同じようで違う日々
これからは冬夜と学校生活を一緒に過ごせると思うと胸の中がじわりと暖かくなったように感じた。
俺の隣を冬夜が歩いているだけなに、何故か浮足立ってる気がして冬夜にバレたくない反動で早口で色々と質問を投げかけてしまった。
「冬夜、少し見ない間に背が伸びたね」
そんな質問に、冬夜はそうかな?と首を傾げていた。
「最後に会った時は目の位置が同じぐらいだったのに、今は俺が少し見上げないと目が合わないから絶対に伸びたよ」
冬夜は、自覚は無かったけどハルが言うなら伸びたのかもしれないと笑っていた。
俺は来年の今頃には、絶対に冬夜より身長を伸ばす努力をするぞと心に決めた。
「ハルは変わらないね………」
そう呟いた冬夜の言葉を聞き逃さなかった、いま自分の中でだけど身長を伸ばす決意をしたのに。
「俺だって少しだけど伸びたよ………」
少しムッとしながら言うと、そう言う意味じゃないよとフォローされたのが逆に傷をえぐられるようだった。
「冬夜は、やっぱり都会の人って感じだよね、スレンダーなのに筋肉もありそうだし、最後に会ったときより凄く格好良くなったね。」
そう早口で話す小夏ちゃんの目が完全にハートに見えるのは俺だけだろうか?
恋愛に疎い、風と雷は気づいてなさそうだけど亜樹ちゃんは、どうかなと盗み見ると、眼鏡の奥の目が死んだ魚のようになっていた。
亜樹ちゃんは、冬夜とは別ジャンルなイケメンだしモテるのに何故か昔から小夏ちゃん一筋で、風も雷も気づくぐらいにアピールしてるのに当の本人には気づいてもらえないのが不憫で仕方ない。
あっ亜樹ちゃんと目が合ってしまった………
小刻みに震えながら助けを求める子犬のように、俺のことを見てくるけど、普段あんなにしっかりしている亜樹ちゃんが小夏ちゃんに対してだけ弱気な一面を見せるのは【恋】をしてるからなんだろうか?
俺にはまだ恋愛と言うものが、まだよく分からないから、誰かに対して臆病になって言いたいことが言えなくなったり、するのかな?
今は全然、想像ができないけれどいつか、俺にもそんな相手ができたら分かるようになるのかな?
そんな事を考えながらも、そろそろ亜樹ちゃんがヤバそうなので助け舟を出すことにした。
「小夏ちゃん、亜樹ちゃんの様子が変なんだけど」
そう小夏ちゃんに報告するやいなや、凄い勢いで亜樹ちゃんの元へと向かうと、亜樹!どうしたの?と言いながら亜樹ちゃんの頭をワサワサと揉みしだいていた。
亜樹ちゃんは、小夏やめろ眼鏡が壊れると言いながらも嬉しそうだった。
風は、あまりに不憫と言いながらも笑っていた。
雷は、敢えて、尻に敷かれに行くスタイルと真顔で言っていた。
「この感じ、いいなぁ〜」
冬夜の声に振り返ると、どこか寂しそうに見える表情をしていて、声をかけるのを躊躇していると目が合った。
思わず【冬夜おかえり】と言葉が溢れた。
冬夜の目が一瞬大きく見開いたと思ったと同時に満面の笑顔で。
ハルただいま
ストレートに飛び込んできた言葉に、さっきの冬夜の言葉ではないけど、なんかいいなと思った。
小夏ちゃんに、もみくちゃにされていた亜樹ちゃんがそろそろ帰ろうと促すと、みんな各自に帰りの支度を始めた。
「ねぇ、冬夜は彼女出来た?」
いきなりの小夏ちゃんの爆弾発言に、亜樹ちゃんの顔が絶望の色に染まり遂に天を仰いでしまった。
俺は、ことの成り行きを大人しく見守る事しか出来なかった。
さすがに風と雷も何かを感じ取ってはいそうだったけれど俺と同じく見守るようだった。
「冬夜ってば凄く格好良くなったし彼女出来たんじゃなないかなって思ったんだけど」
小夏ちゃんの追加攻撃で、亜樹ちゃんが瀕死状態になってしまった。
当の本人の冬夜は支度をしながら、そんな事を言ってくれるのは小夏ちゃんだけだよと、顔を上げず目も合わせない冬夜の姿に少し違和感を感じた。
そんな事には気付かずに、小夏の口は止まらなかった。
「それじゃ、彼女欲しいと思わない?好きな子か気になる子は居ないの?」
ニコニコしながらグイグイいく小夏ちゃんを止められる人はこの場には誰も居なかった。
そんな時、動かしていた手を止めた冬夜は顔を上げた。
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