかったの?」
先生が口をひらく。
「相手がその年の優勝者でね。今じゃ赤ノ国の魔法軍の総括。イグニクス総括だよ。」
ナツキが驚いた表情で口をひらく。
「イグニクス総括!そりゃー勝てないわね。」
自分が疑問に思い質問する。
「イグニクス総括ってそんなに強いのか?」
ナツキが興奮して話しかけてくる。
「赤ノ国の魔法軍のトップよ!強いに決まってるじゃない!」
「そうか、俺からしたらナツキでも十分化物だけどな。」
「それって私の事褒めてるつもり?」
「少なくとも貶してはいないよ。」
そして、先生による稽古が始まる。
先生がナツキに話しかける。
「じゃあ実戦訓練でいいかい?」
ナツキはファイティングポーズをとりながら口をひらく。
「もちろん。」
先生が口をひらく。
「僕もわりと本気で行くからね。」
すると先生が高速でナツキに迫る。
ナツキが思わずバックステップで逃げる。
先生はさらに距離を詰めてナツキにパンチを繰り出す。
ナツキがそのパンチをよけてカウンターパンチを先生の顔面に放つ。
先生の顔面にヒットしたと思ったら先生は防御魔法で完全に防いでいる。
先生が少し距離を取り、水の魔法をナツキに放つ。
しかし、いきなり攻撃的な先生は初めて見た。
ナツキは水の魔法を炎の魔法で防ごうとするが、炎が水でかきけされナツキに水が襲う。
その水は大砲のようだ。
ものすごい水圧でナツキを吹き飛ばす。
先生が口をひらく。
「まだ、行くよ。しっかり受け身を取って!」
ナツキは受け身を取る。
しかし、ナツキの頭上から雷が落ちる。
ナツキは横に飛び込み間一髪でかわす。
あのナツキが防戦一方だ。
さらに先生は大量の葉っぱをあみだし、その葉っぱを刃物を飛ばすようにナツキへ放つ。
ナツキの全身に葉っぱが襲いかかる。
ナツキは防御魔法で防ごうとするが、顔と胴体しか守れておらず、足に無数の葉っぱが突き刺さる。
先生が口をひらく。
「後で治療するから、気にせず攻めておいで。」
ナツキが雄叫びを上げながら先生に連撃を繰り出す。
「あああああ!」
先生は防御魔法ですべて受けきる。
先生が口をひらく。
「やめ!」
ナツキの動きが止まる。
先生がナツキの傷ついた箇所に回復魔法をかける。
そして、先生が口をひらく。
「ナツキちゃん。攻めてる時はいいんだけど、防御が甘いね。かわしきるにはもっとスピードを鍛えた方が良いし、防御魔法も全身をすぐに守れるように発動出来たらいいね。」
ナツキが口をひらく。
「でも、時間が足りないの。どうしたらいいの?」
先生が口をひらく。
「今の実力で挑戦したらいい。まだ若いんだから挑戦する事も勉強だよ。」
それにしても先生は強い。
先生の全盛期の強さが想像出来ない。
むしろ、全盛期からそれほど衰えていないと考えるべきか。
この世界で最強がどれだけ強いのか興味が湧いてくる。
先生に声をかけられる。
「キッド君。君は戦闘はできないかもしれないけど、ナチュラル村の4人に持ってない物がある。それは視点だ。」
自分はキョドりながら先生に質問する。
「視点って何の話しですか?」
先生が優しい表情で声をかけてくる。
「物の見え方は人によって違う。キッド君は一番普通の人に近い視点で物事を考えられる。ナチュラル村の4人は小さい頃から魔法を使えて戦闘もできる。そうじゃない視点ってのは生活する上で意外と大事なんだよ。」
先生がさらに声をかけてくる。
「つまりは、4人にとって成長するために君は必要な存在なんだよ。」
自分は先生に話しかける。
「何故今のタイミングでその話をするんですか?」
先生が笑いながら返事をする。
「はは、ナツキちゃんに稽古をつけてたらキッド君にもお話したくなってね。指導者になると何かとみんなに世話をやきたくなるもんだよ。」
そんなものなのだろうか。
教師というものは自分の中で職業でしかなく、ビジネスで人に物を教えるものだと思っていた。
しかし、先生は良い意味で先生なのだと思った。
それから全国大会の直前まで、時間の有る限りナツキは先生に稽古をつけてもらった。
そして全国大会の日が迫る。
会場は青ノ国の中心部、ウォータント市だ。
ウォータント市までは飛行船に乗って移動する。
