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花陰《かいん》

 冬夜の名前を呼んだけれど、どう話を切り出そうかと考えていると冬夜から話を切り出してくれた。


「ハル僕に言いたいこと有る?それとも聞きたい事?」

 俺は頷くと、これから一緒に学生生活を過ごせるのが嬉しい事と、サプライズが凄く驚いたと伝えると冬夜は作戦は大成功だと、クシャリとした笑顔を向けてくれた。


 確かにサプライズは凄く驚いたし、一緒に過ごせる時間が増えたのは嬉しいし楽しみでは有る………

ただ何故かは分からないけれど、あの時に冬夜が小夏ちゃんに見せた表情が気になって仕方なかった。


「ハル、もしかしてまだ何かある?」

 そう問いかける冬夜の顔は不安気ふあんげに瞳を揺らしていた。

冬夜に話して嫌な気持ちにしてしまうかもしれない、軽く流してくれるかもしれない。


 今のこのモヤモヤした状態から話をしてスッキリしたいのは俺のエゴなのかもしれない。

頭の中で考えていると冬夜に名前を呼ばれた。


 俺の目に映った冬夜の顔は、今まで見たことのない表情をしていた。

 もしかしたら、気を悪くさせてしまうかもしれないと前置きをしたのは、無意識に防衛本能が働いたのかもしれない。

 冬夜は大丈夫と頷いたのを確認して、やっと気持ちに踏ん切りがついた。


 大きく深呼吸をして、冬夜に向き合った。


「冬夜、さっき小夏ちゃんと話をしていた時に、なんて言うか表情がいつもと違う気がしたんだけど何か嫌な事を言われたのかと思って。」

 そう話すと一瞬、冬夜の目が大きく見開いた気がした。

そして射抜くようや視線を俺に向けつつ声の音を発せずに。


 なんでハルは気づくの?


 そう言われた気がした、実際には冬夜は小さく口を動かした様に見えただけったから、そう言ってないかもしれない、けれど俺にはそう言われたように感じた。


 そんな事を考えていると、冬夜の顔がふわっと緩んだ表情になった。


「ハル悩ませてごめんね、小夏ちゃんがどうとかではなくて僕、早い会話が少し苦手で対応で悩んでたんだ。」


 そう話す冬夜は、どこか気まずそうだったけれど、そんな姿をみてホッとした自分が居た。


「その気持ち分かるよ」

 考えるより先にそう言葉に出ていた。


 確かに小夏ちゃんは、質問しつつも相手が答えを出す前に新たな質問をしてきたりする節がある。

そんな時は上手い具合に亜紀ちゃんがフォローしている、けれどさっきの亜樹ちゃんには無理だったと思うと全てが繋がった気がした。


 あの時に冬夜の顔が少し違って見えたのは質問の答えを考えていただけ、そう納得すると勝手に余計な心配をして冬夜を振り回したのではないかと一気に恥ずかしさが体中を駆け回り、穴があったら入りたくなった。


「ハル大丈夫?なんて言うか全体的に赤くなってるけど」


 冬夜の問いかけに、口では大丈夫と言いながらも全然大丈夫ではなかった。

そして口から出た言葉が炬燵コタツでのぼせたという、取ってつけたような言い訳だった。


 冬夜は、確かに炬燵とココアで凄く温まるねとニコニコしながら俺のことを見ていた。

 冬夜の事だから、きっと分かってて知らないふりをしてくれてるんだと思うと二重の恥ずかしさを感じた。


その後はなんとなくギクシャクしたものの、離れていた時の話や、冬夜の前の学校の話などで会話が止まらずに気づけば時計の短針が数字の5を差し示していた。


「ハル今日は色々ありがとう体も温まったし、そろそろ帰らないと、おばあちゃんに心配かけちゃそう」


 厳寒まで冬夜を送ると、明日から一緒に学校に行かないかと提案され、もちろん一緒に行くことにした。

 明日、迎えに行くから待っててねと話す冬夜は、学校で見た小夏ちゃんに向けた少し仄暗い目の感じはなく、それこそ王子様の様なキラキラとした笑顔を称えていた。


夕日に染まる冬夜の背中を見送りつつ、なぜだかもう会えなくなりそうな気がして、そんな考えを払拭するため離れていく背中に向かって声をかけた


またあした………

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