俺の気持ちと冬夜の願い
このお話はフィクションですが作者が見聞きした内容を参考にしている所があります。
「ねぇハル、笑って……」
そんな事を言われても俺の意思とは裏腹に視界が歪むのが、どうしてだか教えて貰いたい。
「ハル……大丈夫だよ……」
そう言うと冬夜は俺を抱きしめた……冬夜と
の背中に手を回すと、涙が止まらなくなった。
トクトクトクと規則的に感じる鼓動に合わせて冬夜が俺の背中をポンポンポンと優しく叩いた。
「僕ね、ハルがこんなにも泣き虫だったなんて知らなかったよ……悲しませてゴメンね……泣かせちゃってゴメンね……」
俺は冬夜の胸に顔を押し付け声が漏れないようにしていたけれど、きっと冬夜は気付いていただろう、そんな俺を冬夜は落ち着つくまで、ずっと抱きしめてくれていた。
このままでは駄目だ、俺は冬夜と話をしに来たのに何一つ聞きたいことを聞けていない。
俺が冬夜の顔を見上げると、いつもの優しそうな顔の中にどこか苦しさを隠しているようだった。
「なんで謝るんだよ……冬夜は何も悪いことをしてないじゃないか……」
なんで優しい言い方が出来ないのだろうか……何も出来ない自分に苛ついて冬夜にあたるなんて本末転倒だ。
「ハル!僕はハルに笑っていてほしい!ハルの笑顔は、どんなに気持ちが落ち込んだ時でも元気が貰えるんだ、ひまわりのみたいに見るだけで元気になれるんだよ、僕はね初めてハルと出会った時にハルの笑顔から希望を貰えたんだ、だから悲しそうな顔よりニコニコしているハルの笑顔を見ていたいな。」
冬夜の話を聞いても、今までどうやって笑っていたのか今の俺には分からなかった……
父さんの話では直ぐでは無いけれど、おじいちゃんになる頃にまでは……と言葉を濁していた……
その直ぐではないとは、どれくらいの時間を指しているのか……
その時に、俺は近くに居る事ができるのだろうか……
「冬夜……俺を1人にしないで……」
無意識に出た言葉に冬夜はコロコロとした笑顔を見せたと思ったと同時に打って変わって真面目な顔つきに変わった。
なんとなく嫌な予感がする……
冬夜が口を開いたら、俺の心がえぐられる気がする……
「それは、当たり前の事だよね?むしろ僕はね自身がハルから離れるなんて事を全然考えてないし、ハルの笑顔を1番近くで見れるのは僕の特権でしょ?ハルはおじさんから色々と聞いて不安になったのかもしれないけど、その時が来るまでは隣で笑ってくれるよね?」
冬夜の言葉を聞いて、俺はその時がいつかは分からないけど、冬夜の隣で2人で笑っていたいと思った。
俺に出来る事……今まで色々と考えても答えが出なかった……けれど今、胸の中にスーッと落ちた事が答えなんだと感じた。
まだ時間は残されているんだ……
その時まで俺が冬夜の笑顔を守ろう……
「ハル、今直ぐには今までみたいに動くことができないけど、今度はどんな風景を見せてくれる?」
そう話す冬夜は【今】も大事にしてくれているけれど【未来】への希望も諦めていない目をしていた。
俺は思いつく限りの遊びや季節の風景などの話をした。
外から正午を告げる放送が流れてきて、もうお昼なんだと気付いて2人で大笑いをした。
トントンとドアを叩く音がして、おばあちゃんがお昼にオニギリを持ってきてくれた。
またオニギリだと2人で笑ったけど、今の冬夜に食べやすいのはオニギリなんだと気付いた時に、おばあちゃんの優しさを感じた。
2人でオニギリを頬張りながら、色々な話をしていると、今まで見たことがなかった冬夜の表情を浮かべる冬夜に気付かされた。
今までと変わらない……そう思った時に冬夜が口を開いた。
「ハル、僕ちゃんと治療を受けるから長時間また歩けるようになったら、ひまわり畑にまた一緒に行こうね」
冬夜の問いかけに俺が頷くと、やったー!と言いながら俺を抱き寄せた。
「ハル……外のミンミン蝉が煩いね……でも僕の心臓の音の方が煩いかな?」
「いや……俺の心臓の音のほうが煩いよ、自分でも分かるし……」
冬夜が、2人の心臓の音が重なってるのかなと言った時、俺達の目が合った……。
この時、初めて俺達は冬夜の部屋で口付けを交わした。
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