自分とナツキは飛行船に乗る。
ナツキがそわそわしながら声をかけてくる。
「私、飛行船に乗るの初めて。あんたは乗ったことあるの?」
「いや、俺も初めてだよ。」
「空を飛ぶ乗り物とか怖くない?途中で落ちたりしないのかしら。」
「不吉な事言うなよ。本当に落ちたら洒落にならんぞ。」
飛行船が乱気流に入る。
飛行船が大きく揺れる。
ナツキが抱きついてくる。
不思議とドキドキしない。
長く一緒に生活し過ぎたのだろう。
やはり自分の娘という感覚が強い。
「いやあぁあ!怖いんだけど。」
「大丈夫だ、乱気流を抜ければまた安定するから。」
ナツキは戦闘ではゴリラのようだが普段は普通の女の子だ。
飛行船の揺れで怖がるのが可愛らしい。
乱気流を抜け、乗客が声をかけてくる。
20代前半の見た目で身長は180センチくらい。赤とオレンジの髪で長い襟足が特徴的だ。服装は高級そうなローブを纏っている。
「やあ、君がナツキちゃんかい?僕はバルギット。赤ノ国の闘技大会では頑張ってたみたいだね。」
ナツキをご所望のようだ。
自分はナツキの服を引っ張る。
ナツキがバルギットに声をかける。
「あ、優勝者の人ですね?私に何か用ですか?」
「いや、せっかくだから同じ赤ノ国のメンバーには声をかけようと思ってね。いくらか試合見てたけど、積極的に攻める良い戦い方だね。」
「いやー、本当ですかー?」
「今回の大会は若い子が活躍しててね、アラン君、ナツキちゃんなんかがそうだったね。」
「そんなそんなー(照)」
ナツキは明らかに嬉しそうな表情で受け答えをしている。
話を聞いているかぎりバルギットは悪い人では無さそうだ。
バルギットが口をひらく。
「ナツキちゃんは赤ノ国出身なのかい?」
「いえ、私はナチュラル村っていう小さい村の出身です。」
「ナチュラル村か、もしかしてゲンさんって居ないかい?」
「私たちの先生ですよ?ご存知で?」
「僕の世代より上だけど、魔法軍の精鋭の一人だったと聞いてるよ。戦闘の話になるとよく名前が出ていたから知っているよ。」
先生は魔法軍では有名人だったようだ。
自分はバルギットについて少し気になり質問をする。
「バルギットさんも魔法軍なのですか?隊長とかですか?」
バルギットが視線を自分に向けて話し出す。
「魔法軍だけど、役職は隊長より上さ。僕は赤ノ国本部隊、7番隊右翼さ。」
聞きなれない言葉だ。
自分はバルギットにさらに質問をする。
「7番隊右翼とは何ですか?」
ナツキが口をひらく。
「キッド、この人赤ノ国の魔法軍のエリート中のエリートよ!番号が割り振られた部隊は、赤ノ国総括のお膝元よ!」
バルギットが笑いながら口をひらく。
「まあ、エリートになるのかな?だからと言ってそんな怖がらなくても大丈夫だよ。」
それは強いはずだ。
魔法軍の精鋭部隊の人は初めて見た。
この闘技大会のレベルの高さが伺える。
飛行船は青ノ国に到着し、闘技場へ移動する。
移動中の道中でナツキが口をひらく。
「バルギットさんかー、かっこよかったな。」
「なんだ、好みのタイプだったのか?」
「そう言う事じゃない!魔法軍のエリートって憧れよねって事。」
「そのエリートが全国大会に出てるんだぞ。こりゃーレベル高そうだな。」
ナツキが表情を引き締め、口をひらく。
「そうね、気合い入れなきゃ。」
全国大会の会場に到着する。
1回戦が始まるまでにそれほど時間が無い。
ナツキの1回戦の相手はなんとレイジだ。
レイジも予選を通過して全国大会に出場したらしい。
ナツキに声をかける。
「レイジが相手だぞ、勝てそうか?」
「分からない。けど、村で稽古してた時はほぼ互角だったわ。」
試合開始前、レイジがナツキに声をかける。
「お互いに戦うのは稽古以来だね、よろしくね。」
レイジは一言声をかけに来てすぐに定位置へ戻る。
クールさは健在のようだ。
そして全国大会1回戦開始のベルが鳴る。
先に動いたのはナツキだ。
レイジに向かって正面からパンチを繰り出す。
レイジは防御魔法でそのパンチを受け、ナツキのパンチした手を掴み、投げ技を繰り出す。
ナツキは宙に放り投げられるが、猫のように身を翻し、レイジに反撃する。
