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それぞれの門出

この物語はフィクションですが作者が見聞きした事を参考にしている所があります。

 棺に横たわって居るのは俺の知っている冬夜だとは思えなかった……

 いまだに、現実だと受け止めることが出来ないからだろうか……

冬夜に貰った手紙を読んでも涙は出なかった……

人は悲しみが強すぎると涙は出ないんだなと漠然と思っていた。


 葬儀屋さんが、釘打ちをお願いしますと指示をだすとハンカチで目頭を押さえている人が増えた気がした。

 名前を呼ばれ、冬夜の眠る棺へと近づくと棺の蓋が閉められた顔の当たりに付いている小窓が開かれ、冬夜のお母さんとおばあちゃんが蓋に何かをしていた。

 俺の番になった時に小石を渡され、どうすれば良いのかと思っていると、父さんが教えてくれた。


 カツン


 たった1回、釘に小石を当てただけなのに、俺と冬夜の間には明確に線引きされた気がした……

 どんなに好きでも、もう触れ合うことは出来ない……

胃の辺りを絞られたような不快感に襲われた。


「ハル泣かないで……」


 幻聴かもしれない……けれども俺にはそれが嬉しかった。


 葬儀に来ていた全ての人たちが釘打ちを終わらせた時、家の前には立派な霊柩車が到着した。

 何人かの大人の男の人が冬夜を運ぶ時に俺も手伝わせて貰うことにした。

 その時、風、雷、亜樹ちゃんも一緒だった。


 久々に全員が揃ったのが、冬夜のお葬式だなんてあんまりだ……


 涙でぐちゃぐちゃの雷が呟いた言葉が胸に刺さった。

みんな、それぞれに思うことは有りそうだったけど、言葉にしたのは雷だけだった……視界の先で、こなっちゃんが、こなっちゃんのお母さんに支えられているのが見えた。


 出棺ですとの言葉の後に、クラクションが鳴らされ冬夜の乗った車が発車された時、ガクガクと膝が震え自分の意志で止めることが出来ずに居ると、父さんが後から支えてくれた。


「ハル、この後は本当に最後のお別れになる、どうする?残っても大丈夫だぞ。」


 そんな事を言われても俺の答えは決まっていた。


「行く……」


 雷と、こなっちゃんは大人たちの判断で、ここでお別れという事になり、おのずと風と亜樹ちゃんもここまでと言う事になった。


「ハル、無理はするなよハルが大丈夫な所で見送るだけでも冬夜は喜ぶはず……辛くなったら俺達を頼れ」


 風の言葉に、俺は頷く事しかできなかった。


 ✽✽✽✽


 銀色の扉の前には、にっこりと笑う冬夜の写真が飾られていた。

 係の人の、最後のお別れですとの言葉に足がすくんだ……


 俺が棺から少し離れた所から動く事が出来なかった……


 父さんが俺のもとに来た時に、お坊さんが御経をあげてる中、冬夜の棺はゆっくりと吸い込まれていき……

扉が閉まると同時に息苦しさを感じた……


「ハル!ゆっきり息をしなさい!」


 父さんの言葉で、少しずつ息を吸うことが出来た。


「ハル、ここまでにしなさい……」


 父さんが俺を心配してくれているのは分かる……


「冬夜を家に連れて帰る約束をしたんだ……」


 俺の言葉を聞いて、父さんは少し考えると、連れて帰る準備が整うまで、1人で控室で待てるかと聞かれたので、頷いた。


 どれくらいの時間が過ぎただろうか……呼び出しがかかり、大人たちは先程の扉の方へと歩いて行った。

 俺は、その手前にある椅子が用意されている場所で待つことにした。


 ✽✽✽✽


 「ハルおまたせ……」


 そう言って戻ってきた父さんの手には奇麗な白い布に、包まれた箱のような物を持っていた。

 父さんは俺の目を、しっかりと見ながら俺にその箱をしっかりと手渡した。


「ハル、大切に持ってあげるんだよ。」


 父さんから受け取ったその箱はどことなく温かさを感じた。

俺が、しっかりと受け取った事を確認すると父さんは俺の肩に手をかけながら口を開いた……。


「小さくなってしまったけれど……この中に冬夜君が眠っているんだよ。」


 初め何を言っているか分からなかった……

父さんが、分かりやすく説明してくれたけど理解が追いつかなかった……

 それでも、しっかり向き合って話してくれた事で、なんとか理解できたその時……

 堰を切ったように涙が止めどなく溢れてきた。


 こんな形で、冬夜の事を抱きしめたかった訳じゃない……

小さくなった冬夜を抱きしめながら、自分の物とは思えない声が呼吸する度にこぼれ落ちた……


 冬夜の声も笑顔も温もりも、もう2度と感じることは出来ないと突き立てられたようだった……

 父さんの言ってた、本当に最後のお別れの意味を俺は分かって居なかったんだ……。

父さんは、俺の背中を撫でつつ声をかけてくれて徐々に落ち着く事が出来た。


 冬夜のお母さんが遺影を、おばあちゃんが位牌を、俺が冬夜を抱きしめ外へと出ると、眩しいぐらいの太陽が輝いていた。


あっ……そうか……

冬夜は俺のことを【ひまわり】みたいだと言っていた、俺も冬夜のことを【ひまわり】みたいだと思っていたけれど、それは間違いだったと気付いた。


 冬夜は太陽のようだったんだ……


 俺にとって大きな大きな存在だった。


 そんな冬夜は俺に最期まで笑っていてと言っていた。



 あの夏のひまわりのように……

太陽に向かって、真っ直ぐに前を向いていきたい。


 いずれ冬夜に会った時、ハルはやっぱり【ひまわり】みたいだと言ってもらえるように……


〜おわり〜

今回も読んで頂き、ありがとうございました。

物語はここで終わりとなりますが、次回のエピローグにて完結となりますので、最期までお付き合い頂けると嬉しいです。

本日中に更新致します。

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