レイジはまたも防御魔法でナツキの攻撃を受ける。
レイジは水魔法を放ち、ナツキを吹き飛ばす。
ナツキは空中で体勢を整え、綺麗に着地する。
ナツキは着地したとたんに両手を前に突きだし大きな火の玉をレイジに放つ。
レイジも大きな水の玉を放つ。
それぞれが中心でぶつかり合い、お湯がリング上に降り注ぐ。
レイジが地面に手を付けて魔法を発動する。
すると地面にばら蒔かれたお湯が氷になり、ナツキの足を固定する。
しかし、ナツキは氷で固定された足から炎を発火し、すぐに脱出する。
ナツキが一気に距離を詰めてレイジへ連撃を繰り出す。
レイジが氷の防御魔法でそれを受ける。
ナツキの連撃を放つ手足が徐々に凍りつく。
ナツキは一度レイジと距離を取る。
しかし、レイジが距離を詰めてくる。
レイジが、ナツキの至近距離で氷の刃を繰り出す。
ナツキはさらにスピードのギアを上げ、ギリギリで回避する。
ナツキは凍りついた手足を炎の魔法で溶かす。
レイジが氷の刃をナツキに突きつける。
ナツキはそれを回避する。
まさに一進一退の攻防が続く。
お互いに決定打が無いまま時間が経過する。
そして、5分が経過し、試合終了のベルが鳴る。
判定の結果勝者はレイジ。
攻撃の手数はナツキの方が多かったが、レイジの方が有効打数が多かったとの判断だ。
試合終了後にナツキに声をかける。
「惜しかったな。でもすごく良い動きしてたな。」
「レイジったら、全く攻撃当たらないの。参っちゃうわ。」
レイジにも声をかけに行く。
「お疲れ様。よくナツキに勝ったな。」
「ああ、ありがとう。ところでキッドはどっちの味方なんだい?」
そう言われて回答に困る。
どちらも味方と言えば味方だ。
これはあくまでも闘技大会。
お互いの戦いっぷりに拍手を送りたい。
ナツキのもとに戻る。
ナツキが口をひらく。
「初戦敗退かー、まあ、相手がレイジだったから後は私の分も頑張ってもらわなくちゃね。」
「そうだな。どうする?レイジの試合見ていくか?」
「そうね。どこまで勝ち上がれるか見ていこうか。」
レイジの2回戦目が始まる。
レイジの相手はスパイラルという人らしい。
試合開始のベルが鳴る。
レイジが正面に防御魔法を張る。
スパイラルはその様子を見ているだけで動く気配が無い。
レイジが防御魔法を張り終わり、手を上に上げ、空中に大きな水の玉が浮かび上がる。
その大きな水の玉をスパイラルに放つ。
スパイラルは微動だにしない。
スパイラルに水の玉が直撃したと思った瞬間。
一瞬で水の玉がはじけ、レイジの防御魔法も破壊される。
何が起きたが分からなかったが、スパイラルがリングの中央に立っている。
スパイラルの腕を見ると、螺旋状の風を纏っている。
レイジがスパイラルに氷の魔法を放つ。
スパイラルはその魔法を螺旋状の風を放ち防御する。
スパイラルはリングの端に移動する。
レイジは正面に防御魔法を張る。
するとまた一瞬の出来事だった。
レイジの防御魔法は完全に破壊され、レイジは吹き飛ばされ、柵に叩きつけられ、倒れていた。
審判がカウントを開始する。
「10、9、8………3、2、1」
試合終了のベルが鳴る。
レイジは2回戦で敗北した。
それにしてもスパイラルの動きが速すぎて目で追えなかった。
やはり全国大会はレベルが高い。
ナツキやレイジでもかなわない相手がたくさん居るのだから。
自分とナツキとレイジの3人で集まる。
ナツキが口をひらく。
「スパイラルって人強かったね。レイジもお疲れ様。」
レイジが無表情で口をひらく。
「見切れなかった。ナツキよりも遥かにスピードが速くて、あれは初めて体験したね。」
自分が口をひらく。
「2人ともお疲れ様。実力者ばかりの中で、良く頑張ったよ。」
ナツキが少し満足げな顔をして口をひらく。
「でも良い経験だったわ。私はレイジに負けたと思って無いからね。お互いにダメージは受けて無いんだから互角よ。」
レイジが口をひらく。
「まあ、試合って形式だから勝ち負けがついたような物だからな。タイマンならナツキは出来れば相手にしたくないよ。」
しばらく会話を行った後、ワープストーンでそれぞれの国へ帰る事となった。
明日からはまたいつも通りの日常が始まる。




